URAファイナルズも残す所2部門、長距離レースとダートを残すのみとなった。この2部門に対するランページとURAの意見は一致しており、次に増やすとするならば長距離とダートなのは明白だという認識が強い。中距離を2000と2400に分けておきながら長距離はそのまま2500のまま、ダートをたった1レースというのも昨今のダート人気の加熱ぶりから無視する事は出来ない。
「英国の小娘も文句言ってきたよ、長距離の良さを何もわかっていないとな。女王陛下も苦労するお転婆ぶりだが……まだまだ若い芽過ぎるな、何も怖くないと思えている内は小娘よ」
東京レース場のVIP席、そこに腰を落ち着けながらもレースを観戦するウラヌス。眼下で繰り広げられる闘争の競争に心が躍る、それと同時にこのレースの運営などを勉強という名目で日本に来た身でありながらも自分にあそこまで強気に言葉を連ねた英国のウマ娘の事を思い出す。
『小娘、そうしたければ自分の国でやる事だな。無粋なやり方と礼儀も知らぬのが英国式か。生憎膝を折って話を聞き入れる事は有り得ない―――私の膝を折らせたいのならばせめて暴君を越えてみせろ』
「我ながら意地が悪くなったものよなぁ……クククッこれもお前さんの影響かな?」
「其処で俺のせいにするのかい、それはそれで意地が悪いぜなウーちゃん」
そこにランページがいた、ただその身が纏う覇気は別格だった。文字通りの伝説に刻まれた力を取り戻し現在に加算された彼女の力は何処まで高まってしまったのだろうか。
「あいつはいい女だとは思うぜ、国を発展させたり何かを成そうとするには最高の人材の一人……色々と擁護できないレベルのじゃじゃウマ娘なのも事実だけどな」
「貴方がそれを言うのかしら?」
「俺は場合によっては礼節も態度も確りする程度の分別があるからセーフなんです~少なくとも俺は天皇陛下と懇意だからってそれを平然と利用する事なんてしません~炎上怖いから」
「恐れない貴方が言うの?」
「それは俺自身の事だから良いの、他人を巻き込むのが嫌なの」
「面倒な子」
「だがそれがいい、でしょ?」
ああそうだ。良くも悪くも優柔不断で臆病、積極性に欠ける国民性を持つ自分らにはこれが欲しいのだ。それが彼女のカリスマ性にも繋がっているのかもしれない。
「サトちゃん今日はよろしく~!!」
「シヴちゃんこちらこそ」
間もなく長距離レースがまた始まる、ファイナルズの舞台。長距離レースは人気が低いと言われながらもそれでも評価する人は当然のように多い。それは日本のG1レースの人気も関係しているだろう。そんな舞台に前年度、初年度覇者として再出場したサトノルシファー。
「次のサトノ家のウマ娘の為に、次の次のサトノ家の為に、次の次の次の次の……私の走りを繋げてみせる」
様々な思いが交錯しながらも長距離レースが幕を上がる。それを真剣な眼差しを見つめるのはもう一人、イギリスからファイナルズのノウハウ吸収の為でもあるがそれ以上日本の長距離でどんな走りが見れるのかという興味があった。
『さあURAファイナルズ、芝長距離部門2500。今―――スタートしました!!綺麗なスタートを全員が切りました、さあ一塊になって行きますがおっと抜け出していくウマ娘が行くぞ!!この長距離の舞台で果敢にも逃げを打つウマ娘は―――地方からやって来たイマミヤアロー!!大阪からやって来た一本の弓矢が鏑矢となって長距離の始まりを告げました!!』
「こんのレース勝つのはあたしやぁ!!」
勢いよく飛び出していくのは良いがそんなペースで持つのか、まるでランページを思い起こさせるかのような飛びだし方に絶対に落ちる筈だと思うのに……その姿に活躍し続ける逃げウマ娘達の影が可能性のように重なって心を乱し、それを受けて前へと出るウマ娘もいた。
『さあイマミヤアローを追いかけていくのは中央の精鋭たちだ、ハンマーラッシュ、グレイゴースト、ダイオーロードと続いて行きます。そこから離れた所にネージュフルール、スティールヘイズ、タリスマン、海外からの参戦ウマ娘達が続いて行きます』
「やはりこの舞台は気が締まるな、レジェンドレースには間に合わなかったが、このスティールには成すべきことがある」
再び参戦しているウマ娘の中にいるスティールヘイズ、ランページへの感謝とリベンジを誓って再びこの舞台に上がった。本当は伝説の舞台に上がる予定だったが……問題児の対応に嫌気が差してチームを脱退したお陰で間に合わなくなったが、大切な戦友と共に歩める事を考えれば代償としては安いものだと思う。
「フルル、ガルーダ、君たちは如何だ?この舞台で何を成す?」
「スティール凄いカッコよく走るんだね~!!凄い凄~い!!でもフルルは負けないよ~!!」
「さあ、だが存分に楽しませて貰おうと思ってるよ」
「そうだな、愚問だったな済まない―――さあ楽しもう!!」
同じく海外勢の二人からの言葉に少しだけ虚を突かれたが直ぐに笑った、重い役目なんて放り投げて高く飛べる筈なのに長い間背負っていた重しは幻肢痛となってまだ自分を蝕むのか。それを振り払うためには―――心の奥底から走るしかないだろう。
『さあその後ろにはメジロツァーリ、サンプリエーラが居ります』
『ロシアからのウマ娘らしいですけど名前でビックリしちゃいましたよね、メジロ家とは関係ないそうですけど何処か面影は感じてしまいますね』
『ロシアの皇帝とも呼ばれているそうですね、その走りが見られるか楽しみです。さあそして初年度王者たるサトノルシファーは良い位置に付いています。ファイナルズの優勝からウマ娘の支援を充実させながらもサトノ家からG1ウマ娘を出す事が夢だと語っておりました、未来のG1ウマ娘を元気づけられる走りに期待です』
ルシファーは駆け抜けながらも思考を止めない、全てのウマ娘の位置を頭に叩き込みながらも五感をフル活用して周囲から情報を得て、脳内のそれを更新し続けていく。後方の追い込み勢にも注意を払う。
『アウルムアーラ、バレットトレイン、マッシヴロード。後方から何時仕掛けるのでしょうか、しかし先頭のイマミヤアローはまだまだペースを落とさない、このまま2500を単独で逃げきってみせるつもりなのでしょうか!?』
「こんのレース、必ずアタシが貰う!!そして賞金はアタイのもんだぁぁ!!」
威勢は良いが余りにも飛ばし過ぎている、中山の2500とも違う府中の2500。徐々にイマミヤアローのペースは落ち始めているが同時にそれを追いかけていた3人の勢いも落ち始めていた。良くも悪くもムラがあるアローの走り、奇しくも幻惑逃げのように機能してスタミナを削っていた。
「さあっ天使とダンスだ!!」
「レース経験はあまりありませんが…あの娘の為にも負けるわけにはいきません!!浄化の焔よ、我が身を焦がし力を御貸し下さい!!」
『此処でタリスマンが加速し始めた!!サンプリエーラも此処で上がっている!!』
先へと抜け出していくタリスマンに、背後から一気に伸びて争いに加わってくるサンプリエーラ、その二人の走りの素晴らしさにスティールは笑いながら彼女の走りを褒めた、だが負けてはいられないと瞳は輝く。
「まだだ……より高く飛ぶのは、私だ…っ!!」
『スティールヘイズが一気に伸びてきたぁ!!さあ最終コーナーへと入りました、先頭は今変わってスティールヘイズ!!イマミヤアローはもう厳しいか!?下がっていく下がっていく!!そこを抜き返して一気に攻勢が切り替わるぅ!!』
「さぁ始めるよ!!これから始まるのは雪華の妖精さん達の楽しい楽しい舞踏会!!」
『ネージュフルールが差し返して今3番手!!さあ最終直線へと一番早く入ったのはスティールヘイズだ!!スティールヘイズ、昨年度のリベンジは成功するのか!?大外からはバレットレイン、最ウチからアウルムアーラが一気に上がってきて6番手!!大混戦だ、後方から一気に上がり、前方では更に突き放しにかかるが一塊になっているぅ!!メジロツァーリがスティールヘイズを捉えるのか!?後1バ身、さあどうなるスティールヘイズは苦しいか!!?』
余りにも激しい競り合いが集団の中で行われていく、ぶつかるかぶつからないかのギリギリの距離だけを残してプレッシャーと覇気のぶつけ合い。例えベテランでもこれの中でブレずに走るのは難しい、そんな中で揉まれ続けても尚も前へと走るスティールヘイズが僅かにブレた時―――その隣に並んだウマ娘がいた。
「さあ、ここからは、
『サ、サトノルシファー!!!サトノルシファーが一気に先頭に立った!!先頭はスティールヘイズとサトノルシファー!!前年度覇者がバ群の中にあった針の穴を通して先頭に立ったぁ!!さあそのままサトノルシファーが今っスティールヘイズを抜いたぁ!!スティールヘイズ懸命に足を伸ばす!!だがならばと自らも脚を伸ばす明けの明星!!これがサトノの新たな輝きとなる星だ!!ルシファーが今っゴールイン!!!サトノルシファーURAファイナルズ長距離を2連覇ぁ!!二着はスティールヘイズ、僅か半バ身差でこれも惜しかった!!三着にはネージュフルール、四着にメジロツァーリ、五着にタリスマン!!』
「届かな、かったか……戦友に合わせる顔がないな……」
僅かに敗北したスティールヘイズは静かに顔を伏せていた、だがそれでも直ぐに顔を上げてルシファーへと祝福の拍手を送る。勝者は祝福される物だ、相応しい物こそが真の勝者となるのだ。拍手を送っているとルシファーはにこやかに後ろを指差した。そこには
「カッコよかったよラスティ」
「ああ、素晴らしい走りだった。胸を張れラスティ。今夜はお前の為に腕を振るとの事だ」
「戦友……ああ、私にとっては何よりの……名誉だ」
涙で溢れそうになった彼女の背中を撫でながらもルシファーは胸を張っていた。再びこの場に立てたのだから。そして拳を空へと突き立てた。
「この
長距離部門チャンピオン サトノルシファー
マイスイートザナディウム様よりネージュフルール、サンプリエーラ、衣玖永江様よりタリズマン、-persona-様よりメジロツァーリを頂きました。有難う御座いました!!