「つうかよ、ランページの娘何だったら……こいつの旦那って誰なんだ?」
沖野が思わず一番気になっていた事を聞いた。娘がいるという事は家庭を築いているという事、ならばこの暴君と結婚して所帯を持った男がいるという事だ。逆玉の輿も良い所じゃないかという要らない所まで口走るのでマックイーンが脚を踏んだ。
「そのような事まで言わないで宜しいのですわ」
「でもまあ、確かにランと結婚する人って誰なのか凄い興味あるよねぇ」
「うん、ホント勇気あると思う」
「何度でも言うぞ、どういう意味だライアンコラ」
良くも悪くも世界的な知名度があるメジロランページ、彼女と婚姻関係になりたいという者はハッキリ言って多いのだ。現在でもメジロ本家に見合いの申し込みなどは多い。一番多いのはヨーロッパの貴族やら大企業やら、次点でアメリカの……という具合。
「ママ言ってたね、若い頃に凄いモテモテだったって」
「確かアラブの首長陛下の息子からも求婚されたけどえっタイプじゃないからやだ、で振ったとか言ってたな」
「おい待て、未来の俺は何処のしらほしだ。もうちょい断り方あるだろ。興味ない辺りにしとけ」
「いやそれも相当にあれな断り方だから」
「つうかそんな断り方して国交が不安定になってねぇよな……?」
沖野の不安は心配いらなかった。アマテラス曰く、断った際に首長陛下は大笑いして息子に残念だったなぁ!!と実に悪い顔をして弄っていたらしい。その後の息子は一ファンとして接する事を約束したそうな……。
「ンで誰なんだよこいつの旦那って!!」
「おい下世話な事を聞こうとしてんじゃねえよ」
正直な事を言えば、まあ自分も気にならない事もないのだが……恐らくだが自分が未来で惚れる男が出てくるのだろうから楽しみに待てばいい、これで南坂だったら笑うが。そりゃ盛大に笑う。
「え~……如何する?言う?」
「言わない方が妥当、だと思うぞ。下手にやって母さんたちの関係が気まずくなったらどえらい事になる」
「ママ達が結婚しなくなりましたってなったらシャレにならないもんね……」
「そ、それにゴールが誰か分かっちゃうと八百長みたいでなんか、やな気もする……」
「だよねぇ……という訳で勘弁してください」
4人の意見は一致して旦那は伏せる事になった。沖野は酷く残念そうにするが、妥当な選択と言えるだろう。
「でも、そうなるとボク達も結婚とかしてるのかなぁ……マックイーンは当主だし結婚もしてそうだけど」
「それは、如何なのでしょうか……メジロ家の為の婚約やらもないとは言い切れませんが……」
「でもなんかお婆様は自由恋愛推奨派って聞いた事あるよ、そういう伝手はほら、ランっていうワイルドカードから気にしなくて良さそうだし」
「応なんだライアン文句あっか、アメリカの三長官集結させて紹介したろか?」
「ほらっこういう事出来る人だし」
貴族と言えば婚約なども役目の一つとされているが、そもそもがメジロ家はそれらを組み込んでいない。アルダンなんて担当トレーナーと自分の世界を作っている、しかもトレーナーはメジロ家の一員になる覚悟を以て勉強も重ねてくれているのでアサマ的には大助かりだったりする。
それにコネ云々は既に十二分あった、のだがランページが世界を股に駆けて大暴れしてくれたお陰でコネクションが世界中に出来たのでもう数世代は何もしなくても問題はないぐらいの資産が出来てしまった。
「あっそうだ、あと一つ聞いていいか?」
「何だ変態、脚触っていいとか言ったらその瞬間にテメェの頭爆散させるぞ」
「言わねぇよ!!?」
「んじゃ何言いだす気だ」
「いやさ、ぶっちゃけお前さんらってどの位凄いんだ?」
一トレーナーとして気になった事があった。それは彼女らの走りのレベルであった。ランページの娘という事はそちらの方も期待してもいいのだろうかと気になってしょうがない模様。
「ロードはなんか、三冠取ったつってたよな?」
「うん取ったよ!!褒めていいよママ!!」
「ンな事言ったら私とツクヨミだって三冠よ?」
「「「「はぁ!!?」」」」
アマテラス、ツクヨミ、ロードが三冠を取ったと聞いて思わず目を見開いてしまった。しかもアマテラスとツクヨミが一番上だという話なので、初めての子供が双子のウマ娘だった上にその二人が超元気に走った上に三冠を取ったという事になる。それだけでも異例中の異例だ。
「ふ、双子で三冠ですの!!?」
「そうだよ。私がティアラでツクヨミがクラシックで路線別だけど」
「ナニサラットイッテルノ!?何、ランとライアンの時の奇跡がまた起きたの!!?」
「さ、流石ランの子……常識に囚われてない……」
「マジか……つうか双子のウマ娘産んで、ランページはぴんぴんしてたってか……?」
普通の子供でも双子の身籠ると母体である母親には多大な負担が掛かってしまう。悪阻が酷い、妊娠高血圧症、更には合併症など母体の健康自体に影響を与えてしまい、それが胎児の発育遅延、形態異常、子宮内胎児死亡など、胎児の成長に関わるリスクいずれも単胎児よりも高いとされている。ウマ娘の場合は普通の子供よりも負荷が掛かる、その為の支援も充実しているが……ウマ娘の双子というのは酷く危険なのである。
ウマ娘の場合はそれだけ多くの栄養が胎児に供給される。それが単純に二倍、この場合はランページというウマ娘が母親なので普通の母親から生まれるよりも安全性は高いが……それでも危険性は高い。下手をすれば双子が何方も正常に生まれてこない、死産の可能性も高い。
「しかもそれで三冠取れるって事は二人共健康そのものってこったろ?はぁぁ……半端ねぇな」
「でも妊娠中に何方かって話をしたって聞いたよ、でもお母さんは断固として拒否したって」
「そうしたきゃまず俺を殺せって言い切ったらしい」
それを聞いてライアンは膝の上のツクヨミを撫でた、きっと未来のランは本気でちゃんとした親になろうとしたんだという事が分かった。そして結局二人は無事に生まれた。それどころか三冠を取ったのだから双子のウマ娘は大成しないだろうと言っていた声を一蹴したという。
「フォ、フォードは流石に三冠じゃないの……頑張ったんだけど……」
「だ、大丈夫ですわよフォード、何も全員に三冠を取れという期待はしておりませんわ……一勝出来ただけでも凄い事なのですから」
「でも、フォード凄いんだよ?菊花賞はハナ差で二着だったけどワールドレコード更新手前のタイムだったし」
「いや菊花賞でそれやるってどんな走りだ!!?」
「え、えとえと……お母様みたいな大逃げ……」
「ランページテメェの血族はバケモンか!!?」
「人聞きの悪い事言うなよ、ただの王の血族だ」
「暴君の間違いだろうが!!」
フォードはマックイーンのような優れたスタミナを備えたステイヤー気質の筈なのに大逃げをしてからの方が成績が良いという面白さを兼ね備えている。そして初G1が天皇賞(春)だと聞くとマックイーンは
「私の姪っ子流石ですわ~!!」
と大喜びだった。自分の娘なんだよなぁ……と思わず呟くランページにライアンは思わず噴き出した。そんな話を聞いた沖野は益々その走りを見たくなった。
「な、なあお前らその走りみせてくれないか!?」
と思わず叫んだ時に扉が開け放たれた、一体誰かと思ったがそこに居たのは葦毛で長身なナイスバディなウマ娘だった。そんなウマ娘はいい顔をしながらもサムズアップをした。
「話は聞かせて貰ったぜぇい!!!ゲートは滅亡する!!もう理事長には許可取ってあるぜ!!」
「ナ、ナンダッテー!!?じゃなくて貴方誰って……えっゴルシ!?何で此処に居るの!?」
「いや此処、過去!!お前無茶苦茶だと思ってたけど時間軸まで無視すんなよ!!?」
「何言ってんだよお前らがいなくなったからゴルシちゃんワープで追いかけてきただけだぞ、何言ってんだ?お前何言ってんだ?」
「3回も言われた!?あのゴルシに、やずやですら2回なのに!?」
「まあ兎に角舞台は整えてやるぜい!!ついでにこのゴルシちゃんも走るからな!!」
「それじゃあ、ゴルシさんと走るの……?」
「いや最大の相手は―――ラン姉ちゃああああああん!!!」
葦毛のウマ娘……ゴルシは思いっきりランページへと抱き着いた。その目には涙浮かべる程に喜びで溢れ返っていた。
「会いたがったぜぇいラン姉ちゃん!!いやぁ色気のある姉ちゃんも良いけど若い姉ちゃんも最高だな!!この胸の張りとか!!流石はゴルシちゃんが目指したボディバランスゥ!!エクセレントゥ!!!」
「さり気に揉んじゃねえよ!?」
「あっ代わりにゴルシちゃんの揉む?姉ちゃんなら幾らでも、乱暴しても、いいよ……?」
「急にしおらしく色気だしてんじゃねえ!!!」
「とにかく、ゴルシちゃん&ランページ娘ーズ対メジロランページだぜ!!」
という訳でゴルシちゃんが時間を越えてやってきました。如何やって来たって?明記したじゃん。ゴルシちゃんワープで来たって。何言ってんのよ皆さん、ゴルシならこのぐらい当たり前だよ。
そして次回、ゴルシ、アマテラス、ツクヨミ、ロード、フォード連合対メジロランページ!!