「あっランちゃん、ごめんなさいね急に呼び出しちゃって」
「いい女からの誘いだったんでホイホイ来ちまったぜ」
「いやんいい女だなんて、もっと言って!!」
「あのお婆様、その辺りに……」
「早くした方が良いと思うが……」
チャンピオンズカップの前日。ランページは変わらず仕事を片付けながら自分の修練に励んでいたのだが……突然、スーちゃんことスピードシンボリから電話が掛かってきたのだ。しかも少しだけ困ったような声色だったので何かあると踏んで無理なら断ってくれていいと遠慮していたが、踏み込んでみた。そしたら何故かルドルフとシリウスまでも揃っている。一体何事だろうか。
「済まないランページ、君も忙しい立場だろうに」
「まあどこぞのパイセンに比べたら忙しいでしょうな」
「嫌味かテメェ」
「いえいえ別にそんな事は御座いやせん、ただアグレッサーの統括チーフでチームトレーナーな立場の俺ちゃんと比べたら大抵の人は暇だろうなって思ってるだけで御座いますよ」
「テッメェ……今度覚えとけよ……!!」
「その言葉そっくりそのまま綺麗に包装して送り返してやらぁ、少しはスーちゃんと風呂とか寝るとかやりやがれってんだ不良ウマ娘」
相変わらずスーちゃんの事を苦手としているシリウスに比べてランページはスーちゃんとの距離は極端に近く最早家族の領域、血が繋がってるんじゃないかと思うレベルには壁がなく一緒に食事をしたりお風呂に入ってお互いの頭を洗いっこまでしたとルドルフも聞かされて自分もそれをする羽目になった。まあ普段から近づき難いと思っている祖母との交流は嬉しく思っているのがシリウスとの大きな違い。
「止めなくて宜しいのですかお婆様?」
「フフフッ♪いいのいいの、シーちゃんも楽しそうだし」
「楽しそう、ですか?」
客観的に見ればシリウスはからかわれている子供、ランページはそんな子供をからかって楽しんでいる大人のような光景。それなのにシリウスは何処か楽しそうだという祖母の言葉がどうにも理解出来ない。
「まだまだ未熟ねルーちゃん♪」
「お婆様には、届きませんよ」
「やっかましいんだよテメェは!!つうか無茶言うんじゃねえよ!?」
「何の為の地位と権力だと思ってんだよ使える時に使うのがそれなんだよ!!」
それと、いい加減に止めないとどんどんと発展しそうだから本気で止めよう。
「ンでなんでまた突然俺を呼んだのよ、スーちゃんに会長にシリウスパイセンまでいるんだから俺なんて居なくてもよくね?」
一先ず争いをやめて歩き出した一行、なぜ自分を呼んだのかを尋ねるとルドルフが困ったように肩を竦めた。
「今日はチャンピオンズカップの前日、それで日本代表と各国代表の会見が行われその交流の場も執り行われた訳だ」
「あ~……なんか察したわ」
「そうしてくれると助かるよ」
何というか読めた気がする。そのまま足を進めていく中でついに辿り着いた部屋、扉の両隣にはばんえいウマ娘のガードマンがいるのだが内部から溢れだしている殺気のせいで顔色が優れない。身体も震わしている。
「……ご苦労様です、これ近くのスイーツ店で使える交換券使ってくれ」
『有難う御座います……!!』
労い代わりに一緒に写真撮影などもこなしつつもいよいよ中へと突入した、そして中には―――
「ラ、ランページさん……!!」
「来てくれて本当にありがとうねランページ」
救世主得たり!!と安堵の表情と息を漏らしているマックイーン、そして漸くこれで楽になると言わんばかりに肩を撫で下ろしているアサマというメジロ家の重鎮が揃っている状況だった。何事かと思ったが視線を動かせば理由は直ぐに分かった。
「……」
「……」
無言のまま脚を組んで座っているが、殺気と怒りが留まる事もなくあふれ出し続けているサンデーサイレンスともう一人、それらを受けてなお平然としているが確りとサンデーサイレンスを見据えているウマ娘がいる。栗色の髪が長く手足も長く長身で誰もが思い描くご令嬢という美しさを纏っている、セクレタリアトの後継とも呼ばれるのも納得だ。そのウマ娘の名はイージーゴア。
「いやなんでマックイーンとお婆様までいるんだ?」
「実は……サンデーさんは解説者としてもチャンピオンズカップに出席予定だったのですが、この集まりにぜひ出て欲しいと言われていたらしいのです。しかしそんな事は私は知らずに一緒に野球観戦をしてたんです」
「真実はイージーゴアさんがいるから来たくなかったという事でしょうね、だから私がマックイーンごと連れて来たという訳」
「その挙句こういう事になったから俺を呼んだと?」
アサマが肩を竦めながら頷いた。確かにこうなったら並の者ではこの状況を変革する事は難しいだろう。それで国際交流の場でもあるので出席していたシンボリを通じて自分を呼んだのか、お婆様達はこの場を諫める事に全力を費やしていたという所か……。
「お疲れ様です、後が俺がやります」
「頼みますよ。やれやれ歳は取りたくありませんわね、この程度で疲れてしまうなんて」
「わ、私はもう……天皇賞春を走った以上に疲れた感じが……」
マックイーンなどは特に疲れた事だろう。何故ならば彼女は人当たりが良くてノリがいいサンデーばかりを把握している。此処までの殺気を出せる事なんて分からないだろうしサンデー自身もマックイーンとは仲良くしていた、その面を見せないのも当然だ。一先ずこの状況を覆す。
ランページは平然と殺気が溢れる空間をへと脚を進める、最早地獄と言っても過言ではないサンデーサイレンスの領域へ。それを見るトレーナーやURA関係者は畏怖の目でそれを見つめる、そして徐に咳払いをすると―――
「チェストォ!!」
「げふぅっ!!?」
『なっ!!?』
サンデーの頭部を引っ叩いた。余りの事にイージーゴアすらもぽかんとしてしまった。
「ってぇ何しやがる!!ってなんだランページじゃねえか」
「何だじゃねえんだよ唐変木、テメェが場の空気を乱しまくるから俺が出張る事になってんだよ。アンタの仕事をするのは俺の役目だがそれはあくまでネメシスオンリーだ、外の事まで俺にやらせんじゃねえよドアホ」
「んぁ~そりゃ悪かったな、ゴメ」
「軽過ぎるわもう少し感情込めろ」
そこにあったのは完全な友人同士の空間、先程あった筈の殺気と怒りは完全に四散して和やかさすらあった。それを見てイージーゴアのトレーナーは一筋の汗を流した。
「(これが……世界最速にして最強、世界にその名が轟く独裁暴君たるメジロランページ……あのサンデーサイレンスの殺気や怒りに動じる事もないどころか頭を叩くなんて……神すら恐れる所業なのに……)」
その実力、精神力は紛れもないと思う中で横目で担当の姿をみれば一方であのランページの姿をみられたことに喜びながらも如何してサンデーサイレンスは彼女とあんなに話すのかという疑問の二つを抱いている事に気づく。
「(……ハァッ本当に一筋縄じゃ行かない……天然というか人の心に疎いというか……)」
「あの、もし?私も話に参加してもいいですか?」
「テメェは黙ってろゴア表現で此処埋め尽くすぞ」
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ランページが未来に行く
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未来からランページ産駒来襲
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そんな事よりドゥラ出す為に本編書け