大熱戦のURAファイナルズ。短距離マイルが終了、そしていよいよ王道路線とされる中距離路線が始まろうとしている。矢張りというべきか全国的に見ても中距離が最も人気というべきか、予選の出走希望者数は圧倒的に多かった。だからこそ王道の路線とも言われているのだ。
「やっぱり凄い賑わいですね」
「王道距離だからねぇ……今年から中距離は二つの距離に分けられるのもあるよね」
トレーナー席で観戦している上水流と坂原。今年は中央からも実力のあるウマ娘がファイナルズに名乗りを上げている、それは初年度に地方や一般校に蹂躙されたからなのか、それともランページが中央が蹂躙されても気にしない態度が気になったのか理由は分からないが重賞ウマ娘も予選に名乗りを上げて本選まで上がっている。
「今度は来年あたりから長距離が増えるんじゃないかな?」
「ダートもあり得るかもしれませんよ?今はダートレースは一つだけですけど、距離を考えて増やすかも。何せ我らがチームトレーナーがダートでも暴れてましたから」
「確かにそっちの方が早そうだよねぇ」
のんきに話している二人を中央の一部のトレーナーは冷めた目で見ていた、何故地方や一般にあそこまでの煮え湯を飲まされて何も思わないのかを理解出来ないから。と言っても二人からすれば、全体的な活性化の事を考えれば好ましい事ではあるし、重賞ウマ娘出てないから中央負けるのは当然だし何で重賞勝ちがこっち出るんだよトゥインクルシリーズ集中しろや、というランページの意見は当然すぎるものだと思っている。
「まずは2000か……それで上水流君は誰が本命かな?」
「う~ん……前回大会でも優秀な結果を出してるオーロジパングも良いと思いますね、かなりいい勝負してたし、前回覇者のシダーブレードが出てれば彼女推してましたけど」
改めてみれば本当に重賞ウマ娘が出ている。シルクグレイッシュ、ニフティダンサー、ホクセイアンバー……今年の重賞にも勝利しているウマ娘もいる。本気でトゥインクルシリーズに集中した方が良いのでは……という疑問が頭を過る中である名前を見つけた。
「坂原さん、この名前知ってます?」
「んっああ知ってるけど……いや知ってるけど、あれ?」
「やっぱり、そんな感じします?」
二人が思わず首を傾げた名前があった。如何してファイナルズに参加しているんだ?という意味合いではないのだ、中央トレセンに在籍している事は確かでおそらく高等部の生徒……何故か印象が薄い、存在感がない訳ではなく彼女自身の姿や話を全く聞かないから。
「バニシングポイント……一体どんな走りをするんだ」
バニシングポイント、周囲からはバニィと呼ばれるウマ娘。何処か儚げで不思議なウマ娘。ランページがいたらきっとネオユニっぽいというだろう。そんな彼女はゲート前でぼんやりと空を見上げていた。そんな彼女を無視するかの如く、一人のウマ娘が何処かの覇王を思わせるような溌剌とした声と態度で声を上げる。
「ああっ陛下!!愛おしくも神々しいランページ陛下!!こうしてまたお会いする事が出来て光栄だ!!あの時はボクの愛を届けられなかったが此度は違う!!この日の為にボクはトレーニングを重ねてきた!!今度こそレースを勝利し貴女に愛を誓おう、誓ってみせようじゃないか!!!」
そんな風にはしゃいでいるジパング、そんな裏で一つの事件が起きていた。
「どいてくださいあの小娘にわからせてやる必要があるんです!!ランページさんへの愛で負ける訳には絶対に行かないんです!!」
どこぞの変態が騒いでいた、主に愛云々で。
「フゥーッ!!でも恥ずかしる事もなく誰かへの愛を叫べる、それって超クール!!」
「ハッハハハハッ分かってくれるのかい君!!って如何して離れるんだい!?ボクは唯君の素晴らしさを好意に値すると言いたかっただけなのに!?どうだいこの後一緒に食事でもって凄い勢いで離れるねぇい君!?そんな所も愛らしいけど!!」
「その辺りにしてあげなさい、きっと人見知りなのよ。まあそれはそれでクール云々よく言えたと思うけど」
「おおっメテオじゃないか!!以前に増してまたお美しく……そこにいるのはリッシュモンじゃないか!!ああっまたもやこうして皆と会えることはまるで奇跡……」
「お久しぶり、おべっかが上手くて何よりな事で」
「本当に相変わらず……ヒッちゃん愛でて御上げなさい」
「やっぱりかぁいい♪」
「おうふぅっボクが愛でられる側とは!?だが、これもまたいいっ……」
中央から参戦ウマ娘達はこの様子をあり得ないと言いたげ且つ何処か信じられないと言いたげな目で見た。予選でも感じた事だが、改めて自分達が出走してきたトゥインクルシリーズとは明らかに毛色が違うという事を強く感じた。だが、そんな中で唯一、バニシングポイントだけはそれを面白そうな目で見ていた。そして不意に空を見え上げて―――ニッコリと笑った。
「なるほど、やっぱりこの世界の結節点は貴女なんだね―――ランページ」
「おやっ!?そこの貴方、今陛下の名前を呼ばなかったかい!?陛下の話ならば是非混ぜて欲しいね、そして宜しければ連絡先の交換を!!!」
「好い加減に静かにしないと貴方叩き出されるんじゃないかしら……?」
そんな賑やかな光景を前にしてもバニシングポイントの笑みは崩れず、寧ろ微笑ましさが増しているようにも感じられた。彼女は中央のウマ娘、だが彼女の事は中央勢でもよくは知らない。同じクラスの人は彼女をクラスで見たことがほとんど無く、見たときもバニィがいつの間にかいていつの間にかいなくなっているという。摩訶不思議という言葉がよく似合うウマ娘だ。
だがしかし、彼女が必ず現れる時があった。現役中ランページのレースが行われていた時、その中継がカフェテリアで映されていた時。その時ばかりは全く姿を見せない彼女が必ず壁掛けテレビが一番よく見える席を陣取ってみていた。あれほど熱心に見るならレース場で見ればいいのに……と勧めた時もあった筈だが
『ううんいいの、此処でいい』
と言って聞かなかった。どんな走りをするのか不明瞭なウマ娘、だがこの舞台に上がっている以上その実力は保証されているも同然。中央のトレーナーはこれを機に実力をチェックしてスカウトも視野に入れる事も考えているものもいる。
「私の走り―――見せてあげるからねランページ」
幽々やよい様よりバニシングポイント、天羽々矢様よりキタサンルビーを頂きました。有難う御座います!!今回はちょっと分けてみました、というか筆が乗っちゃった……なんだろうなぁ……脳内のフローラが騒いだっつうか、何というか……ま、まあ次回をお楽しみに!!