貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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次回の投稿で募集は締め切らせていただきますのでご了承ください。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=310122&uid=11127


461話

ランページが全盛期を越えつつある裏で一人のウマ娘は着実に力を蓄え続けていた。これまでG1レースに幾度も出走するも後一歩で手が届かなかったり、目の前で悔しい思いをしてきたがその都度に次こそは勝ってみせるという思いが燃え上がり続けていた。決して努力をやめるつもりはない、自分の走りは絶対に強いのだという思いもある、後は……ほんの僅かな勇気と自信を持つだけで彼女はG1を制覇出来るんだと担当トレーナーである南坂は思っている。

 

「うぬぬぬ~ん……マチタンライジングフォームはあと少しで進化できる気配があるんですけどねぇ……経験値の他に何か条件が足りてないんですかね?」

「ターボさんのスタートダッシュ、ネイチャさんのロングスパート、イクノさんのペース管理、様々な走法の美味しい所取りをしているのがタンホイザさんの走りですからね、何か自分だけの何かを物にする事が必要なのかもしれませんね」

 

実際、南坂はタンホイザ程器用なウマ娘もいないと思っている。此処まで様々なウマ娘の長所をミックスした上で一つの走りとして昇華させているのだから。普通こんな事したら本来の走りがぐちゃぐちゃになるか、逆に振り回されてしまう筈なのに。

 

「実際問題、テメェは随分と器用だぞ。そのうえで自分のスキルも持ってんだ、ライバルに恵まれてるってのも考えもんだな」

 

そう言いながらも草加せんべいをバリバリと食べているサンデーサイレンス、タンホイザのスペシャルトレーナーを務めて貰っており、その際には本気で追い回して貰って意図的に外部から強いプレッシャーを掛ける事でタンホイザのリミッターを一時的に外している。恐怖から逃げる、これほどに走る時に力を発揮出来る物もない。

 

「サンデーさんもすいません、色々お世話になってるのにG1に勝ててなくて……でもでも、次のジャパンカップは勝ちます!!」

「おっ言ったな?んじゃ負けたらお前お気に入りの肉まん10個奢りな」

「10個ですか!?うぬぬぬっ……」

「もしも勝ったら、俺が20個奢ってやるよ」

「何と20個ですか?!乗った~!!」

「よし交渉成立な」

 

そんな簡単に乗ってしまっていいのかなぁと南坂は苦笑いを作るのだが、あのサンデーサイレンスに此処までフレンドリーに接する事が出来るのはランページやターボを除けばタンホイザしかいない。他は如何しても敬うか恐れるかの二択、だがタンホイザは敬いつつも仲良く対応出来ている。

 

「あっそうでした、実はランページさんからも何々かを取り入れられるんじゃないかと思ってずっと研究してたんですよ」

「つってもあいつターボと同じ逃げだろ?スタートダッシュ以外位しかないしそれだとターボのと競合しちまうしなんかあったか?」

「それがあったのです!!しかも私ならば活かせるであろうそれを!!という訳ですので是非サンデーさんに聞いてほしいんです」

「ほうっ話してみろ」

「はいっ!!私の調査によりますと、ランページさんの強さはですね―――」

 

そこから自分なりの調査によって導き出したランページの強さを列挙していく、南坂から見てもよく調べられているしよく考察出来ている。カノープスという同じチームに所属していたから得られたデータではなく、他所もやろうと思えばとれるデータから導き出している。

 

「という訳でして、これなら私も行けると思うですよ。自慢じゃないですけど、私ステイヤー気質なのでスタミナとか身体の強さには自信あるので」

「面白いじゃねえか、やらせてみるか南坂よ」

「そう、ですね。分かりました、しかしタンホイザさんもよくここに辿り着きましたね……カノープスならもっといいデータありましたよ?」

「あ~いやそれも考えたんですけど、ほらっそれってトレーナーさんとランページさんの絆みたいなところあるじゃないですか。そこに踏み込むってなんか野暮っぽいし自分で一から調べてからこそ意味があるんじゃないかなぁ~って思って頑張ってました」

 

そう、此処だ。タンホイザの最も凄い所は。自分の事を最もよく理解している、極当たり前の事だが勝負の世界では自分よりも相手の理解をしようとする者の方が大多数、その極地がアグネスフローラ。だがタンホイザは自分でコツコツ、地道に努力を積み重ねていく。既に楽な道がある筈なのに自分で歩いてこそ意味があると信じて一つ一つ積み重ねていく、圧倒的な才能や実力差を目の当たりにしても腐る事も嫉妬する事も悲観する事もなく歩き続ける精神性こそが最大の長所。

 

「よ~し頑張るぞ~えい、えい、むんっ!!」

 

そんな思いが積み重なっていく中で、遂にジャパンカップの日がやって来た。毎年、年を重ねていく毎に世界的にジャパンカップへの注目度は高まっていき、一部では既に凱旋門級のレースだと言われている事もあるらしい。

 

『さあ先頭を行くのはフガクヘッジホッグ、二番手にはビワハヤヒデが付いております。間もなく中盤を越えて後半戦、さあ此処で、此処で伸びて来たは凱旋門2着のサクラローレル!!ナリタブライアンの姉、ビワハヤヒデに襲い掛かっていく!!』

 

「ブライアンちゃんのお姉さん、勝負です!!」

「望む所だ、凱旋門に出た脚を見せて貰おう!!」

 

記念に先んじて凱旋門後の初の日本レースとして選ばれたジャパンカップ。あの凱旋門で僅かにフローラに敗北した脚はどこまで通用するのかと思う中で、レースはどんどんとハイペースになって行くのが分かった。最初のゆったりとしたスタートが嘘のようにどんどんペースが上がり続けている。

 

『さあ第3コーナーを回って先頭は入れ替わってビワハヤヒデ!!後ろにサクラローレルが付いている、そしてマーベラスティアラ!!ナイスネイチャも上がってきている!シャングリラクリークも迫ってきている!!ジャパンカップの牙城を崩す海外ウマ娘達は来るのか!?』

 

先頭はランページと走り続けた結果として先行逃げ切り気味になりつつあるハヤヒデとそんなペースにも平然とついていくローレル、そんなペースにロングスパートで仕掛けているネイチャ。そんな彼女たちを見ながらもひとりのウマ娘は前を塞がれているが冷静さを保ち続けていた。

 

『呆れる位に平常心だなお前……なら、今度は俺を抜いてみろ』

『へっ?追いかける、じゃなくて?』

『応、十分に追われただろうから今度は抜いてみな』

 

「あと少し、もうちょっとだけ―――よし、此処だぁっ!!」

 

『さあ第四コーナーへと入る、ビワハヤヒデが強いぞサクラローレルも必死に着いて行くがこのハイペースでもまだまだ脚色が乱れないビワハヤヒデ!!これが無敗の三冠ウマ娘の姉の力か!!さあ直線に入るぞさあ直線に入ったビワハヤヒデがまだまだ先頭、だがサクラローレルも迫ってきているぞ!凱旋門2着の力を見せ付けられるのか!?ナイスネイチャもあと3バ身!!これはこの三人で決まりか、海外ウマ娘を振り切っている、いや後ろから後ろから来ている!!これは、マチカネタンホイザ!!マチカネタンホイザが直線に入ってから猛烈な勢いで猛スパート!!これは凄い脚だ、前を塞がれていたタンホイザが一気に上がってきている!!凄い末脚だシャングリラクリーク、デザートビット、ペアーツリー、海外ウマ娘をごぼう抜き!!既にナイスネイチャを捉えて、いや越えていったぞ越えられたぞマチカネタンホイザ!!』

 

「これがマチタンフォームの究極系、アルティメットマチタンフォーム!!いっくぞぉぉぉ!!!」

 

『残り200を切った、ビワハヤヒデが逃げ切るのかローレルが差し切るか!?いやタンホイザが突っ込んできたタンホイザタンホイザ!!マチカネタンホイザが並びかけ、ずに先頭に立った!!先頭に立ったぞマチカネタンホイザ!!残り100を切って、念願の初G1まであと一歩!!あと少し、後少しでゴールイン!!マチカネタンホイザ、ビワハヤヒデ、サクラローレルを捻じ伏せてジャパンカップ制覇!!2着にビワハヤヒデ、3着にサクラローレル!!4着にナイスネイチャ、チームカノープスがジャパンカップを大席巻!!これがあの暴君のいたチームの強さか、念願の初G1は世界を相手にしての勝利を手にしたぞ!!』

 

「や、やった……出来た……やったやったやったった~!!!皆私勝ったよ~!!」

 

タンホイザの笑顔は何処までも明るく、見る者を幸せにする不思議な笑顔。故に彼女のファンは多いのだ。そして彼女の勝利を待ち侘び続けていた者にとってこの時は……何よりも祝福の時だった。

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