貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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492話

記念を制したのは無敗の三冠ウマ娘、ナリタブライアン。クラシック三冠ウマ娘による無敗且つクラシック期での有記念制覇という史上初の記録を打ち立てたブライアンに日本中が熱狂した。ゴール後の勝利の咆哮は誰もの心に残る結果となった事だろう……。

 

「それではこれよりナリタブライアンさんに対する勝利者インタビューを行いたいと思います!!」

 

一斉にたかれるフラッシュ、隣に立つ東条は流石に慣れている様子だがブライアンは渋い顔をしていた。無敗の三冠になった時にこれには慣れなければいけないと思っていたがあの時よりも酷く多いフラッシュに思わず目を細める。そんな様子に少しだけ笑う。

 

『素晴らしいレースでしたが、今のお気持ちは如何でしょうか!?』

「再びこの場に立てた事への喜びとブライアンの走りを評価したいですね」

『ブライアンさんは如何でしょうか!?』

 

そんな風にブライアンへと話が向けられるのだが、ブライアンは目を細めたままだった。応えたいのは山々なのだが、眩しすぎる。そんな場を諫めるように手が叩かれた。

 

「はいはい皆さん一旦落ち着きましょうか、皆さんが欲しいのはブライアンちゃんのカッコいい所でしょう?それなのに皆さんがそれを邪魔したら世話ないじゃないですか~」

 

解説者として席に座っていたフローラであった。こうなるだろうと思って援護の為にやって来た、その声によってフラッシュは一斉に静かになったのでブライアンは漸く一息を付きながらフローラに礼を言ってから答えた。

 

「そうだな……姉貴とローレル、ずっと走りたかった二人とこの中山の舞台で走れたことは心から誇らしい、誇らしいが……同時に私もまだまだである事が分かった。まだ上を目指せる」

 

その言葉に何という向上心なんだと記者たちが言葉を漏らす中で一人だけ、真っ直ぐに手を伸ばしていた記者がいた。乙名史である。フローラが彼女を指名すると乙名史は咳ばらいをしつつもまだまだという部分を追求した。

 

「その、まだまだという部分ですがスタート部分の出遅れについてでしょうか?ブライアンさんのスタートとしては出遅れたように感じましたが」

「ああそうだ。悔しい話だが私はシニアの空気感に順応しきれなかったらしい、舐めていたつもりはなかったが……矢張り本番と模擬レースでは明らかに違うな。今度はあのような走りは絶対にしないつもりでこれからも励むつもりだ」

 

誰も指摘する事をしなかったブライアンの出遅れ、フローラですら気づかなかったのにこの記者はそれに気づいていた。東条は分かっていたがそれは練習を付け続けていたからこそ、部外者である記者がそれに気づくのは驚いた。ランページが気に入っていると聞いているがそれも頷ける。

 

「矢張りそうでしたか!!今回の他のウマ娘とのスタートを比較してみましたがコンマ7秒程遅れておりました。これは普段のスタートから見ると1.2秒ほど遅れておりました、調整不足には見えませんでしたので矢張り初のシニア混合戦ゆえの緊張からだったんですね!!しかしそれも既に自覚して改善の余地も意欲みられるとは流石三冠ウマ娘!!気合の入り方が違いますね!!そしてそこからスタートを取り戻す為に先行策ではなく追い込みよりの差しに変更されたのですね!!?」

「……まさか其処までお見通しだったか、先輩が気に入った記者だけはあるな」

「恐縮です!!」

『(……こいつ本当に新人……?)』

「(なんて観察眼……彼女、トレーナーとしても大成出来る逸材じゃない……)」

 

周囲が乙名史を見る目が変わっていった。元々ランページのお気に入りというのもあったが、それ以上に色物記者という印象が強かったがまさかここまでの者だとは……そんな中で

 

「フフフッ流石ランページさんの審美眼……人を観る目もいいわぁ……」

 

何故か陶酔した顔になっているフローラ。ランページが関わるだけでこれなのだから困ったもんである。

 

「これからをお聞きしてもよろしいでしょうか!!?そして、これから来るであろうクラシッククラスで注目するウマ娘はどなたでしょうか!!?」

 

この次は新年への向けてのG1レース、ホープフルステークスが待ち構えている。そんなG1に向けてのコメントを求めた。ブライアンは少しだけ考えたのち、口を開いた。

 

「そうだな……私の後輩のフジキセキと言いたい所だが違うな。フジはまだまだ伸びる、未知数の部分が大きい。期待出来るウマ娘だ。私が期待しているウマ娘は―――マヤノトップガンだ」

 

その言葉に記者たちから声が上がった。矢張りそう来たか、ランページ率いるプレアデスが送り出したマヤノトップガン。元々のトレーナーであった坂原もプレアデスのサブトレーナーになって彼女は正しく絶好調。ホープフルステークスの出走も表明している為に大本命とされている。

 

「私は彼女と既に走っている、模擬レースではあるがな……そして同時に確信を持っている。次の有でやり合う事になるだろう……その時は、そうだなまた今日のような満たされるレースになるだろう」

 

その時のブライアンの表情は爽やかだった、そして酷く満たされている表情だった。期待感と充実感、様々な物で満たされているブライアンはその言葉を最後に記者たちの前から去っていった。無敗の三冠ウマ娘の次なるライバル、それはマヤノトップガン。彼女はローレルやヒシアマゾンと言った同期達を越えるライバルとなり得るのか、様々な憶測が飛び交った。

 

「貴方がそこまで言うなんて、あの子がそんなに気に入ったの?」

「気に入ったのではありませんよおハナさん……私はまた、今日のようなレースがしたい。唯それだけに尽きるだけです」

 

 

 

「成程!!凱旋門での勝利とはすなわちメジロランページさんへの勝利への渇望という精神的なブーストが肉体へも影響を与えたが故のなのですね!!」

「そうなのやっぱり貴方分かってるわね!!貴方になら私の海外戦線の裏話を全部暴露してあげるわ!!そしてどうして私が此処まで強くなれたかも全て、全てね!!!」

「有難う御座います!!」

 

残されたフローラは中継が終わった後に記者たちに質問をされたのだが……その内の一人がうっかりレジェンドレースで再戦するランページについてのコメントを求めてしまった。そして乙名史がそれについて行けてしまったのでヒートアップしたフローラと乙名史劇場は続くのであった。

 

そしてこの事は乙名史の手によって一冊の本に纏められる事になった、その題名は―――

 

『世界の大華、アグネスフローラが求めた暴君の背中』

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