貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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508話

メジロランページ、世界を再び相手にして勝利を収める。日本に集った伝説たち、その伝説たちを前にしても一切屈する事もなく、唯々前を見続けた。その力は逆境全てを自らの力に変える事をし続けてきた彼女だからこそ掴み取った勝利。逆境全てを力でねじ伏せてきたサンデーサイレンスのそれはランページにとっては格好の標的だったと言える。

 

「あ~あ……畜生、あ~こんちくしょうが」

 

勝利を飾ったランページの背中を見ながらサンデーはラチに身を委ねながらもポケットからペパーミントキャンディを出して口の中へと放り込んだ。

 

「勝てると思ったんだけどなぁ……ったく参ったな、参ったぜ」

「そう言いながらも笑ってますよサンデーさん」

「クックックッ……そりゃ面白くて堪らないに決まってんじゃねえか」

 

そんな言葉を口にするサンデーにライアンが声を掛けた。サンデーはマックイーンとばかりなイメージが先行しているが、メジロ家とは全体的に仲良くしているのでライアンも当然仲が良い。当社比と言えるかもしれないが……。

 

「俺は別にゴアみたいにレースを愛してなんかいねぇ、俺にとってのレースは戦場でしかねぇ。誰が好き好んで戦場に出るかよ、だけどな―――偶にこういう事があるから出ちまうんだよなぁ」

 

全てを憎み切ったサンデー、だが憎しみだけでは生きる事は出来ない。憎む、怒るというのは思っている以上にエネルギーを使う、怒りなどが活力になるからそれらを感じにくいだけだ。サンデーの場合はイージーゴアという相手がいたからレースに熱中していた。

 

「だけど勝ちたかったなぁ……まあいいさ、機会まで失われてる訳じゃねぇんだ。何、俺は待つ。その時が来たらもう一度全力で叩き潰してやるさ……ああその時までは、クククッ……」

 

不気味且つ恐ろし気な笑いを上げているサンデーに周囲は引いていた。流石にあれは怖いと思って当然だ。そんな中でサンデーはターボとシルバーをあっさりと捕獲した。

 

「さぁってまずはテメェらの面倒を見てやらねぇとなぁ?」

「わ~捕まったぁ!?」

「だからなんで私も巻き込まれるのよ~!?」

 

小生意気な二人を捕まえてどんなトレーニングを課してやろうかと早くも思案し始めるサンデーを尻目にランページは拳を突き上げたまま、ゆっくりと歩きだした。王者として堂々たる退場に歓声と拍手が衝撃となりながらも降り注ぐ中でサンデーはフローラへとアイアンクローをした。

 

「何でぇ!!?なんでいきなりすぎるでしょなんなんですかこれは私まだ何もしてないですよ!!?」

「まだ、な。お前この後ランページの控室に忍び込もうとしてたろ」

「何故バレたし!!?」

「ほぅっ俺の勘も捨てたもんじゃねえな」

「は、謀られたあぁぁぁっ!!?」

 

ターフ上でこんなことをされたのにも拘らず大した騒ぎになっていない、寧ろ笑い声すら聞こえてくる。擬態は完全に意味はなく、既にフローラの本性であるランページLOVEガチ勢が周知されている影響だろう。

 

「おいライアン、お前が行け」

「えっランのガードって事ですか?」

「それもあるが……とにかく行け」

「あっはい」

 

そう言われて少し駆け足でランページの後を追い始める、そして控室に入った時にそれをみた。ランページが倒れ込むように椅子に腰かけていた。

 

「ラ、ランッ!!?ちょっと大丈夫なの!!?」

「ラ、ライアン……少し、無理し過ぎた、かも……ね?」

「っ!?」

 

力なく微笑むランページに感じたのはどうしようもない郷愁だった。もう二度と帰れらなくなった故郷に帰れたかのような懐かしさと安心感が自分にあった。これは一体何なのか、そう思ったが、考えるまでもなかったんだ。自分は知っているんだ……!!

 

「ラン、だよね……アタシが知ってるランだよね、ランページだよね……!?」

「―――うん。臆病でもやしとおからとはんぺんが大好きなね」

 

そう、自分の親友のランページだ。でもどうして……と思った自分に応えるかのように彼女は笑った。

 

「今は眠らせてあげて、この人無茶したんだよ。南坂さんのトレーニングで全盛期を取り戻したのは良いけどそれが一過性のものだって完全に分かってたの、だから常に臨戦態勢で居続けてたの」

「……いやあの、ごめん一言言っていい?バカなの!!?」

「うん私もそう思う」

 

ランページは確かに全盛期の精神性を取り戻すこと自体は出来た、がそれは時間が過ぎるごとに劣化と減衰していくのを承知していた。何時までも若い時の心を保つ事が無理なのと同じだと言う。だったらどうするか?常にフルスロットルで居続けて減衰させなければいいという事をやった。

 

「マジで何やってんの!?そりゃ倒れるに決まってんじゃん!!どんだけのストレスが掛かると思ってんの!?」

「だから私がダーレーアラビアン様から一時的に身体を預かってって言われたんだよ」

「ああそれで……ちょっとまって今三女神の一柱の名前が聞こえた気がするんだけど……?」

「言ったけど?」

「やっぱりランだぁぁぁ……すっごい大事だったり重要な事を伝えるのを遅くしたりしないけど、ごく普通の事みたいに会話に混ぜてくる辺りマジで私の知ってるランだぁぁぁ……」

 

思わず頭を抱えるライアン。親友と再会できたことへの喜びを爆発させればいいのか、それとも親友が三女神とかかわりがある事が判明して困惑すればいいのか頭が爆発しそうになっている。そんなライアンを尻目にランページは椅子から腰を落ち着けられる場所へと移動した。

 

「ライアン、今回私と会えた事は完璧な偶然だよ。私は嬉しかったけどね」

「それでも嬉しかったのは同じだよ、何かそれ以上に頭が痛いけど……」

「ごめんごめん、それじゃあ後は任せていい?私はこの人に悪霊扱いされてるから」

「悪霊って……何やったらそんな扱いされるのよ」

「自殺やらかしたから」

「うんランが悪い!!」

 

だよね~と返した途端、ランページの身体は崩れ落ちた。慌ててライアンは支えに入りながら思い出した、去年も全力を出し過ぎた結果として酷く疲労していた事を。そして先程まであった笑顔は消え去りそこには穏やかな寝息を立てているランページの姿があった。

 

「……勝手だなぁ……勝手だよラン……親友だから許してあげるけどさ」

 

彼女の頭を抱え上げて膝の上に置く、そして彼女の頭を撫でる。偶に付き合ってくれた自分とのランニング、今思えば当時のランページに自分と同じ距離を走らせるのは酷だったのでは……という思いが沸き上がってきた。そんな走りの後は、決まってランと昼寝をしたりした。

 

「お疲れ様ラン……また会えて嬉しかったよ」

 

「しんゆ~!!凄かったよ~!!」

「ランページさん流石ですわ!!見ていてくださいまし今度は私が勝ってみせますわ!!」

「って、あれ?」

「お姉様?」

 

ファインを連れてマックイーン、パーマー、ライスがやって来たのだが彼女らが見たのは膝を貸しながらも自分も壁に寄りかかるようにしながら寝息を立てているライアンとそんな彼女の膝の上で眠っているランページの姿だった。

 

 

「お願いです離してくださいサンデーさん!!今、この瞬間にエモくて最高に萌えて興奮できるシーンがあるんです!!この目に焼き付けたいんです!!」

「ぜってぇ襲うから駄目だ」

「そんなに信用ありませんか私!?」

「ねぇよ」

「即答!?」

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