貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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活動報告に新しいお知らせを掲載いたしました。

ご興味があるから下記のURLからどうぞ。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=314067&uid=11127


507話

レジェンドレース2400を見つめるウマ娘と一人のトレーナー。彼女にとってこのレースは見なければいけない物だった、そうでなければ自分は前に進む事が出来ないと思っていた。だからこのレースを見ている、しかし……想像以上に日本は祖国と異なっていた。

 

「いけ~サンデー!!そのままランページを越えろぉ!!」

「サンデー最高~!!そのままの気迫で相手を潰しちまえ~!!」

 

VIP席でも見られたはずなのにスタンドの一角に陣取るようにしながらもレースを見る、だがそれ以上にスタンドの熱気や歓声に驚きを隠せずにいた。イージーゴア、アメリカでのURAファイナルズとレジェンドレース設立に向けて動いているウマ娘は実際どのように運営されているかのを自分の目で確かめる為にこの場にいた。だがそれ以上に異様な熱気と溢れんばかりの大歓声が彼女を揺るがす。

 

「どう映る、君の眼には」

「幸せ、そうです……とても、とても楽しそうに走ってらっしゃいます」

 

イージーゴアの隣には彼女のトレーナーが居た。チャンピオンズカップの一件で彼女の家から直接解雇の通達が言い渡されたが、イージーゴアがそうなさるなら私は家を出ると宣言して守っている。そんな関係性の二人はアメリカでは見られなかったサンデーの顔を見ていた。

 

「周囲を憎悪し、他者に憤怒を抱き、自ら以外の全てを殺すと言わんばかりの雰囲気に満ちていた彼女があのような顔をする……理由は分かるだろう?」

「……はい。日本はとても彼女を好意的に受け入れているのですね」

 

『上がっていく上がっていく!!ツインターボ、シルバーストーンを捉えて既に超えたぁ!?凄まじいストライド、凄まじいピッチ!!これが運命に噛みついたウマ娘サンデーサイレンスなのかぁ!?』

 

現役時代、自分が全力を以て戦った相手。当時の自分は勝つという意識はなかった、最高のレースをする為に全力を尽くしていた。その全力を出すにサンデーは相応しい相手だと思った、だが―――今の彼女は現役の時よりもずっとのびのびと走っているように映った。

 

「私もあんな風に、走れたのでしょうか?走れたのならば……」

「走れるさ」

 

浮かび上がった後悔が表面化する前にトレーナーは笑顔で手を取った。

 

「君はもう一度彼女と走る約束をした、ならばその時に走ればいい。過去の事を一々言った所で何も変わらないし教訓にして今日か明日の糧にしか出来ないんだ。なら未来の為に思えばいい」

「未来……その先の未来で、私は確りと走れるのでしょうか。後は衰えるだけの私が」

「その答えなら、君の前にあるじゃないか」

 

イージーゴアは顔を上げてすぐに改めてレースを見つめた。そう、レジェンドレースを走っているのはトゥインクルシリーズから身を引いた者ばかり、答えは既にそこにあったのだから。

 

 

『サンデーサイレンスが激走だ、今ツインターボを抜いて二番手に上がったぁ!!先頭は未だメジロランページ、間もなく向こう正面、1000mの通過タイムが―――えっ57.0!!?なにこれ本当に正しいんですか!!?』

 

赤坂の悲鳴染みた声がレース場に木霊する。幾らなんでも速過ぎるのだ、前年ランページが自らのワールドレコードを更新した時の通過タイムは57.2、去年よりも0.2秒も縮まっている。

 

「(愛してるぜ南ちゃん、スズカァ!!)」

 

スズカの走りは逃げウマ娘としては既に完成されつくしている、強いて言えばそれに身体が追いついていない事だけが問題。だが、自分がそれをする分には何の問題もないという事だ。

 

「(だけどこれ、思った通りに脚に来るな……スズカに早々に辞めさせて基礎練させて正解だった……喜べよスズカ、これがお前が何れ走る姿の一つだ!!)」

 

『メジロランページ此処で加速したぁ!?第三コーナー前で加速したぞメジロランページ!!』

 

「どぁっちゃ~……う~んこれはきついかもしれないなぁ……でもそれを覆したくなるのが、私なんだけどさ!!」

 

ランページが加速したと同時に最後方で控えていたミスターシービーが遂に脚を使い始めた。これまではあくまで脚を、身体を温める為だけの走りだと言わんばかりに一気に加速し始めていった。そんなシービーの視線にはとあるウマ娘が走っていた。それは同じように飛び出し、自分にまけないと言いたげに意地を張りながらも見事な走りをしている。

 

「―――へぇっ……」

 

思わず、その走りに笑みが込み上げて来た。シルヴァリオの走法は独特な物がある、一つは全身走法。これに限ってはランページだけではなくテイオーなども出来る、が異質に映るのはステップ。避ける筈であるバ群へと自ら飛び込むようにしながらもそれらを一瞬で抜いていくステップ、それを見て思わず笑いながらも真似てみた、すると面白いように前へと出れる。

 

「クロスオーバーステップ、懐かしい物を見せてくれますねシービーさん!!」

「あらっ知ってたんだ」

「ええっランの得意技でしたから!!」

 

上がり始めた頃にライアンが隣に来た、そんなライアンからステップの名を告げられる。そしてライアンは上がっていくシルヴァリオの姿にランページの影を見た。

 

「―――アタシも負けてられないなぁ!!テイオー先行くから!!」

「テイオォォォォオッ!!!」

「来たんだねシダー!!それなら猶更、ボクだってまっけないぞぉ!!!」

 

様々な展開は起き続けている、此処までの事なんてドリームトロフィーリーグでは有り得なかったのに……全く以て彼女は人の心を滾らせるのが本当に上手い物だ。そんな自分の内心を察したかの如く、ラモーヌが妖艶に笑った。

 

「行きなさい、暴君と徹底的に」

「―――ハッ感謝するよラモーヌ、私の霧は……晴れた!!!」

「早くそうすればいいのよ……貴方はそういう姿が一番なのだから」

 

上がっていくルドルフ、遂に動き始めた皇帝に誰もがざわめいた。その中で最も胸を躍らせていたのはビゼンニシキ。

 

 

『シンボリルドルフが動いた!!一気に上がっていくがビゼンニシキも共に上げていく!!メジロランページとの差は徐々に詰まっている!!追い上げが激しさを増していく!!さあ今メジロランページが先頭のままで第四コーナーを過ぎた!!さあ残るは直線のみだ、誰が来るんだ一体誰が―――ア、アグネスフローラの背後、上がり始めたその背後からソウルディケイターが凄い勢いで上がってきているっ!!』

 

「何ですとぉ!?」

 

攻め時だと脚を使い始めたフローラ。遂に勝負どころが来たと確信したのだが、それを利用された。そして前に出たケイは少しずつだが何故か失速した、だが何故か抜かせない、何故だ、そしてそれは直ぐに分かった。あれは車のシフトチェンジのような物なんだ、だから今から―――

 

「遂に来たなルドルフゥッ!!!私の後ろに道は出来る……一路邁進!私の道を紡ぎ出す!!」

「ファイナルアタックライド…来るなら来て下さい…その努力を破壊してやる」

「我の前に道はなし、なればこそ勇往邁進……道は自ら、切り開く……!!」

 

『ビゼンニシキ、ソウルディケイダー、シンボリルドルフ物凄い追い上げだ!!同世代の三人が一斉に独裁暴君への勝負に名乗りを上げるぅ!!さあ届くのかその脚は届くのか!!?いやルドルフルドルフの脚が真っ先に抜け出して暴君へと向かって行く!!独裁暴君の治世を終わらせるのは日本ウマ娘界の皇帝なのか!!?』

 

「カイチョー、いや皇帝っ!!!勝つのは、ランに挑むのはボクだぁぁぁぁぁ!!!!」

 

『と、トウカイテイオー!!!真の王座の争いに帝王も名乗りを上げたぁ!!これがブリーダーズカップターフを制した無重力の走りか!!?あっという間に皇帝に並びかける、並び掛けるが後方からも将軍もスパートを掛ける!!ロックスミスも伸びて来る、イクノディクタス、アームドリンクスも一気に来る!!一体誰なんだメジロランページへの挑戦者は一体誰なんだぁ!!?』

 

「その名前を出されたら―――誰にも譲る訳にはいかないんだよぉ!!!」

 

切望された大華

 

 

『あ、あぐ、アグネスフローラが此処で一気に来たぁ!!メジロランページへの挑戦者と言えばやはり彼女なのか!!?そのまま一気に抜いて、行くぅっ!!!矢張りアグネスフローラだっいや来ている!!皇帝が更に上がっていく!!これが日本ウマ娘の意地なのか、これまで日本を背負って来たと言ってもいいウマ娘達が一気に上がっていった!!!そして、遂に、遂にサンデーサイレンスに並び立ちメジロランページへの挑戦だぁぁぁあ!!!』

 

ランページとの差は本当に後僅か、1から半バ身程度、だがそれが縮まらない。そんな時にランページが彼女らを見た。そしてその瞳は語っていた。

 

―――おせぇんだよ……!!

 

それへの答えなど決まっている―――お前を越えに来た、それ以外に存在しない。

 

『シンボリルドルフが一気に距離を詰める!!今並ぶのか並べるのかいやランページも粘っている!!サンデーサイレンスも更に加速する!!アグネスフローラとて負けてはいない!暴君、皇帝、運命、大華!!この戦いは一体どんな結末を辿るのか!!?』

 

到達した神速の脚。

 

独裁暴君への愛

 

暴君と大華が更に力を出す、二人が更に前へと行こうとした時にサンデーの瞳が更に爛々とした輝きに満ちながらも周囲を飲み込むような異様なオーラが放たれた。それは彼女が下した来たウマ娘達の念とも違う、サンデーサイレンスが勝利への渇望と願望、それが殺意にも似たオーラとして溢れた。思わずルドルフとフローラが言葉を失いほんの一瞬、速度が落ちた、それを利用するかの如くサンデーが加速しランページに並んだ。

 

『さ、サンデーサイレンスが完全にメジロランページを捉えたぁ!!このまま行けるか、ごぼう抜きか!?運命に噛みついたウマ娘は世界を制した暴君の喉笛に食いちぎれるのか!!?』

 

「アンタならそうだよなぁ、二の太刀位あるわなぁ……そいつを待ってたんだよぉ!!」

 

亡き魂よ、共に暴れよう。

 

刹那、サンデーは見た。ランページと共に走っているウマ娘の姿を、それは次第に一つになって行く。自分のオーラを奪うようにしながら、それを糧にして走るかのようにしながら……ランページは更に強く、疾走く、駆け抜けていった。

 

『いやメジロランページがとどめの一伸びぃ!!!サンデーサイレンスを振り切った!!そのまま、そのままか!?そのままだぁ!!伝説は終わらない、世界よ見てくれこれが日本が誇るウマ娘の姿ぁ!!!一着メジロランページ!!二着にサンデーサイレンス、三着アグネスフローラ!!四着にシンボリルドルフ、五着にトウカイテイオー!!!』

 

勝った、勝ったんだ……ランページは燃え上がる様な身体を更に熱する興奮を必死に抑えつけながらも空に向けて腕を上げた。王者としての意地、そんなものはない。唯の……唯の……勝者の義務を果たしているだけだ。

 

「勝てなかった、かぁ……でもまあいいか……だって、あんなランページさんを見れるんだし」

 

アグネスフローラは生涯その光景を忘れる事がなく、その情景を完璧に絵にする事も出来たという。無数の歓声をその身に浴びながらも、満面の笑みで胸を張っているランページの姿を。

 

第二回レジェンドレース

中距離2400チャンピオン メジロランページ

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