貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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51話

「ハァハァハァ……いやぁターボちゃんも速いね、ランに負けない位じゃん!!」

「ゼェゼェ……タ、ターボはテイオーのライバルだもんね、この位当然だもん!!」

「応凄いな、脚がプルップルのテイオーのライバルでカノープスの次期エースさんは」

 

ライアンとの特訓は自分だけでは煮詰まる、という事でデビューを控えているターボにも参加して貰う事にした。ランページと同じように全く抑えるという言葉を知らないと言わんばかりの破滅的な逃げだが……それでもランページとは違った意味での強さを感じさせる走りに追走をするライアン。なんとかターボは捉えられるようにはなるがランページは難しい模様。

 

「ターボ、ちょっと飲みもん調達して来てくれ。お釣りはやっから」

「分かった!!ターボ行って来る!!」

 

そう言われて1000円札を受け取ったターボは飲み物を買いに駆け出して行く、そんな後姿を見送りながらもライアンは落ちて来た陽を見つめながらも呟くように聞いた。

 

「アイネスに勝てるかな」

「知らねぇよ、それこそお前次第だ」

「ランらしいなぁ……」

「俺らしいね、それはどっちの意味だ?」

「どっちもかな」

 

シガーを吹かす今の自分、ライアンが知っている過去の自分、だがどちらも結局は自分らしさに収束する。

 

「アタシさ、偶に思うんだよね。とんでもない目標持っちゃったなぁって」

「何だよ俺のせいだって言いたいのか?」

「違うって。アタシってあんまり評価されない側だったんだよね、どっちかと言えば周囲の目はマックイーンの方に行ってたから」

「マックイーンはな……ありゃ別格だ」

 

その事は認めざるを得ない程、敢えて三冠を回避しつつも最後の菊花賞にのみ参加する事を表明している。それは春の天皇賞を見据えていることを示している、あの段階からメジロの為に走る事を決めているのだから大した物だ。

 

「三冠を取るに当たって一番の難敵はマックイーンだな、あいつの脚は長ければ長い程に輝く脚だ」

「うんそれは思う」

 

マックイーンは典型的なステイヤー、距離があればあるほどに輝く。しかもそれでも中距離でも通用する程のスピードを出せるのだから参る。自分だってマックイーンとは走りたくはない、今は大丈夫だろうがシニアに上がったら確実にぶつかるだろうから嫌になるが……早ければ来年の宝塚記念か天皇賞(秋)辺りだろうか。

 

「子供の夢みたいな目標だよね、二人でダブル三冠って」

「だな、今思うととんでもなく無謀な夢を追いかけてるもんだ」

「言い出した側がそれ言っちゃう?」

「それに乗ったのはお前だけどな」

 

一応分かっていたつもりだが、改めて挑戦してみると分かる辛さというのもある。だが今更やめるつもりなんてサラサラない、ランページは既に二冠を達成している。難しい筈なのに、この世界では重賞どころか一勝するだけでも強いウマ娘だと言われる、その上澄みの上澄み、一握りしか出場出来ないG1レース、その頂点に立とうとしているのだから大変の一言では済ませられない。

 

「でもさ、なんていうか今凄く愉しいよ。そりゃ目標は凄い高いけどさ……やりがいがあるって感じ」

「そうかそりゃ良かった」

「ラン~買って来たよ~!!」

 

そんな話をしているとターボが帰って来た。買って来てくれたそれを飲みながら色々と話すとするか。

 

「ハイ、ライアンにはスポーツドリンク」

「おっ有難う」

「はいラン」

「応サンキュ」

 

そう言って受け取るのだが、そこにあったのは……まさかのおでん缶。思わず、ターボにアルゼンチン・バックブリーカーを掛ける。

 

「何でよりにもよっておでん缶なんぞを買って来るんじゃおのれはぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ギャアアアアアアッッ!!!間違って買っちゃったのぉ!!お釣りはくれるっていうから勿体ないしランなら別にいいっていうかなぁって思ってぇぇぇ!!」

「そうかそうか、それなら仕方がない……なんていうと思ったら大間違いじゃボケがぁぁぁぁあ!!!!ンな事するなら残った金で別の買えや元は俺の金だろうがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ミャアアアアアアア!!!!??」

「アハハハハハハッ!!!もうしょうがないなぁ」

 

『さあ今年もこの日がやってきました、ウマ娘の祭典、東京優駿、日本ダービー!!何と今年のダービーを見る為に押し掛けた人の数はなんと18、いえ19万人を越えているとの事です!!これはこれまでにない程の大人数!!これ程の期待が、夢が、これから行われようとしているのです!!今から私の期待も張り裂けそうです!!!この数のスポットライトを浴びるのはどのウマ娘なのでしょうか!!?』

 

 

「すっごい人だね」

「全くだな、19万人か……とんでもねぇなおい」

 

東京レース場には尋常じゃない人が押し寄せている、それだけの人が今日のレースを楽しみにしていたという事だ。正しく夢や期待を乗せながら。

 

「わわっ……」

「ライス大丈夫か、確り手ぇ繋いどけよ」

「う、うん……有難うお姉様」

 

今回もライスがカノープスに混じってダービーの観戦に駆けつけている。ライスだって目指すのはクラシック三冠路線、ならばダービーは見逃がす事は出来ないレースなのだ。彼女の小さい手を握りしめながらも引き寄せて自分の前へと持って来てやる。

 

「ほれ、これなら大丈夫だろ」

「有難うお姉様」

「ライスズルい~ターボだってちゃんと見たいのに……」

「ならターボさんは私の前に」

「やっほ~いイクノってば分かる~!!」

「やれやれ……なんかごめんねライス」

 

そんな話をしていると、いよいよ本バ場入場が開始されていく。同時に大歓声が溢れ出す、これから世代の頂点を決めるレースが始める、日本一を賭けて争うウマ娘達の入場に皆が声を上げるが、一際その声が巨大となった。

 

『さあ此処で一番人気の登場です!!皐月賞1着の大本命、メジロランページに続いてメジロ家の二冠達成なるか!?世代の頂点を狙うメジロライアン!!』

 

「ライアン頑張れ~!!」

「が、頑張って~!!」

「気張り過ぎないように~!」

「頑張れ~!!」

「落ち着いて自分のペースを~!!」

 

それぞれが応援を送っているとそれに気づいたようにライアンが此方を見て笑顔を見せた、そして僅かに視線を動かしてランページの目を見た。

 

「(来たよ、此処まで―――観ててね親友、アタシの走りを)」

「(観てるぜ親友―――運命を掴み取れ)」

 

互いの想っている事が分かっているかのように頷き合うとライアンの瞳が鋭く凛々しい物へと変わっていく、その瞳をランページは見た事がある。あの瞳は……ミスターシービー最大のライバル、メジロモンスニーに酷く似ている。そして少し遅れたもう一つの大歓声が上がる。

 

『さあやってきた、矢張り注目なのはメジロライアンとこのウマ娘の一騎打ちか!?二番人気、皐月賞2着、世代の頂点に立つのはこのウマ娘なのか!?疾風怒濤、アイネスフウジン!!』

 

皐月賞との激闘はまだ記憶に新しい、皆が見に来ているのはこの二人の対決と言っても過言ではない。そして二人は視線を合わせる、がライアンは一足先にゲートへと向かおうとするのをアイネスが隣に並ぶ。

 

「今日は負けないの」

「アタシだってそう、負けない」

 

短い言葉をぶつけ合った後に、軽く笑い合うと軽くハイタッチをした。互いの健闘を祈りながらも二人は臨戦態勢へと入る。日本ダービー、間もなく出走。




おでん缶はうまゆる、アルゼンチン・バックブリーカーはウマ娘二期のマックイーンから。
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