貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

452 / 635
活動報告に今作品についてのお知らせを掲載中です。

ご興味があるから下記のURLからどうぞ。


https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=310122&uid=11127


452話

ブリーダーズカップ日本勢大勝利。ツインターボのBCマイル、トウカイテイオーのBCターフ、此処までなればアメリカもまだ強気の発言を保つ事は出来ただろう。アメリカのトゥインクルシリーズの主流、つまり1軍というべきはダートで芝は2軍に過ぎないと言えたかもしれない……だがそうはならなかった。レディセイバーのBCクラシック制覇によってアメリカは強弁を尽くすどころか完全な敗北を認めざるを得なかったのだから。加えてレディとダイナはアメリカへの長期遠征を行っていた上にそれぞれ、アメリカのダートG1を二つ以上確保している。アメリカのウマ娘にはこれ以上ない大打撃となった。

 

「ザマァザマァ!!おい見たかよランページこのニュース!!日本のウマ娘アメリカの芝ダートに完全勝利、アメリカウマ娘に走る激震は計り知れぬ!!だとさ、こいつはいい気味だぜ!!」

「アンタそれでも本当にアメリカのスターウマ娘かよ」

 

自分だって喜びたいのにそれ以上に喜んでいるサンデーサイレンスのせいで喜び辛い状況になっている。サンデーからすればアメリカのレース環境はハッキリ言って唾棄すべき状態なのでそれが見下していると言っても過言ではない日本ウマ娘に敗北した事で顔色真っ青になる事は喜ばしいことこの上ない。かつて訪れた黒船に例えてこの二人がアメリカトゥインクルシリーズに和船来航、二人のサムライウマ娘による快進撃だと派手に報道した。

 

「実際、今年の日本ウマ娘の活躍抜粋したら頭可笑しいからな。ターボにローレル、フローラ、テイオー、ライス、こいつらが一斉に海外のG1で結果残すなんざ普通に考えたら有り得ねぇつってもいい。その火付け役は間違いなくテメェだぞ」

「まぁた人のせいにする気かい、テメェがテメェのやりたい事を貫いただけなんだから俺は切っ掛けだけで魂に火を灯したのは自分達だろ」

「ハンッ偉ぶりやがって」

「俺はアンタよりもずっと仕事してんだよ、本来はアンタがやる筈の仕事だって全部やってんだよ。ネメシスの統括チーフってのはアンタよりも確実に格上なんだよ、お分かり?」

 

職員室の一角、ランページの席で行われる独裁暴君と運命に噛みついたウマ娘の舌戦。極めて見物だが二人が時折発する殺意にも似ている覇気は身体に毒となっているトレーナーが多い。素直に凄いなぁ……と思う者もいるがそれはランページをシンプルに同僚と思っていたり先輩だったり、上水流だったり坂原だったり。毒となっているのはランページが怒った事への最悪のシナリオを自分に重ねてしまっている者達だけ。

 

「つうかよ、俺はそれよりも考えなきゃいけねぇ事があるんだよ」

「ああマヤの重賞か」

 

マヤノトップガン初の重賞チャレンジ、G3レースである京都ジュニアステークスが迫ってきている。というか、それだけでも大変なのに当日はエリザベス女王杯とも被っているので冗談抜きで忙しい。南坂もなんとか間に合わせると言っているが、代理トレーナーとはいえ担当しているウマ娘がアメリカ最高峰のレースを取ってしまった事で色々と大変な事になっている。最悪の場合は自分がカノープスとプレアデスのトレーナーとして同時対処するしかない、幸いな事にエリ女も京都レース場で行われるという事だろうか……。

 

「マヤの調子は如何なんだよ」

「それなら坂原トレに聞いてみるのが一番」

「絶好調だよ、最近だと模擬レースを組んでほしいって僕の所に来て相手の斡旋に東条さんと沖野さんに相談もしたよ」

 

その言葉に沖野と東条は反応して同意を示してくれた。

 

「ウチからはブリザード出したぜ」

「リギルからはハヤヒデよ、調整の代わりとしてやらせて貰ったわ」

「随分な高評価だな、まあマヤヤはその位だと俺も思うけどさ」

 

その二人をあてがわれる程という事はそれほどの評価を受けていることの証明でもある。同時にリギルやスピカにも有望なウマ娘がいる、特にここ最近でネメシスからそちらへと移籍したウマ娘は相当なライバルになる程の素質を持っている。

 

「ンでそっちに行ったあいつらの調子は?」

「良い感じだぜ?ちょっと距離適性が不安な所があるけどクラシック路線予定だ」

「あらそっちもなのね、ウチもそうよ」

 

スピカへ移籍したのはバブルガムフェロー、そしてリギルへと移籍したのはフサイチコンコルド。如何してネメシスに在籍していたのかを疑問に思う程には素晴らしい素質を持っている二人のウマ娘、エアグルーヴと同世代だが衝突するのは恐らくクラシック末期かシニアクラス。それまでには色々と考えておく必要があるな、と改めて認識する。バブルを勧誘したのはスピカのサブトレーナーらしいが……。

 

「これでどうせレース場行ったらまたBCについてのコメント求められると思うと気が重いな……」

「流石にそれはないんじゃないの?この前、貴方相当に言ってたしこれで同じことを繰り返したら今度は報道業界そのものの信用問題に発展するわよ」

「それは如何かね、ああいう連中は一回位で痛い目見た所で直ぐに忘れるもんだぜ。喉元過ぎれば熱さを忘れる、だったか?」

 

マヤのデビュー戦に勝利インタビューでの一件の事を相当に根に持っているランページ、あれを根に持たない方が可笑しいとも言える訳だがハッキリ言ってあれらは信用するに値しない。

 

「だったらランページさんから発信しちゃえばいいんじゃないかな、そうすれば少なくともそういう事を聞こうとする連中の数を抑える事は出来ると思うよ?」

「ああ、その手があったな」

 

坂原の意見に確かに思わず手を叩いてしまった。確かに向こうが聞く前に先手を打ってしまえばいい訳だ、それで何かを聞こうと思っても配信見ろでいいしそれでも食らいついてきたらマジで潰せばいいだけの話でしかない訳だから。

 

「にしても、今年のジャパンカップはスゲェ事になりそうだな。BCの雪辱晴らしてやる!!とか言って乗り込んでくるアメリカウマ娘もいるんじゃねえか?」

「いなくはねぇだろうけど……ターボもテイオーも多分レジェンドレースに目標定めてるから出ねぇんじゃねえかな……」

 

そもそもブリーダーズカップからジャパンカップというのはスケジュール的にも相当に厳しい。休養やら来日やら日本への適応やらとやる事は極めて多い、そう思うと凱旋門からBCクラシックに出走した自分のそれは相当な無茶だったんだなぁ……と思わず呟くと

 

『今更か』

 

と一斉にツッコミを受けてしまった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。