貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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494話

訪れたホープフルステークス、1年を締めくくった後に訪れる新年に向けて次世代が大きく羽ばたき輝く為のG1レース。年内最後のG1である為か注目度が高い、ブライアンがマヤの名前を出した関係もあって一目マヤの走りを見ようと中山レース場に訪れたものは多い。

 

『さあ雪もちらほらと降り始めて来た中山レース場、寒風の舞う中で行われるのは新年への思い、次世代の煌を放つのは一体誰なのか、誰をも魅了し心を奪う希望の星が誕生する。ホープフルステークスが間もなく開幕致します!!今レースの圧倒的な1番人気、8枠12番のマヤノトップガン。有記念で無敗の4冠となったナリタブライアンが次の有で戦うと宣言したウマ娘、そしてあのメジロランページのプレアデスの一人。この注目度合は当然というべきでしょうか』

 

「やれやれ無駄に持ち上げてくれるねぇ……」

 

どこか冷めた瞳でターフを見続けている坂原、マヤの担当トレーナーとして今日まで完璧な準備をしてきたつもりだが……如何しても不安は拭いきれなかった。マヤにとって初のG1挑戦、自分にとっては何度目になるか分からない挑戦、未だG1勝利経験がない、だが―――

 

「買ってきたぞ~」

「あっ来た来た、俺のG1焼きある?売れ残ってた?」

「あった残り12個だから全部買ってきたわ」

 

売店へと行っていたランページが戻ってきた、世界の暴君が何をしているんだと言われるかもしれないが、彼女発案で誰かが買いに行こうとじゃんけんをした結果で負けたのだからしょうがない。ついでに言うなればこの中で一番金を持っているのも彼女だ。

 

「ほい、随分真剣に見てるな」

「どうも、そりゃね……」

 

自分の珈琲を受け取りながらもそう答える、どんと構えると決めたはずなのに不安が過る……そんな自分の笑うかのように近場バ道から次々とウマ娘が出てくる。そんな中―――ついにマヤがやって来た。黄色のチューブトップにモスグリーンのフライトジャケットを羽織り、白のホットパンツとオーバーニーソックスを纏ったマヤが来た。トップガンの名前通りのジャケットにランページは少しだけ笑った。このG1を初G1とするウマ娘も多い為、実質的に勝負服のファッションショーと呼ばれることもある。

 

「ほれ、マヤが来たぞ」

「あっトレーナーちゃん!!」

 

自分達の姿を見つけてマヤは嬉しそうに駆け寄ってきた、忙しげなく動く耳としっぽが彼女の愛らしさを加速させている。子供らしい姿に何処か背伸びした姿に笑いがこぼれた。

 

「ねぇねぇ如何これっトレーナーちゃん似合ってる!?」

「うんとってもね、これからエースを目指すルーキーとは思えない位には似合ってる」

「わ~いトレーナーちゃんに褒められた~!!」

 

マヤにとってはそれだけで嬉しくてやる気を漲らせる、そしてランページが何時ものやり取りをしようと思ったのだが坂原がそれを止めた。そしてマヤに言った。

 

「マヤ、素直に言うとね僕は不安でいっぱいだったんだよ。君がこのG1の舞台で羽ばたけるのかなって……ごめんそれは杞憂だった上に君を信じられてなかったんだろう、だけど今の君の姿を見て全てが誤りだと分かったよ。僕を、連れて行ってくれるかいG1トレーナーまで」

「うん任せてマヤがトレーナーちゃんを必ずG1トレーナーまで連れて行くから!!」

「それは最高だ、連れて行ってくれたら僕が君の勝負服にピッタリの勲章をプレゼントするよ」

「ホント!?嘘じゃないよねトレーナーちゃん!!?」

「嘘じゃないよ」

「ヤッタ~!!」

 

既に勝ったかのような喜び方に周囲の観客たちは思わずほっこりしていた。まだまだ遊び盛りで甘えん坊なウマ娘が兄にも父にも見えるトレーナーに心の底から甘えてる姿は本当に健康にいい。そんな前で坂原は言った。

 

「マヤ、僕が君に与える出走規定は唯一つ」

「出走規定は唯一つ―――走り切れ、マヤノトップガン出撃します!!」

 

駆け出していくマヤ、その背中は小柄な少女である彼女には思えぬ程に大きく見えていた。

 

「行っておいで、僕の事なんて気にせずに楽しんでおいでマヤ」

 

「なんか俺達のこと忘れられてね?」

「まあいいんじゃねぇの?新人は新人らしく先輩を立てるとしようや」

 

空気を読んで気配を殺していた二人は珈琲片手にG1焼きを楽しんでいた。

 

『ホープフルステークスは凄い展開になってきた!!先頭を駆け抜けますはマヤノトップガン、しかしこの走りは余りにも力強い!!』

 

先頭を駆け抜け続けるマヤ、逃げとも先行ともどちらにも見えるその走り。スタートから常にこのスピードを維持し続けている、逃げを打っていたウマ娘もいたが引きはがそうと加速しても一切加速する様子も、減速する様子も見せない一定のペースの走りに寒気を覚えていた。

 

「まさか、こんな走りに打って出るなんて……!!」

 

タヤスツヨシが思わず毒づいた。マヤノトップガンを最も警戒していたが故にどんな走りでも対応できるように敢えてスタートを遅らせた後方策を取ったのだが……後方策だからこそ見えるマヤの走りの本質があった。

 

「常に一定のペースで走り続けている、これはビワハヤヒデさん辺りも得意とする走りだね。もっと言えばマヤのそれはメジロマックイーンさんのそれだ」

「まさかクラシック上がり前のジュニアでこれが出来るとは思わなかったよなぁ……」

「改めて天才って恐ろしいって分かったよ俺」

 

マヤの戦術は一定のペースで走って体力を温存、しかしそのペースを早めに設定して周囲のスタミナをすり潰していくステイヤー強者の戦術。ライスやハヤヒデ、そしてマックイーンが得意としているそれを実戦投入してきた。マヤは小柄な身体は想像出来ない程にスタミナに優れている。

 

「そろそろ行っちゃおうかな~……!?」

 

そしてマヤは周囲の空気の流れから次にどんな戦術で来るかを感じ取っている、パイロットの父を持つが故によく空に連れて行って貰っていた経験が生きているのか理解ってしまう。そしてスタミナですり潰される他のウマ娘は焦るが、常にハイペースで走り続けるマヤは最後の脚を残している。此処で焦ったとしても追いつけないのだ、そして最後のコーナーを曲がっている最中にマヤは最後のアフターバーナーをふかした。

 

『さあマヤノトップガンが更に加速した!!これはもうセーフティリードか!!?7バ身から8バ身、これはもう確定っいやタヤスツヨシ、タヤスツヨシが凄い追い込み!!凄い末脚、一気に上がってきました!!坂を駆けあがるマヤノトップガンを必死の追走、スキージャンプ式の滑走路を飛び上がるエースを必死に追いかけます!!タヤスツヨシ、タヤスツヨシ後3バ身!!届くか、届くことが出来るのか!!?いやこれは流石に無理!!マヤノトップガンが一着で今ゴール!!二着にタヤスツヨシ、三着にナリタクイーン!!クラシックの道へと繋がり道へと一歩を踏み出した!!そしてタイムは―――2:00.4!!ライスシャワーが叩き出したタイムを更新しながらクラシック戦線へと突入!!!』

 

「やったぁ~トレーナーちゃんやったよ~!!!」

 

勝利をその手にしたマヤは心からの笑顔を浮かべながら坂原へと手を振った、その先に居る愛しのトレーナーは心からの笑みを浮かべていた。マヤにも分かった、あれはG1トレーナーになったからじゃなくて自分がG1を勝ったからこその笑顔なんだと。

 

「さて、マヤの勲章はどういうのにするんだい?」

「空軍の勲章を模した奴でも作ろうかなぁって思ってるよ、なんだっけ十字勲章?って奴を」

「それ、上から二番目に凄い勲章だけどいいのかなそれで。ブロンズやらシルバースターって勲章もあるんだからG1勲章って事にすればいいんじゃね?」

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