貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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05話

「……いぐっ……」

 

夜中、痛みを感じて目を覚ます。時間は深夜3時ごろ、また感じてしまった痛みに顔を顰める。

 

「どうなってやがんだ……こりゃ……」

 

メジロ家の家でお世話になり始めて5日が経った頃の事だった、漸く広すぎる部屋にも少しずつ慣れ始めてテーブルマナーも覚え始めて来た頃にそれは突然にやってきた。鋭い膝の痛み、脚を伸ばそうとするだけで激しい痛みが走り続ける。

 

「くっそ……なんかやったっけなぁ……」

 

膝を思わず摩る、だが痛めたような記憶はないし激しい運動をした覚えもない。寧ろ安静にし続けていた記憶しかない、メジロ家お抱えのシェフや理学療法士、パティシエやらに栄養管理をされて栄養失調だった部分を取り戻す為の事が行われた位しか記憶がない。

 

「取り敢えず、無理やりにでも寝るしかない……寝よう、寝よう……」

 

痛みを我慢しつつ、無理矢理にでも眠りに入る。軋むような痛みが関節に、それらを無視して眠る。そして……

 

「ど、どうしたのラン……なんか凄い眠そうだけど……」

「全然眠れてねぇんだ……」

 

朝食の時間、ライアンと共に取る朝食を取っているのだが……その時にはハッキリと分かる程の隈が出来てしまっていた。

 

「寝具が御身体に合いませんでしたか?」

「いえ、そういう事じゃないと思うんです……なんていうか……その、脚が痛くて」

「脚!?」

 

それを聞いたライアンは思わず立ち上がってしまった。驚いているのは執事も同じなのか分かりやすい程に顔色を変えている、ウマ娘にとっての脚は文字通りの命と同義、そしてその足はガラスの脚と比喩される事もあるのだ。居ても立っても居られずにランページの傍に駆け寄りながらも脚を見る。

 

「さ、触るよ大丈夫!?」

「ああいや、今は全然……」

「では、何時御痛みに……?」

「えっと……夜寝てる時に、痛くて起きちゃうし眠れなくて……」

「爺や直ぐに主治医に!!」

「畏まりました」

「えっ!?ああいやそんな大げさな!!?」

 

自分の意見なんて受け入れられず、あれよあれよと主治医の病院へと即座に担ぎ込まれて脚の診察が開始されることになった。

 

「なんで直ぐに言わなかったの!!?ウマ娘にとって脚っていうのは本当に大切なんだよ!!?」

「いやだって、痛めた覚えも無かったから……それにこんなにしてくれるのにこれ以上お世話になる訳にも……」

「バカ言わないでよ!!」

 

ライアンは診察室であるのに関わらず大声でランページを叱咤した、聞いた事も無いような大声と言葉の強さにランページも驚いてしまう。

 

「言ったでしょ!?今度は私がランを助ける番だって、どんな事だって迷惑にはならないの!!寧ろ何も言わないでいる事こそ迷惑なの!!友達として、もう貴方が傷つくのを見過ごす訳には行かないの!!」

「ラ、ライアン落ち着けって……」

 

ライアンにとって、自分の親友の自殺の光景というのは深く心に刻まれてしまっている。あの時、自分が彼女の事を気に掛けていたら、あの時、あの時、あの時、と幾度も無く考えてしまったが故にトラウマになってしまっている。だからもう見逃がしたくはないのだ。ランページもそれは何となく理解は出来たが流石にこれは行き過ぎているのは……と思っている時、主治医が戻って来た。

 

「お待たせしました。ライアンお嬢様、もう少し声を小さくして頂かなければ……」

「ご、ごめん。でもだってランが!!」

「それは承知しております、ですのでこれよりランページ様の脚についての診断結果をお話させて頂きます」

 

そう言いながらも主治医はレントゲン写真を二人にも見えるようにしながらも、ランの脚の状態について話し始める。

 

「率直に言いますと、ランページ様の身体に異常は御座いませんでした。勿論、骨にも問題はありません」

「えっ問題はないって……それじゃあ何でランは脚が痛いって!!?」

「落ち着いて下さい」

 

取り敢えず慌てるライアンを落ち着かせつつも、ランページはその先を聞きたかった。如何して脚が痛むのか、それなのに身体に異常はないのか……恐らくその理由がこれから語られるのだろうから……喉を鳴らしつつも自分の身体が何が起こっているのかを待っていると、それが語られる―――

 

「成長痛ですね」

「「……へっ?」」

 

余りにも意外過ぎる言葉に間抜けな声が一緒に出てしまった。

 

「せ、成長……痛?」

「成長痛って子供とかにある骨が軋んだり痛んだりする……あれ?」

「ええそうです。ウマ娘としての本格化が始まったのだと思いますよ、おめでとうございます」

 

本格化。思春期のある段階で起こる身体の急成長の事を指す、言うなればウマ娘にとっての才能の開花の始まりを示す。此処から能力はピークへと至り、緩やかに下降していく。無論、ライアンも本格化は迎えておりこれからが正に伸び盛り……だがまさかランページがそれに至っていなかったというのは極めて驚きだった。

 

「えっだってもうランって身長って……160超えてるよね……?それなのに成長痛?」

「ランページ様の場合、恐らくですが栄養失調の影響もあって十分な本格化を行えなかったのでしょう。此処からが本当の本格化でしょう」

「つ、つまりこっから俺は伸びるって事……ですか?」

「はい。身長も既に伸び始めておりますね、以前入院された時は162㎝でしたが、先程計らせて頂いた時には167㎝でしたよ」

「「5センチも伸びてるぅ!?」」

 

それ程までに急激な本格化、故に骨や関節に痛みを感じてしまった。しかもランページはまだまだ伸びて行く、医者としてはどれほどまで伸びるか楽しみと言える。それを受けてランページは思わず呆然とした。

 

「えっまだ伸びるの……俺」

「で、でも良かったね怪我とかじゃなくて!!これならいけるね!!」

「行けるって何が?」

「トレセン学園への編入!!」

「―――えぇっ!?俺がトレセンに!!?」

 

余りにも寝耳に水すぎる事に驚愕する、だがこれは前々からアサマが進めていた事らしい。

 

「ランはメジロ家に居続ける事を心苦しく思うだろうから、それならいっその事寮のあるトレセン学園に入ればいいって!!」

「いやいやいやちょっと待って!?学費とかその辺りは!?」

「その辺りはメジロ家で持って上げるって、ランへの投資としてだって♪」

「何か俺……凄い期待されちゃってる訳なの……?」

 

 

 

「期待していますよランページさん……貴方なら、きっとライアンと一緒に切磋琢磨するでしょう。そしてそれはメジロ家にとっても大きな意味になる事でしょう……」

 

 

 

「一先ず、本格化に当たっての急激な成長痛の為の薬を処方しておきますので其方を確りと飲んでくださいね」

「アッハイ……ライアン、編入にあたりってなんかやるのかな……?」

「走るとは思うよ?」

「……マジかよ」

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