貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

44 / 634
44話

『さあ最後のコーナーだ、メジロライアンが中央のバ群へと突っ込んでいく!!そのまま一気に抜け出して行く、圧倒的なパワーでかき分けるかのように抜けて行く!!』

 

G1、皐月賞。クラシックの三冠路線の第一戦、最も速いウマ娘が勝つと言われているこのレース。先頭を走るはアイネスフウジン、最も速いウマ娘が勝つという皐月賞に相応しい程の逃げを行っている彼女を猛追するライアン。だが同時に喰らいつく相手がいる、コクタイコウ。自分と同じタイミングでスパートを掛けてアイネスを抜きに掛かる。

 

『最後の直線勝負!!アイネスフウジン逃げ切るか、内からはコクタイコウ、外からはメジロライアンが上がってくる!!逃げる逃げる2バ身のリード、しかしコクタイコウとメジロライアンもどんどん上がってくる!アイネスフウジンを捉えるか、捉えきれるのか!?』

 

「こんな所で、負けるかぁぁぁ!!」

 

気迫の籠もった声と共に、ライアンは更に地面を強く蹴った。大切な約束の初戦を落とす訳には行かないと言わんばかりに前へ前へ前へと突き出て行く。

 

『アイネスフウジンメジロライアンアイネスフウジンメジロライアン、メジロライアンが差し切るぞ、メジロライアン差し切った!!メジロライアンがゴール直前でアイネスフウジンを差し切りました!!アイネスフウジンは惜しくも2着、3着にはコクタイコウ。先週の桜花賞のメジロランページに続いてメジロ家のウマ娘が皐月賞を制しました!!今年もやって来たぞメジロのウマ娘達が、今年のクラシックは更に激しさを増しそうです!!』

 

残り20メートルも無い所で遂にライアンはアイネスを完全に差し切った。ギリギリのハナ差勝ち、アイネスの脚に何とか落ち着く事が出来たライアンは皐月賞を制し、三冠への一歩を踏み出す事が出来た。

 

「最後凄かった、でもあと一歩で負けちゃったの」

「アイネスも凄かったよ、本当にギリギリで追いついたから」

「ありがと、でも今度は負けないの。次は―――ダービー!!」

 

笑顔で勝利を祝福してくれながらもアイネスの瞳には早くも次のレースへの熱意で溢れ返っていた。次は日本ダービー、一生の一度にしか走れる事の出来ないウマ娘にとっての祭典ともいうべきレース。ダービーウマ娘、それに憧れて数々の名ウマ娘達が挑んだ。そこに自分達も挑むと分かると自然とライアンも喉を鳴らしてしまった。

 

「負けないよ、アタシだってランとの約束があるからね!!」

「フフッ負けないの!!」

 

そう言いながらも二人は固く握手を交わす、その光景に大喝采と拍手が巻き起こる。二人の互いの健闘を称え合う光景に皆が拍手を送った、そして次のレースが今から楽しみになって来てしまった。早くそれがやってこないかと、皆が思うのはある意味当然なのであった。

 

 

「なんというか、これまでのカノープスとは思えない位に賑やかになって来たなぁ」

「そうですね」

 

そう言いながらもお互いにシンザン鉄をシューズへと打ち込んでいる二人。そんな言葉を言うのもカノープスの練習風景の見学者が多くなっているから、報道関係者もそうだがトレセン学園の生徒もかなり多い。その中には新入生の姿も見えており、チーム入りにここを考えてくれているのが良く分かる。

 

「様子を見て来ましたが、如何やら此方へと集まる視線がかなり多いみたいです。ライアンさんが今休養中なのもあるでしょうが」

「まあ昨日の今日だからな」

 

皐月賞があったのは昨日、ライアンは皐月賞での疲れを癒やす為にメジロ家のお屋敷に戻っている。その為に取材は困難なので他の有力ウマ娘を取材しようと此方に来たという所だろう。特に自分なんて同じメジロだから余計に狙い目でもある。

 

「でも凄い人だな~」

「ホントだね、それだけカノープスが人気になって来たって事かな!?」

「いやこの場合はどっちかと言えばイクノとランでしょ?」

 

その通り。桜花賞のワンツーコンビが揃っているカノープス、其方に注目が集中するのはある意味当然。そしてランに至っては既に次走を決めており、それに向けての練習をしている。それはフローラステークス、オークスの優先出走権が得られるトライアルレースである。当然、桜花賞を勝っているランページには優先出走権は手にしているのだが……

 

「手に入れられるもんは全て手中に収めてこそ―――独裁者ってものだろ?」

 

一人の記者への質問へとウィンクをしながらそう答えた。これを受けてそれを狙っていたウマ娘達は頭を抱えた、何せ彼女が狙っているのはメジロラモーヌと同じ完全なトリプルティアラ。しかも勝ち目も薄い為にスイートピーステークスへと切り替える事を考えていると南坂が言っていた。というか実際に同僚から弄られ口調で言われたらしい。

 

「イクノさんも其方に行きますからね」

「ええ、私も負けてはいられませんから」

 

そう、この二人が揃ってフローラステークスへと出走するのだから南坂は同僚から弄られるのも無理はない。勘弁してくれよ、というのが大部分だろうが。

 

「しかし……私はある事を考えています」

「何を」

「NHKマイルカップに出るのも面白いと考えています」

 

NHKマイルカップ。それは重賞、しかもG1のレースである。狙おうと思えば狙う事は出来るのだが……

 

「イクノそれ流石に冗談だよね……?オークスにも出るんだよね」

「勿論」

「おっ~!!オークスの前にG1で腕試しって事!?カッコいいターボもやりたい!!」

「勘弁してくださいターボさん、NHKからオークスへは中1週しかないんですよ。しかもフローラステークスからもそうなんですから」

「それって……とんでもないハードスケジュールだよね?」

 

思わずランページすらタンホイザの言葉に頷いた。仮のスケジュールではあるが、それは完全な強行軍。フローラステークスだってG2の重賞。それなのにそっから中1週で連続G1なんて流石に危険が過ぎる。流石の南坂も容認はしきれない。

 

「まあ面白いと思っただけですから」

「それやったら色んな意味でお前伝説になるぞ、フローラの後にNHK出てオークスに出てきたら」

「本当にウマ娘なの?って言われそうだよね、実際はロボットなんじゃないの?みたいな」

「ええっ!?イクノってロボだったの?」

「違いますよターボボボボッ」

「ギャァッイクノがバグったぁ!!?」

「ジョークです」

「今の流れで良く出来たねそれ」

 

気付けば皆が笑い声をあげ、それに釣られるように取材陣も思わず笑ってしまっていた。強豪チームとして名が売れ始めてきているカノープス、本来避けるべきチームメイト同士の対決を行うなどどんなチームなのかと言われたりもするがその実態はチームメイトの関係は極めて良好且つ雰囲気も和やかでリギルとは全く異なる。その強さの秘密が垣間見える良い瞬間だった。

 

「う~んカノープスって雰囲気良いなぁ~でもリギルも捨てがたいしスピカだって……」

「私はリギル派だな、だがカノープスのトレーナーの事も踏まえると其方もありだな……あの二人のスケジュールを管理している……侮りがたい」

「アタシはどれでも……強いて言えばスピカかな、シービーが居た所だし」

 

そんな光景を見ながらも、未来のスターウマ娘達は自分達の進路を決めるべき話をする。そして、何れは彼女が走るトゥインクルシリーズを預けるチームを決める。そんな一コマがそこにはあった。




アプリ基準だったらやっちまいそうだよねこれ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。