「いや、お母さんと走れるのは嬉しいよ?走ってくれない訳じゃない、ほぼ全盛期のお母さんと走れるとかもうマジであり得ない位の事だから嬉しいんだけどさぁ……マジで何でいるのよゴルシ」
「ンだよ細かい事気にしてると乳が垂れるぞ~」
「絶対関係ない!!」
「これにそれを言うだけ無駄だろ……ウマ娘という存在において最も理不尽且つ不可思議な存在のウマ娘にそれを言うの」
一先ず走る準備をしている娘達、ともう一人。葦毛で長身のウマ娘、赤い勝負服は酷く似合っているが如何にもハッチャけている性格が色んな意味で凄いバランスをしている。娘達も知っているが自分も当然知っている。
誰かが言った。競馬には絶対はないがシンボリルドルフには絶対があると。ならばこの馬が教えてくれたことは、競馬とは絶対のないギャンブルであるという事である。強豪犇めく世代の中でも、記録でもなく記憶に残り続けた名馬にして迷馬、黄金の不沈艦ことゴールドシップ。血統としては父にステイゴールド、母父にメジロマックイーンのいわゆるステマ配合の一頭―――なのだが、生み出されたのは途轍もない馬だった。皐月と菊の二冠馬にして有馬記念、2年連続宝塚記念、天皇賞(春)を制してG1を6勝、更に阪神大賞典を3連覇するという偉業を達成している馬だが……それ以上に性格が取り上げられる程。
気性難でありながらその賢さも有名だった。人間の言葉分かってるだろ、と言わんばかりの反応を見せたり、力の抜き方を分かっていたのか現役中は全く怪我をしなかったりとエピソードには事欠かない。が、矢張り一番有名なのは三年連続制覇が期待された宝塚記念。その三連覇を阻むように立ち上がった馬こそが―――ゴールドシップである。そう、文字通りに立ち上がったのである、ゲート内で。その結果、120億の馬券が紙切れとなり、伝説となった。尚、祖父のマックイーンも史実では140億程を紙切れにしている。実力もあるのだがそれ以上の愉快さで唯一無二のアイドルホースとなったのがゴールドシップであると言えるだろう。
「ふふ~ん♪なんたって、このゴルシちゃんだってラン姉ちゃんと走るのは楽しみなんだからな」
「如何でも良いけどラン姉ちゃん言うのやめろ、人の髪尖らす気か」
「何だよ嬉しい癖に~?」
「あ”?お婆様とスーちゃんとウーちゃん纏めて召喚したろか?」
「マジすんませんした」
一瞬で真後ろへ直立のままで後退、そして瞬時に脚を折りたたんだ事で空中で正座したかと見紛う程の早業、そのまま頭を地面へと確りと付けたまま謝罪を述べた。誰もが見た事がない程に見事な土下座に感嘆の声が漏れる。
「ゴルシ、アンタ母さんにそれやるのやめろって何度も言われてるのに懲りねぇなぁ……」
「ンな事言われてもゴルシちゃんには他意はないでゴルシ。これでも令嬢だった頃から、ラン姉ちゃんって呼んでたんでゴルシ、ついでにマックちゃんはずっとマックちゃんだったでゴルシ」
「どうして私だけそんなフレンドリー何ですの!?いや別に嫌じゃありませんけども、というか貴方もメジロ家の関係なんですの!!?」
「さぁ~とゲート蹴り飛ばしてスタートすっかなぁ~」
「聞いてくださいまし!!貴方、ランページさんに懐き過ぎじゃありません事!?」
そんな事を言われるゴルシ、こんな風な態度をしているがゴルシはゴルシでマックイーンの事を尊敬している。その証拠に……マックイーンに抱き着いた。身長の関係でマックイーンがゴルシの胸に埋もれているが……。
「アタシが世界で尊敬してるウマ娘は二人だ、ラン姉ちゃんとアンタだけだぜマックちゃん」
「な、なんですの急に……ま、まあちゃんとそういう気持ちがあるのならば良しとしますわ……」
「マックちゃん……ああっ元気なマックちゃんが見れただけでも来た甲斐があったぜ……」
思わずその言葉に全員が固まった。もしかして彼女のいる未来ではマックイーンに何かあったのか……と誰もが心配した時、その当人がゴルシの背中に手を回して優しく撫でる。
「未来の私に何があったかは分かりませんが大丈夫ですわ、私は誇り高きメジロ家のメジロマックイーンですわ。何時までも貴方が誇れるようなウマ娘であり続けますから」
「マックちゃん……」
そう言いながらゴルシは更に強く抱きしめながら回転し始めた、マックイーンはきっと未来でこんな風に遊んであげたんだろうなぁ……と思いながら優しくおやめなさいな~と乗ってあげるのだが……徐々にスピードが上がっていく。
「なんか……速くなってね?」
「あ、あのもういいんじゃありません?好い加減に凄い速くなって周りが線になって来てるような……あの本当にもういい加減にっ……!?」
「素敵素敵ああ素敵……うふふ、あはは、えへへ」
どんどんノリに乗っているのか遂には軽く、ゴルシとマックイーンが浮いているようにも見えてきた……いやこれは完全な見間違いだと信じたい……と思っているとロードが溜息混じりに言った。
「因みにマックイーンさん普通に元気だよ?スイーツ食べ過ぎて少しふっくらしてるけど」
「それじゃあ……」
「うん、多分痩せてるマックイーンさんに会えたって意味だと思う……あと、ゴルシって意味のない嘘は沢山言うからあんまり鵜呑みにしない方が良いよ?」
「お願いですからもう止まってくださいませぇぇぇぇぇ!!!??いや止まりなさい、メジロマックイーンが命じます止まりなさいいいいいいい!!!??」
「うおおおおおおっ!!!このまま遠心分離の要領でマックちゃんの脂肪を分離させてやるぜぇぇぇぇ!!面白くなってきたぜぇぇぇぇ!!!」
「一体どこがおもしろいんですのぉぉぉおおおおおお!!!!??」
「あっ因みに沖野さん、ゴルシはスピカだから」
「何で!?そこはランページのチームじゃねえの!?」
レースまで行こうとしたらゴルシが暴走した……。