貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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49話

「……」

「ほいおハナさん、珈琲淹れたけどいる?」

「貰うわ」

 

自分のデスクに向かいながらもノートパソコンを叩くリギルの東条 ハナ。チームメンバーの練習メニューを組んでいると沖野から珈琲の差し入れの申し出が来たので有難く受け取っておく。

 

「ブラックだっけ」

「いえ、砂糖とミルク頂戴。糖分が欲しいわ」

「あいよ」

 

淹れられて行く珈琲の香りを感じつつもキーを叩き続ける、先日のオークスは完全な敗北。自分のペースで進めばいい、それで勝てる、なんて言っておいて結局は独裁者の掌で踊らされていただけだったと思うと溜息しか出て来なくなってくる。そうしていると珈琲が差し出されたので礼を言いながら受け取る。

 

「ハァッ……今日は妙に美味しく感じるわね」

「あんまり根詰めると体に毒だぜおハナさん。オークスの事かい?」

「そんな所」

 

溜息混じりに答えつつも、メニューの上からオークスの動画を流す。それを沖野も後ろから見る。

 

「私も完全に騙された、公式レースで全く使ってこなかったぺース変更を此処で使って来るなんて完全な想定外だったわ」

「今見るとかなりハッキリしてるな……タイムにもかなりキッチリ現れてる」

 

序盤で大きく逃げつつもペースを落としてスタミナを温存、そして最後に他がペースを上げた所に合わせて自分も本気で走る。同じチームのイクノディクタスすら幻惑する見事なペース変化、お見事としか言いようがない。

 

「今回は彼女をマークしてスリップストリームを使うのが正解だった……なんて今更過ぎる結果論ね、嫌になるわ」

「だけどこれはランページが上手だったって事だぜ」

「……フローラがね、かなりキちゃってるのよ」

 

沖野なりに励ましてくれているのは分かるし有難い、だがそれ以上に辛い物もある。

 

「今度こそは絶対に勝つ、自分の走りで彼女を抜いて勝利を報告するって言ってたのが完全に、ね」

「打ちのめされちまってる感じか」

 

トゥインクルシリーズはそれこそ弱肉強食、強いウマ娘が勝って弱いウマ娘が負ける世界。それが競争を行う世界での全て、だからこそ今度は自分の強さを証明すると言わんばかりに励んでいたフローラの頑張りは一番よく知っているつもりでいる。だがそれでも届かなかった。

 

「んで今フローラは」

「寮で休ませてるわ。最後のスパートで無理したみたいで脚の負担が大きいみたいだから」

「そうか、大事無きゃいいが……」

「大丈夫よ病院で検査もしたし、だから大丈夫……あの子はまた走るわ、そしてラストの秋華賞、そこでランページに勝つわ。勝たせて見せる」

 

珈琲を一気に喉奥へと流し込むとメニュー作りに再び集中する彼女を見て、沖野も自分も負けてられないなと思いながらもスピカの部室へと向かって行くのであった。

 

 

「……なあ南ちゃん、ウマッターって何やれば良いん?」

「ウマッター、ですか?」

 

休養中のランページは部室にいる時に唐突に尋ねた。その手にはスマホがあり、そこにはスマホのアカウント登録画面があった。如何やらこれから始める所らしい。

 

「なんか後輩の子がウマッターとかウマスタに上げたいから一緒に写真お願いしますって言われるんだけどあれって結局何なの?つうかウマッターとウマスタの違いって何」

「そこからですか……」

 

今時の若い子なら分かると思っていたこの両者、というか南坂は普通に知っていると思っていたので思わず苦笑いをしてしまう。

 

「ウマッターは文字、ウマスタは写真で今を報告する感じです」

「成程……それで写真お願いされてたのか」

「そうだと思いますよ、と言ってもウマッターでも写真投稿は出来ますけどね」

「んだよそれ、どっちも同じじゃねえか」

 

呆れてしまうランページ、正直に言って自分もそう思う。どっちも同じじゃないのか、と思った事は多々ある。何というか彼女の精神構造は自分達に近い側にあるようで色々と共感出来たり察せたりするので有難い。

 

「まあ話題作りにはなると思ってよ、一応南ちゃんに言っちゃ悪い事とかあんのかなって聞いた」

「それは有難いですね。そう言った物で一番怖いのが炎上ですけどね」

「敢えて炎上煽ってる奴もいるけどな」

「それは勘弁して貰えると有難いです」

「南ちゃんに迷惑はかけないようにするよ」

 

そうしながらも一先ずウマッターの登録を済ませていくランページ、それを見つつも南坂はスケジュールを見つつ次のレースの事を考える。現在ティアラ二冠、次は間違いなく秋華賞―――ではなくその前哨戦のローズステークスを目指す。当然イクノもそれで行く予定。このままいけばランページはトリプルティアラとなる。思わずその事に興奮を覚えている自分が居る、まさかカノープスからそんな存在が出るなんて思いもしなかった。

 

「うし登録でけた。最初は冷やし中華始めました的なノリが良いんだよな南ちゃん」

「そうですね、最初はウマッター始めたから宜しくみたいな感じで良いと思いますよ」

「んじゃそれで」

 

キーボード打ちで文字を打って行く姿に思わず、フリック入力に慣れない自分を重ねて思わず笑みが零れた。やっぱり彼女は何も変わらない、メジロになろうとも中身は自分にトゥインクルシリーズを任せたいと言ってきたランページのままだ。

 

「こんなもんかな、南ちゃん一応チェック頼まぁ」

「拝見します」

 

 

メジロランページ @dictatorship

 

カノープス所属のメジロランページ。本日からウマッターデビュー。

チームの近況やらを時々呟いたりして行く予定。

これから宜しくね♪

 

 

「はい、大丈夫です」

「こんなんでいいのかね、ベター過ぎて逆に叩かれそうだぜな」

「変に奇を衒うよりも遥かにいいと思うますよ」

「成程、あっそうだんじゃ追加で……」

 

上からスマホを構えながら笑顔のピースサインを撮影、それを張り付けて投下する事にした。過激な写真でなければ炎上するような物でもないので当然南坂からの許可は下りる。そしてそのまま投下。今思うと若干ヘリオスの影響を受けている感じのポーズになっていた。

 

「もう直ぐダービーか……因みにダービーウマ娘とオークスウマ娘だとどっちが上なのかな?」

「う、う~ん……多分ですけどダービーだと思います」

「だよなぁ~……歴史も深いレースだし……」

 

オークスが終わったとなれば、次に行われる大きなレースと言えば日本ダービー。全てのウマ娘達の憧れと言っても過言ではない最高のG1レース、そこにランページの親友、いや家族のライアンが出場する。史実的に考えればダービーに勝利するのはアイネスフウジン、だがライアンだって皐月賞に勝利しているのでそんな予測は意味がない。本当に強いウマ娘が勝利する、それだけである。

 

「誰が取ると思う?」

「……皐月賞を取っているライアンさんが本命、ですがアイネスフウジンさんも今度こそはと炎を燃やしているでしょうから予測は簡単ではありませんね」

「俺も思うわ。しかもその二人同室だぜ、それなのにアイネスの奴ライアンの皐月賞おめでとうパーティ企画出来てるんだぜ、凄くね?」

 

本当に予測不能だ、だがそれでも自分はライアンを応援したい。約束をしたのもあるが……ライアンは本当に強いのだ、自分は彼女の強さを知っている。

 

「荒れるだろうなダービー」

 

その言葉に南坂も静かに頷いた。間もなく始まるダービー、一体どうなるのか……。

 

 

 

「……んっ?南ちゃん、投下してまだ数分しか経ってねぇのになんかすげぇコメントと♡マークついてんだけど……何これ」

「……これは、凄いですね……」




私もツイッターは登録はしてるけど全然手付かず。

というか、今回調べるまでツイッターとインスタグラムの違うがマジで分からなかった。
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