貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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447話

最初に感じたのは外国の空気、風土、感触、様々な物の違いを肌で感じ取ってしまった。日本とは全く違う、そして分かった。日本という生まれ故郷は全てが自分に味方をしてくれていたんだと。だがこの土地ではそれを得る事は出来ないんだ、思わず不安からかスカートを握ってしまった自分の手をパーマーとそのトレーナーである山田トレーナーが取った。

 

「大丈夫だよライス、私もトレーナーも付いてるんだからさ」

「流石に南坂みたいに頼もしくもなければランページみたいに一緒に走る事は出来ないけど、これでもトレーナーとしての矜持はある。君は俺が守るから安心して」

 

二人の言葉は心から有難かったし支えになった。メルボルンカップに挑む為に、ライスシャワーはオーストラリアに降り立った。

 

『あれが日本から来たウマ娘?』

『随分小さいじゃない、クラシッククラス?』

『パーマーじゃないなんて……』

 

メルボルンカップに挑む為に調整を行う自分に聞こえてくる様々な声、メルボルンカップを制したメジロパーマーが帯同ウマ娘をする程のウマ娘なのか。自分に対する好奇心、猜疑心、あらゆる感情が向けられてくる。自分とパーマーを比べたら何方が強そうに見えるかはハッキリしていると思う。

 

「ライス、気にしちゃだめだからね」

「うん分かってる……あんなの気にしない」

 

覇者たるメジロパーマー、そんなウマ娘が付き添う程なのかという疑問は即座に打ち払われる事になったのだ。練習に入れば周囲の声が聞こえなく程に集中し、淡々と自分専用のシンザン鉄が地面を踏みしめる重々しい音だけが周囲に木霊する。それだけで周囲は黙るのだ、ライスの容姿故に忘れるのだ―――あの暴君と同じチームだったという事実を。

 

「パーマーさん」

「うん」

「山田トレーナーさん」

「ああ」

 

準備は全て完璧。身体と精神のコンディション、フレミントンレース場への適応、オーストラリアという環境への適応、全てが完全な状態で今日を迎えられた。

 

「ライス、勝ってくる。お姉様にも喜んで欲しいから」

「きっとランページさんだったら大泣きして喜ぶよ、ライスの事大好きだから」

「絶対に喜ぶな」

 

そして―――自分が姉として慕う大好きなお姉様、ランページにこの勝利を捧げる為、いやもっと単純な理由。喜んで欲しいから、褒めてほしいから、自分は走るんだ。

 

「行ってくるね、パーマーさんとトレーナーさんの新婚旅行に幸せ届けるからね!!」

「「ちょっと待って新婚旅行って何!!?」」

「行ってきます!!」

「「行ってらっしゃい!!じゃなくてまってライス、あ~待ってライスさんあ~!!」」

 

 

『ラ、ライスシャワー、祝福の名を持つ日本のウマ娘ライスシャワー先頭!!ライスシャワー先頭!!ジェーンも猛スパートをかけているが、既に2600を過ぎているというのにライスシャワーの脚は全く衰えない!!ジェーンは確実に上がっている、後続とは差が開いている、だがライスシャワーとの差が縮まらない!?』

 

オーストラリアにとってメルボルンカップは特別なレース、そしてそのレースを制したパーマーが来た事で彼女の前で勝利してオーストラリアは負けていないことを証明しようと有力ウマ娘達が名乗りを上げ出走した。だがライスはそんな事は知らないと言わんばかりにハイペースなレースを展開した。それは長距離レースであるメルボルンカップに備えて来たウマ娘達を振り落とすような猛烈な勢いで。

 

『さあラストの直線だ、ジェーンが来るぞ来ているぞ!!直線勝負ならば行けるか、差を徐々に埋めつつある!!ライスシャワーは流石に苦しいか、二人の差は後1バ身!!』

 

直ぐそこに相手が迫っている、だがその時にジェーンが見たのは瞳に青い焔を燃やしながらも確かにもう一人、ライスの猛烈なハイペースに並んでいるウマ娘が居た。そのウマ娘を自分は知っている、知らない訳もない。ベストルーティンを破ったあの暴君がそこに―――

 

「(ライスは、ライスは……お姉様と―――)走るっ!!」

 

愛する魂と、共に祝おう。

 

『ラ、ライスシャワーが更に飛び出していく!!先程とは段違いの加速だ!!まだ余力が残っていたというのか!?信じられませんジューンが更に離されていく!!3バ身から4バ身!!これはもう圧倒的だ!!メルボルンカップ二度目の快挙、日本からやって来たウマ娘が再びこのメルボルンカップを席巻したぞ!!そのウマ娘の名は―――祝福の星、ライスシャワー!!圧倒的な強さでメルボルンカップを制しましたぁ!!』

 

「やったっ~!!トレーナー見た、あの走り!!やっぱりランページさんと同じ奴だよ!!」

「ああ、全く以て凄い……」

『レース場から大歓声が上がっております!!このレース場が、いやこの国全体が彼女を祝福している!!聞こえるでしょうかこの大喝采!!惜しみない勝者への祝福、確かに我々の国のウマ娘は負けました、ですがこの負けは決して無駄ではないというのが分かります!!我々はこの敗北と共にまた一歩、強くなれるでしょう!!』

 

勝利を勝ち取った祝福、ライスは思わず身体が軽くなったようなふわふわとした浮遊感を味わっていた。それは勝利したからではない、ラストスパートで感じたあの感覚、まるで隣をランページが走ってくれていたかのような安心感と幸福感に満ちた感覚……思わず胸の前で手を握った……そして最高の笑顔を作りながらライスは言った。

 

「お姉様っライス、ライス勝ったよっ~!!」

 

ライスは内気で決して自分から大声を出すような性格ではない。それなのにライスは内から溢れだすそれを抑えることが出来ずに声にして解き放った。それを見てパーマーと山田トレーナーは思わず見合わせるが、それだけライスも嬉しいんだと感じ取った。そして……

 

 

「ライス本当に凄いぞぉっ……ライスぅ~!!!」

 

日本できっと見ているであろうランページが狂喜乱舞しているであろうことも。

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