一先ず理事長へ顔合わせが出来たのでこれからどうするかなぁと思っていたのだが……そこで事件が起きた。尚、フローラではない。
「―――なんだこのトモ!?筋密度が半端ねぇ!?」
「ふぇっ!?ふぇぇっ……ふぇっ、が、我慢……フォードは強い子……うわああああああん!!」
「あっしまったつい!?わあああ悪かった悪かった!!?」
スピカのトレーナー、沖野の悪癖がフォードに炸裂したのだ。今此処に居る娘たちの中で、というよりも自分の娘の中でフォードは特に気弱で臆病な性格で後ろから肩を叩くだけでも酷く吃驚してひっくり返りそうなほど。そんなフォードにいきなり足を触ったりなんてしたら……
「いやマジですまんかった!!本当にスゲェいい脚してたもんで!!?」
「褒め、てくれるのは嬉しいけど……怖いよぉおお!!」
「いやマジでぇぇっ!!?」
本気で悪いと思っているのは分かっている、沖野も沖野で悪癖を抑える為に色々自重していたりしているしトレーナーの身になってからはウマ娘の脚に触れてその状態を確認する意味の重要性は理解出来た。ウマ娘の脚はガラスの脚で繊細な物だ、故に沖野の行いもウマ娘の身体を慮っているから……と自分を納得させようとしていたのだがそんなもので抑えられる程、この激情は容易い物ではなかった。沖野の顔面をアイアンクローしながらも腕力だけで持ち上げる。
「テメェ……その悪癖好い加減に直せっつったよなぁ……何回俺に言わせんのかなぁ……!!?俺の勘違いだったかぁ……なあ、なぁああ!!?」
「ぐあああああああっ!!!わ、悪かった、本当に俺が悪かったぁぁぁぁ!!」
「今回ばっかりは謝罪程度じゃ許さねぇんだよクソがぁぁぁぁぁ!!!!」
娘達と会った事で元々持っていた母性が覚醒したのか、それとも三女神によって調整されたウマソウルも活発化していると言わんばかりにランページは母としてキレていた。大事な娘にこんな痴漢行為をされたらキレるのは当然だろうが……。
「それで―――って何やってますのランページさん!!?どうしてトレーナーさんにアイアンクローをなさってますの!!?また、またなんですの!?バカなんですの、アホなんですのトレーナーさん!?」
「またやったのトレーナー!!?ボクの脚じゃ物足りないっていうの!!?」
「ラン、ランマジでストップだって!?なんか白目剥き始めてるから殺しちゃまずいって!!?」
そこへやって来たマックイーンとテイオー、そしてライアンがやって来た。如何やら合同で受ける授業だったらしい。そこへ偶然出くわしてしまった。
「許せるかぁ!!!こいつはなぁ、俺の娘の脚を無断で触りやがったんだ!!今日という今日は許す事は、出来ぬぅ!!!」
「は、反省しております!!本当に悪いと思っておりますのでご容赦くださいませぇ!!!」
「所詮、屑は屑なのだぁ……お前が反省の意思を見せなければ、俺はお前を血祭りにあげて、その後で破壊しつくすだけだぁ!!」
「しておりますって!!?」
「……なあアマテラス。母さんがブロリストなのは知ってたけどマジギレ状態で言うとこんなにも威圧感あるもんなんだな」
「うん……ギャグ扱いされてるけど絶望的な状況的且つ圧倒的な敵の言葉だからね」
「テイオーさんいるけど、ママ怖すぎてテンション上がらないや……フォードはああいうママは怖くないの?」
「う、うん……だってお母様、私の為に怒ってくれてるんだもん……」
「「出来た妹だよ本当に……」」
その後マックイーン、テイオー、ライアンの尽力もあってランページは漸く沖野を解放したのであった。尚、顔に確りと指の跡が残っていたという。
「エエエエッ!!?ジャ、ジャアコノコタチランノコドモナノ!!?」
「らしいぞ、どこぞの三女神が送り込んできたんだよ。何の意図があるんだか……」
「う~んランの娘かあ……よく結婚出来たなぁ」
「おいライアンどう意味だごら」
「ま、まさかそんな事になってるとは……」
こういう現場を見られたのだから三人には確りと事情を説明しておく必要があると思い、プレアデスの部室で事情を説明する事にした。勿論沖野も一緒である。
「お前は一体どんだけとんちきな事態起こせば気が済むだよ……」
「ア"ァ"ン!?人の娘の脚を触った奴がなんかほざいてるなぁ!!?」
「マジすいませんでした……」
「あ、あのもういいですから。謝って貰いましたし、フォ、フォードも驚き過ぎちゃってすいませんでした……あの、痛くないですか?でもお母様も私の事を思っての事ですので……」
「おおっ……ランページの娘とは思えねぇレベルで優しい子だ……」
実際フォードは気弱なだけではなく一番優しくて気配りが出来る子との事。被害者なのにこんなにも優しく出来るとは……。
「し、しかしランページさんの娘さんがこれほどとは……これはメジロ家は益々安泰という訳ですわね!!」
「あ~……確かに」
同じメジロ家であるマックイーンとライアンとしてはメジロ家が益々安泰である事に安心を覚えずにはいられない。何故ならば自分達は既に移籍してこれからのメジロ家を担うウマ娘の姿を見られて心からホッとした。
「そして、きっとランページさんが当主をなさっておりますのね」
「マックイーンさんだよ当主」
「私ですの!!?」
アマテラスがサラッと零した事実、如何やら子供達の未来ではアサマは既に退いて相談役に落ち着いているらしくマックイーンが当主をしているらしい。
「ど、どうしてですの!?ラモーヌ姉様にアルダン姉様、ランページさんまでいるのにどうして私が当主をしておりますの!!?」
「なんだマックイーン不服なのか?」
「そんな事があるわけありませんわ!!よく考えてくださいましトレーナーさん!!私以上に適任者が目の前にいると言っているんです!!」
そういってアマテラスとツクヨミを膝の上に抱えているランページとライアンを見る。この二人はライアンに特に懐いているらしくライアンさんと呼んで慕っている。ライアンも悪い気がしないのでニコニコしながらツクヨミを抱っこしながら頭を撫でている。そんな幸せそうな姿を見てぐぬぬ……となる。そうだロードはどんな感じ―――
「でねでね!!ボクテイオーさんの事が大好きなんです、ステップもいっぱいいっぱい練習したんだよ!!大人になってるテイオーさんにもいろいろ教えて貰ってたの!!」
「ホウホウ、ボクも君みたいな愛弟子が出来て鼻が高いなぁ、きっとランページみたいにナイスバディでカイチョーみたいにカッコいいウマ娘になってるんだろうなぁ……!!」
「いっいやその……ソ、ソウデスヨ」
「ナニソノフクミノアルイイカタアァ!?」
仲良くやっているロードとテイオー、その姿に思わず嫉妬しまうがそんな自分の頭を撫でてくるフォードの姿があった。
「え、えとえと……フォ、フォードはマックイーンさんの事大好きですよ?マックイーンさんみたいになりたくて、マックイーンさんにお嬢様のマナーとか色々教えて貰ってるよ?」
「フォ、フォード貴方……!!ランページさんの娘可愛すぎますわ~!!!」
「ぴゃぁっ!?」
と思わず抱き着いてしまったマックイーン。それを見て沖野はこの場に居る全員がランページの娘に懐かれているのは変わらないんだぁ……と思った。そして同時にある種の納得を覚えた。フォードの脚を変わった時の感触、あの触り心地には覚えがある。そう、筋力をアップして臨んだ宝塚記念辺りのマックイーンのそれと似ているんだ。あの華奢な身体なのに凄い筋肉量だった。
「それにしても……痩せてるマックイーンさんを見れるとは思わなかったよね」
「ああ。私達が知っているマックイーンさんはちょっとふっくらしてるからな」
「わ、私そんな感じなんですの!!?」
「うん、ボク達をよくだしに使ってスイーツバイキングとかに行っちゃってママに怒られたりもしたよね」
「うん、ケーキフェスとか行ったよね」
「未来の私、姪っ子たちを使って何をしてますの!!?」
そしてなぜマックイーンが当主に就任したかと言えば……
「母さんは養子だから権利はないとかいってさっさと逃げたとか言ってたな」
「ああ言ってた言ってた、それでライアンさんは柄じゃないとか言って遠慮してパーマーさんもそんな感じ。ラモーヌさんはえっと……なんでだっけ?」
「ボク覚えてないや」
「な、何て事ですの……!?」
「でも凄い大きくなってたよメジロ家、日本有数どころか世界有数になって世界のメジロマックイーンって呼ばれてて凄いカッコいいんだよマックイーンさん」
「私、当主になりますわ!!」
「お前それでいいのか」