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URAファイナルズ及びレジェンドレースのレセプションパーティー。今年度より正式に運営がURAに移行した事で漸く堂々とURAの名前を名乗ることが出来るのだが……その運営に当たっては矢張りメジロランページの力添えが大きい所が否めない。何故ならば、未だに地方と中央の溝は深く、現状はその深い深い溝に一筋の橋が新たに建造されたに過ぎないので溝を埋めなくてはならないという意味では解決に至っていないからである。
運営が移管された事に協力を渋る地方トレセンも見られ、早くも運営は困難かと思われたがランページの顔に泥を塗る気はないという団結の意思が見られて今年も開催まで漕ぎ付けたのだが……これだけの事を一人で発案し設立まで持って行ったランページの影響力には舌を巻くしかない。
「(このパーティだってメジロランページの名の下に行えてるようなもんだしなぁ……)」
運営役の幹部として尽力していたこの男もこのパーティに招待された訳だが、あちらこちらからランページの名前が聞こえてくる。だが彼女のお陰でURAに蔓延していた膿も大部分が除去できたと喜ぶ者も多い。今日はそれを彼女に伝える役目も担っているのだが……できればサインも欲しいと彼女を探していると一角にセッティングされたバーカウンター、主にトレーナーやレジェンドレース出走予定の社会人や大学生ウマ娘向けに準備した所にランページの姿を発見出来た。その隣にいるのは超VIPだった。
「(あれってグッバイヘイローさんじゃないか!!?い、一体どういう組み合わせだ!?)」
聞き耳を立てたい気持ちをぐっと抑えながら、遠目に弱めのカクテルをちびちびと呷りながら話終わるのを待つのであった。
「(あれ、なんか胸ポケットを叩いた……癖かなんかか?俺もよく手首スナップさせるから人の事言えないけど……)」
「何をお召し上がりに」
「軽いものを頼むわ」
「ドライマティーニ」
「畏まりました」
バーテンダーに要望を伝えるが、自分は普通に弱めの物を頼んだのに平然と強いカクテルを頼むランページにギョッとする。そして暫し沈黙が流れる中で注文の物が届くと軽く少しずつやるつもりだったのにランページはそれを一気飲みする。
「……悪くねぇな、だけどカクテルは俺の趣味じゃねぇな」
「そう来ると思っておりました、此方のバーボンなど如何でしょうか?」
「話分かるねぇ」
そう言われてバーボンを注がれるが、あのバーボンも相当に度数が高い筈……どれだけ酒に強いのだろうかと思っているとランページが口を開く。
「いい加減話しようや、アンタが聞きたいのは娘さんについてだろ」
「ええ、寧ろそれ以外に何があると思って?」
「アンタがデザイン関与した勝負服を一切着ない事について」
「それは確かに一言言いたいわね」
ハッとしたように口元を抑えるがランページのニヤついた顔が全てを物語っていた。成程、これはキングの母親だ。あのポンコツは母親譲りだったという事になるがこれはこれで人間味があっていいじゃないか、思っていた以上にいいひとに思える。
「そ、それであの子についてなんだけども!!」
「ああ、キングからある程度の事は聞いてるよ。アンタ自分の子供相手にキツく言い過ぎ、言葉足りなさすぎ、口下手すぎ。あいつはまだ子供なんだから言葉の裏の意味を読めなんて無理に決まってるじゃねえか……しかも自分の母親の言葉なんて額面通り受け取って当たり前だ」
「あ、あの子は凄く頭もいいし私に似て筋が取ってるし分かると思うわ」
「その果てが悪態つかれた上にアッカンベーされた気分は如何よ」
言葉がないと言わんばかりにカクテルを飲む。大切な娘からあれをされたら相当に効くだろう、それだけは分かる。
「一つ言っとくけどな、キングの才覚は相当なもんだ。今年の入ってきた新入生の中じゃ確実に上澄みも上澄み、アンタの言い分は俺からしたら理解出来んな」
「……今は上澄みかもしれない、だけどこれからあの子がデビューして本格的なレースに出るとしたらどうなの。あの子以上の才覚、努力をするウマ娘は当然いるわ」
「居て当然、そこを如何にか最強の手段を模索するのが努力と戦略なんだ。今からンな事にビビるんだったらレースに出る資格なんて最初からない、だがキングは寧ろそれを望んでいる。強い相手と競ってこそ真の勝利、名誉だと思ってる。あの歳で強い考え方だ」
「……ダメよ、レースの世界はあの子が思ってるほど優しい世界なんかじゃないの。サンデーのいう事を引用したくなんかないけどそれこそ戦場よ」
其処には愛しい我が子を辛く厳しい世界に送り出したくはないという母の気持ちがあった。グッバイヘイローの現役時代も辛い物がたくさんあった、G1を7勝こそしたが本当に勝ちたいと思った相手に勝てた事はない。良い事もあっただろう、だが辛い事の方が遥かに沢山あったのだ。それらは人生の教訓として、自らを強くする一助にこそなっているが娘にはそんな苦労はさせたくはない。自分が守ってあげなくてはならない。それを受けたランページは―――
「だったらそれを口に出せよバカかよ」
オブラートに包む事もなく切れ味抜群なまま突き刺した。流石のグッバイヘイローも戸惑っている様子。まあ超一流デザイナーである彼女にこんな言い方をする輩は普通いない。
「思いは口に出さば伝わる、だが出さなければ伝わらないのが常だ。大人はそれこそ酸いも甘いも噛み分けるからこそ感じ取れるが子供には無理だ」
「……でも」
「―――一人のウマ娘が居た、そのウマ娘は家族を失って叔父夫婦に引き取られたが夫婦はそのウマ娘の両親の遺産の殆どを持って高飛びした。残されたウマ娘は一人になった」
突然の話に戸惑った、だがその話は家族を失ったウマ娘の話。グッバイヘイローは自然と聞き耳を立てながら真剣な顔でそれを聞いていた。
「やがてウマ娘は心身共に衰弱し自殺を決意した、だがそんな彼女を救ったのは新しい家族だ……そしてそのウマ娘は見る影もない暴君へと成長しましたとさ」
「暴君って……まさか!?」
「おっとストップだ、こんな所で騒ぐ内容じゃねぇぜ?」
お前がいきなり話したんだろうが……目で抗議しておくが当人は全く気にも留めずに酒を呷る。
「アンタとキングはちゃんと会えて話せる、俺みたいに取り返しのつかない事にならない前にちゃんと親子としての話し合いをしな」
「でも、あの子には私と同じようにデザインの才能もあるのよ、そちらを……」
「それは分かってる、だが決めるのは本人だし無理強いさせると余計に拗れる、というかもう実際に拗れてる。デザイン云々を言うなら現役時代に実際にそれを着て走るウマ娘を見る事も審美眼とか色々を養う事にはなるだろ」
「それは、確かに……実際、私のも現役時代に気になった部分を修正した物もあるし……」
本人が言ったように、何後も経験なのだ。酸いも甘いも味わってこその人生だ。
「それに―――イージーゴアみたいだな、とかサンデーに言われたくないっしょ?」
「……確かに」
彼女の耳にも届いているらしいイージーゴアの家云々。まあ元々アメリカに居たウマ娘だしこの位は聞いていて当然か。
「私はキングに強く当たり過ぎていたのかしら……父は母からはあんな感じだったのだけど……」
「強すぎな上に言葉足りない口下手で役満だよ」
ガックリと項垂れてしまった、言い過ぎたかもしれないと思ったがキングはこれ以上に辛い思いをしてきたんだからこの位は言わないと変わらないだろう。
「子供の夢を応援してくれるお母さんってのは尊敬されるもんだぜ、いきなりは難しいかもしれないけどまずはちゃんと話し合いな。キングは大人びてるけどちゃんと子供っぽい所もかなりある。アンタに似て若干ポンコツだしな」
「わ、私のキングのどこがポンコツよ!?」
「そういう所だよ」
なんだかんだで心配だったが、グッバイヘイローの本音を上手い事引き出せてよかったと思う。
「んじゃまあ、そういう訳だ。俺の話は終わりだ」
「待ちなさい私の話は終わってないわ、如何して私のデザインした勝負服を一切着なかったのかしら!?」
「露出でかいドレスだから、以上」
そう言い切ってその場を後にする。グッバイヘイローは何処か悔し気にしながらも今度は絶対に満足させるデザインを仕上げて見せる!!と自分に宣言するのだが、現役引退して新しい勝負服を受け取る機会なんてないのにどうやって渡すつもりなのだろうか……と思いながらも胸ポケットに入れていた携帯を出して声を出す。
「如何だったキング、これで分かっただろお前の母さんがお前の事を大好きだって事を」
『グズッ……お母様のおバカぁぁぁぁ……そうならそうと、初めから、言いなさいよぉ……』
実はグッバイヘイローと接触する前にキングと通話状態を作っておいたのだ。これでキングは母の思いを十分に知った筈。これで次会った時は少しはマシになるだろう。
「分かってあげてくれよ、お母さんの事をな」
返事はなかったが、大粒の涙を流しながら母の事を呟くキングの声を聞いてランページは満足げに通話を切るのであった。
「仲が良い事が一番だよなやっぱり」
特別編に関するアンケート
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ランページが未来に行く
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未来からランページ産駒来襲
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そんな事よりドゥラ出す為に本編書け