「という訳で、プレアデスに新しいメンバーが加わりました」
「坂原です。本日からお世話になります、皆さんの一助になれるように努力していきますのでどうかよろしくお願いします」
「わ~いトレーナーちゃぁ~ん!!」
プレアデスのメンバーが集合した定例会議と言う名のお茶会の場で坂原トレーナーがプレアデスのサブトレーナーに就任した事を発表する事にした。一同は拍手で出迎え、一方でマヤは坂原に飛びつくように抱き着いて膝の上に着地した。
「これでサブトレが二人にメイントレーナーが一人か、普通に考えりゃ随分と重装備じゃねえか」
「つってもな、なんだかんだ言いながら俺も上ちゃんもまだまだ2年目のトレーナーである事に変わりはねぇんだぞ?というか、上ちゃんに至っては実質今年スタートの新人だ」
「頼りにならなくて面目ない……」
「NO!!上ちゃんトレーナーはイツモ、真剣に私達に指導シテクレテマース!!」
「そうデース!!上ちゃんトレーナーは頼もしいデース!!」
と上水流トレーナーのフォローをするタイキとエル。実際上水流トレーナーを頼りないとプレアデスのメンバーは思った事はない、確かにランページと比べると何処か物足りない所はあるがそれはランページが一緒に走ってくれるウマ娘トレーナーだからこその感想であって普通に考えれば上水流トレーナーは優秀な部類で指導も的確且つ分からないと言えば確りと噛み砕いた教え方もしてくれるので助かる。
「そう言って貰えると嬉しいけど、俺も俺でまだまだ新人の域を出ないからなぁ……正直経験豊富な先輩トレーナーが来てくれて助かったよ」
「あんまり僕を持ち上げないでほしいな、経験豊富なベテランの皆さんに比べちゃったらまだまだ若輩者さ」
マヤのトレーナーになる筈だった坂原トレーナー、若輩者というがそれは沖野や東条に六平と言った経験豊富なトレーナーに比べたらという意味。坂原トレーナー自身は高校卒業と共に資格を取って中央トレセンに在籍し続けている。中央のトレーナーは結果を出さなければクビとまでは行かないが、地方に移籍して貰う事もある。その場合は地方から中央にやって来るトレーナーがいる。そんな中央で結果を出し続けているので優秀な部類、故に事故で療養を余儀なくされた時にはウマ娘だけではなくトレーナー達も残念がっていた。
「言うてもう8~9年ぐらいはトレーナーやり続けてんだろ、俺達二人に比べたら立派な先輩なんだから誇ってくれよ」
「来年で10年になるかなぁ……そんな僕だけど力になれる事があるなら言ってね、力になるから」
物腰と表情が柔らかなトレーナーだという事が分かってメンバーは益々安堵の息を漏らす。これでサンデーサイレンスのような厳しいトレーナーだったらどうしようと思っていたらしい、それと比較するのも大分あれな気もするが……。
「という訳で坂原トレーナーもメンバーに加わった事でプレアデスは更に前に向く事になる。坂原トレーナー、加入早々だけどプレアデスの事について説明する。他のチームとは随分と違うからな」
「是非ともお願いするよ。カノープスに随分と近いチームって事はマヤから聞いてるよ、基礎を重視してるんだってね。僕もそれには賛成だよ、というかよくマヤにそれをさせ続けたね」
困ったような顔をしながらもマヤの頭を撫でる、その手つきは一切の嫌らしさはなく唯々親しい子供と接しているようにしか感じないしマヤも気分良さげにしている。本当にこの二人の相性が良い事が窺い知れる。そんな坂原に対してプレアデスがチームメンバー同士が同じレースに出る事に一切躊躇しない事、寧ろぶつけ合っていく方向性である事を告げる。マヤは暫く関係ないかもしれないが、2年後辺りから本格的にそれが発揮されることを告げると苦笑された。
「それはまた、随分と大体な方針にしたね。普通に考えれば同じチーム同士なら避けるの一般的だけど……僕は良いと思うよ」
「その心は?」
「僕の経験則だけど強くなるためには強い相手とどんどん走らせた方が強くなるんだよね。レースに出る事で鍛えられる事もあるし同じチーム同士なら余計に闘争心が刺激されるしより競い合って高める事も期待出来る。チームとしての結果を考えるならばいい事ではないと思うけど、そのウマ娘をより高みを目指すならばこのチームほど整った環境はないと思うよ。何せ、メイントレーナーが世界最速最強だからね」
その言葉に全員が頷いた。そんな中でスぺが呟いた。
「やっぱりどんどん走るべきなんだ……そうなるとこのチームからは無敗の三冠ウマ娘って出ないのかな」
先日の菊花賞で無敗の三冠ウマ娘となったブライアンの事を思ってつい出てしまった言葉。そう思えばプレアデスからそんなウマ娘が出る可能性は極めて低いと言わざるを得ない。普通のチームからだって滅多な事ではないウマ娘がこのチーム出る、というのは考えづらい……がそれすら坂原は否定してみせた。
「そうでもないと思うよ。これは僕が六平さんのサブトレーナーをやらせて貰った時の受け売りなんだけど、本当に強いウマ娘っていうのはどんな不利や作戦があったとしても勝ってしまう素質を持っている物なんだよ。ライスシャワーさんがミホノブルボンさんを菊花賞で倒した時に一部の人はブルボンの三冠が見たかったって思ったと思うけど、本当に強いならば自分を破ってこようとする相手を逆に負かすんだ。この世界に居ると本当にいるんだよね、そういうウマ娘が……ねっメジロランページさん」
「あれま、そこで俺を出されちゃうのね」
「フフフッ君ほどこの言葉を体現したウマ娘はいないと思うよ」
そう言われてみれば確かにそうかもしれない……自分も負けそうなレースは幾つかあった。ドバイワールドカップなんて特に負けると思った。それを越えられたのだから自分は胸を張っていいのだろう。
「まあ兎も角だ、プレアデスはそういうチームって事は了解してくれ」
「うんその辺りはよく理解出来たよ。それでサブトレーナーとして最初の仕事は何だい?雑用でもなんでもやるつもりでいるけど」
「今なんでも言ったな?んじゃプレアデスの空気に慣れるまではマヤをメインに見てやってくれ」
「―――えっ?」
思ってもみなかったのか、坂原はぽかんとしてしまった。一方で対照的に彼の膝の上のマヤはこれ以上ない程に瞳を輝かせた。
「ランページさん本当!?マヤ、トレーナーちゃんと一緒で良いの!!?」
「勿論他の面子も見て貰う事にはなるけどメインはマヤだ。一緒に歩きたかったんでしょ、だったら歩けるようになった脚で確りとマヤと一緒に歩んでくれ」
「ハ、ハハハッ……少し、期待してたんだけど此処まであっさり任せられるなんてね……」
少しだけ涙ぐんでいた、本心を言うとマヤと一緒にトゥインクルシリーズを駆け抜けたかった。だが自分の事故のせいでデビュー出来ないかもしれないという不安にさせてしまった自分にはマヤを見る資格はないと思っていた。だがそんな事はない、ランページからすれば一時的に委託されたつもりでその時が来たらマヤを送り出そうと思っていた。その相手がプレアデスに来てくれたのだから何の憂いもないだろう。
「マヤ、まだ僕と一緒に歩いてくれるかい」
「勿論だよトレーナーちゃん!!マヤ、ランページさんのチームのウマ娘だったけどトレーナーちゃんのこと忘れた事なんてないもん!ランページさんとトレーナーちゃんと一緒に走れるなんてもうマヤ嬉しくてテイクオフしちゃう!!これから宜しくねトレーナーちゃん!!直ぐにトレーナーにG1勝利プレゼントするから!!」
「復帰初日からこんな嬉しい事があるなんて……有難う、精一杯務めるよ」
嬉し泣きしながらも力強く頼れる言葉と共にサムズアップした坂原トレーナー、彼をプレアデスは受け入れて更に前へと駆け出していく事が決まった。
坂原トレーナー、正式にプレアデスのサブトレーナー兼マヤ担当に復帰!!
というか、坂原トレーナー人気過ぎじゃね?感想で坂原トレーナーに関する事が多くてビックリしたよ。