響き渡るファンファーレ、始まりを告げる音色がレース場を満たしていく。
『ファンファーレが響き渡り間もなくゲートインです。この東京レース場に集った20万人を超える皆様、そして日本各地のレース場、東京ドーム、札幌ドーム、エスコンフィールドなどなど……日本中で行われているライブビューイング、全国各地のお茶の間や集会場、様々な場でこの中継をご覧なっております皆様、遂に始まります第二回レジェンドレース』
『三冠経験者7名、その他を取り囲むのはG1及び重賞勝利経験者、レジェンドレースの予選を勝ち上がった優駿が集ったこのレース、一体どうなってしまうんでしょうか……想像もつきません』
文字通りの伝説が集いに集ったこの舞台、一体どんな走りになってどんな展開になるのか。最早常識だけで測る事は難しい。
『ツインターボ、シルバーストーン、メジロランページが大逃げをするのでしょうか』
誰よりも先頭を駆け抜けたウマ娘達が行くのか。
『アグネスフローラ、イクノディクタスは先行でランページをマークという形でしょうか』
それらとの戦い続けた者達が行くのか。
『皇帝、帝王、シンボリルドルフとトウカイテイオーは如何するのか』
王の座に坐する者達は如何行くのか。
『そして海外からの参戦、アームドリンクスは如何出るのか。ロックスミスはどうする、シルヴァリオは、そしてサンデーサイレンスは!?』
『今、大外のメジロランページがゲートに入りました。ビゼンニシキは、ソウルディケイダーは、ブラッククラウドは、いや全てのウマ娘達がどう動くのか全く以て想定不能のこの状況、さあどうなる第二回レジェンドレース中距離部門2400!!』
開始前の静寂。誰もが自然と言葉を慎んだ、輪を乱そうとする者は現れなかった。世界中からこのレース場へと集った観客たちの心は一つになっていた。さあ見せてくれ、貴方達の走りを、どんな走りをするのか、最高のレースを見せてくれと。そしてその時は訪れ―――
『スタートしました!!!』
幕が落とされた。
『さあ始まりましたレジェンドレース2400!!まずは綺麗な立ち上がり全員素晴らしいスタートですが矢張り飛び出したのはお馴染みの大逃げドッカンターボのツインターボ!!そしてシルバーストーン!!』
矢張り来た、再度の対戦でもあるこの二人の大逃げにも様々な期待が寄せられていた。だが―――一瞬の風が2人を煽る、前へと目を向ければ
「何時の間に!?」
「いや、大外だったよね!?」
『そしてこのウマ娘は忘れられない我らが独裁暴君メジロランページが今先頭に立った、立ちましたが最ウチの二人をあっという間に超えての先頭!!世界のG1を制している二人を抑えつけての先頭です!!』
「あれって、私のっ……!!」
ランページのスタートを見たひとりのウマ娘がそう呟いた、それはスズカの加速の仕方。一歩踏み出すだけでギアチェンジを完全に終わらせて加速の体勢を完全に終わらせるスタートダッシュ。
『先頭はメジロランページ、矢張りというべきか大逃げで負ける訳にはいかない、覇気というべきでしょうか、舐めるなと言いたげな迫力があります!!二番手にツインターボ、三番手にシルバーストーン!!そこから4バ身程離れて抜け出してきたのは地方の将軍ブラッククラウド、ソウルディケイダー、ビゼンニシキが続きます!!』
『大逃げが3人に逃げが3人、三分の一が逃げ戦法ですが差が違いますねこれ!!』
大逃げの体勢を大逃げのウマ娘のそれを上回りながら作ったランページ、だがその走りにはまだ余裕が見えている。このレースに出ている者全員はそれを見抜いている。
「相変わらず、貴方と走ると気合が違いますね」
「ああっ余裕ぶってるランページさんも素敵だぁ……心が躍る……」
「やっぱりたぁのしぃ~―――でもやっぱり凄いプレッシャーだね」
『イクノディクタスとアグネスフローラが先行集団の先頭、ランページの大逃げを予期して前に出ておこうという考えでしょうか、アームドリンクスもピッタリとそれに続いて行きます、サンデーサイレンスも続きますがペースが速い!!いやこのストライドでこのピッチは異常です!!』
「ハンッやっぱテメェはターフに立ってる方が似合ってるぞ、ランページィ!!」
「またあれを見る事になるとはね、そしてまた戦える……フフッランページには感謝しなくちゃ。そうは思わなくて、ねぇっルドルフ」
「同感だっ……上げるかっ!!」
牙を剥き始めたサンデーサイレンス、その走りは一言で言えば天衣無縫……いやそう呼ぶには酷く荒々しい。本能に任せっきりの疾走とでも言うべきなのだろうか、唯々走るだけ。だがその走りには幾重にも重ねた研鑽によって刻まれた技術がある。
「それらを無意識レベルで行使可能って訳かぁ……そりゃ私達よりも優れてる訳だよね」
シービーは思わず呆れるような声で言った。プロは考えない、その言葉がサンデーの走りの全てを表している。思考はする、だがそれはレースには関与せずに全てが無意識化で完全に完結させられる走法、それがセクレタリアトと彼のトレーナーが築き上げたサンデーサイレンスというウマ娘。
『上がっていく上がっていく!!ツインターボ、シルバーストーンを捉えて既に超えたぁ!?凄まじいストライド、凄まじいピッチ!!これが運命に噛みついたウマ娘サンデーサイレンスなのかぁ!?』
「げぇっ速っ!!?えっサンデーってそんなに凄いウマ娘だったの!?」
「あぁぁんっ!?ターボテメェ今まで俺の事を舐めてたんだなぁ!?レース後覚えとけぇ!!ついでに隣の奴も面倒見てやらぁ!!」
「ターボなんか悪い事言ったぁ!?」
「言ってるわよというかなんで私まで巻き込まれてるのよぉ!?こんなの絶対可笑しいわ!!」
寸劇が行われながらも必死に逃げる二人、それを追いかける構図になっているがその走りをケイは確りと目で捉えた。その一挙手一投足、息遣い、見る限りで取れるデータの全てを取得した。
「―――行こうっ」
『ソウルディケイダーが上がっていく!!で、ですがフォームが変わっております!!まるでサンデーサイレンスのような走りを覚えたかのような!!』
『ソウルディケイダー、ソウルディケイダー……ああっ思い出しました!!昔に中央トレセンで噂になってたっていう相手の走りの全てを見るだけで覚えられるってウマ娘、確かその名前がソウルディケイダー!!!』
『で、ではサンデーサイレンスの走りを覚えたと!!?』
『いやそうとしか説明付きませんよ!?これは彼女の有利が加速して―――』
「成る程、そういう動きもあるのか。面白いな」
『い、いや此処でロックスミスも上がっていくっ!!彼女のフォームも変わっているように思えます!!ロックスミスが上がっていく!!』
「全く……世界は広い上に化け物揃いか」
「なんだ怖いのかい将軍」
「冗談だろう」
「これは、私達は思った以上に有利だったかもしれないなぁ……仕掛け所さえ間違えなければの話だけど」
そう呟いたシービーの言葉にシダー、シルヴァリオ、が思わずそちらを見てしまった。レース展開は大逃げによってハイペースのそれになっている。追い込みの自分達は相当な末脚を発揮しなければならない。一番辛いと言ってもいい場所なのだがなぜそう言えるのか。
「やっぱりこれってあの人のあれだよなぁ……これが海外の洗礼って奴かなぁ!?」
「結構平気そうな顔しててよく言うよっ……!!」
ライアンは少しだけ辛そうな顔をしながらも駆け抜ける、問題はないが身体には違和感がある。だがそれは拭えない程ではない、そう思っているのはテイオーも同じだ。気づくべきだったかもしれない……いや気づいた所でもう遅かった。サンデーが仕掛けた時から。
「さあテメェが望んだ伝説の舞台を世界レベルにまで上げてやったんだ、感謝しやがれ……来てみろ、越えてみろ、この俺をな!!」
サンデーが纏う覇気は最早殺意と変わらない、それはサンデーのレース論から来るものでもある。彼女にとってのレースは戦場と同義、勝った者は負けた者の全てを引き継いで走る。走りの果てにサンデーの身体にはこれまで下してきたウマ娘のマイナスの念が染みついた、それが殺意と結びついて周囲に散らされる―――追い込みと大逃げのメンバー以外にその影響が出始めている。
「さあランページ、テメェもその一部にしてやる、感謝しろ……!!」
「やってみろ、殺意程度で俺を殺せると思うな」
サンデーサイレンス固有スキル効果。
自らの周囲にいるウマ娘に対してデバフを齎す。速度、加速、スタミナ、賢さなどが低下する。
これまで踏み越えたウマ娘の数によって効果は増強される。