貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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463話

「チャンピオンズカップの解説引き受けたってマジなん?」

「お前が出ないからその代理ってのは冗談だ」

 

ネメシスの統括チーフとしては引き続き仕事をし続けているランページ、何せ肝心のサンデーサイレンスがそれ関連を自分に丸投げしているので致し方ない。代理を立てるにしてもサンデーが隣に立つ事を認めるトレーナーなんて滅多に居ない。そんな中でランページはある事を尋ねていた。

 

「俺の代理がアンタって豪華すぎるにもほどがあるからな、ンで実情は?」

「俺が今回レジェンドレースに出る事にアメリカのURAも随分と過敏に反応してるらしくてな、それである奴がチャンピオンズカップの併走パートナーとして来てやがんだよ」

「ある奴って、誰よ」

「イージーゴア」

 

思わず操作していたタブレットを落としそうになってしまった。

 

「マジかよ、とんでもねぇのが来てるのか」

「御大から連絡があってな、如何も向こうのURAがレジェンドレースで随分と揺れてやがるんだと。BCだと日本に色々とやられ続けてるからアメリカのウマ娘の力を見せる為なんだと」

「なんだそりゃ、そんな事の為に態々イージーゴアを付けたってか」

「くっだらねぇよな」

 

サンデーサイレンスのライバル、イージーゴア。サンデーサイレンスとは対照的な超良血、美しい馬体で圧勝を重ね、最優秀2歳牡馬としても選出され、セクレタリアトの後継とまで言われた馬。

サンデーサイレンスが持っていないものを全て持って生まれたと言っても過言ではない真逆の存在のライバルの戦いはアメリカでは伝説とすら言われている。

 

「あの野郎は俺に会いたいとか言ってるそうだが俺からすればもうアイツは如何でもいい」

「ライバル相手に随分と冷たいな」

「ハンッじゃあテメェは俺の事を羨ましいとか抜かしやがった奴と顔合わせて何駄弁れってんだ?あいつは俺の何を知ってる、何も知らねぇで口先で世迷言抜かしてる温室育ちのお嬢様だぞ」

 

現役中は幾度もぶつかり合った二人、ウマ娘としても二人は戦い続けた。結果としてはサンデーが勝ったと言うべき戦歴なのだが……ある時から完全にイージーゴアとは関係を絶ったとの事。それはあるパーティでのことだった。

 

『私は彼女に勝てなかった、認めざるを得ないでしょう。私は貴方が羨ましい』

 

互いに対するコメントを求められたインタビューでイージーゴアはそう発言した、その時にサンデーサイレンスは完全にイージーゴアに対する興味を失った。マイクを手にしていた腕はだらんと下へと力なく垂れ、自然とそのままマイクは自らの重みで床に落ちた。

 

『……帰るぞトレーナー、御大』

 

そう告げて共に来ていたトレーナーとセクレタリアトを連れてパーティ会場から立ち去って行った。それを周囲は必死に止めようとしたが、止める事も出来ずに三人は会場を後にし、唯、理解出来ず呆然とするイージーゴアと二度と会う事もなかった。

 

「アイツはレースを楽しんでいた、俺とのレースも楽しんでた。現役ん時はそれでよかった、レースを愛してる奴なんだってな。その上で俺との死闘を楽しんでたってな―――それだけだ」

 

イージーゴアはレースを愛していた。だがそれはメジロラモーヌのようなレースへと向けて強くも深い愛情とも違う愛し方、愛でていただけだった。

 

「楽しかったんだろうな、ちやほやされて走るのが。全てに恵まれて走るのが。レースを愛する自分を愛してくれる親が……それなのに俺が羨ましいだぁ?ざけんじゃねえよ」

 

思わず地面を踏みしめた、大した音もしなかった筈なのにネメシスの全員がそちらを見たのだ。同時に発せられた尋常ではない憤怒と殺意、無表情であるのにも拘らず迸るそれらに呼吸すら忘れそうになった。

 

「俺の何が羨ましい。醜いって言われる足を持った事か、事故で歩けるかも分からない身体になった事か、家族に捨てられた事か……あいつは何も知らねぇンだよ。俺にとってのレースは飾って愛でるようなもんでもなければただ走って満足するようなモンじゃねぇ……俺にとってのレースはな―――死闘なんだよ、テメェが持てる限りの全てを持ってテメェでやる殺し合いだ。俺はこの脚で夢を踏みにじって殺してきてんだよ」

 

イージーゴアとサンデーサイレンスの最大の違いはレースへのスタンス。イージーゴアは唯レースが好きなのだ、いうなればスズカのそれに近いだろう。だがサンデーの場合はレースは戦争。死力を尽くして戦い抜いて相手の全てを打倒した上でそれら全てを受け入れて前へと進む戦場なのだ。そんな考えがどれだけ歪んでいるのかは彼女自身が理解しているし認めている、この生き方以外出来ない事を受け入れている。

 

「勝った奴は負けた奴の夢を背負って走らなきゃならねぇ、あいつはそれを教えられずに走った。何も変わらねぇし自分で変わろうともしない奴に俺は興味ねぇ」

「そういう事ねぇ……顔合わせて数秒で殴り合いとかすんなよ?」

「向こうの出方次第だ。まだふざけた事抜かすようなら……おらテメェら何時まで突っ立ってる気だ走らねぇとテメェから締めるぞゴラァ!!」

『は、はいいいいいい!!!』

 

その声で我に返ったのかネメシスは再び走りだした。まあまさかこんな話になるとは思わなかったので彼女達は責めにくい。後でフォローを入れておかなければ……。

 

「俺みてぇな苦労が羨ましいなんてほざく脳たりんに愛想尽きたって所だな。尊敬するならトレーナーか御大にすべきだろ」

「それは言えてるな。普通に考えればイージーゴアとサンデーサイレンス、どっちに素質があるかって言われたら確実に前者だ。それなのにアンタを育てた二人には敬服するよ」

「俺への尊敬なんざいらねぇ、向けるなら二人に向けてろ」

 

自分とフローラとは全く違う確執がある二人。向こうは兎も角、この運命に噛みついたウマ娘はまともな対応は期待出来そうにない。

 

「だとしてもよ、大人の対応を頼むぜ。聞けば聞く程、向こうはマジの純粋培養のお嬢様なんだからよ」

「あ~あ、あいつがマックイーンみてぇだったら良かったのによぉ。解説フケて、あいつと野球観戦にでも行ってくるか」

「相変わらずマックイーンとは仲良いのな……」

「甲子園にも行ったし今度一緒に北海道に食い倒れツアー兼プロ野球見に行くぞ」

「少しは自重しろ」

特別編に関するアンケート

  • ランページが未来に行く
  • 未来からランページ産駒来襲
  • そんな事よりドゥラ出す為に本編書け
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