貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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トレーナー・ランページ3年目。
512話


月日は巡り、また新しい月日が始まる。皇帝、至宝、天衣無縫、トレセン学園が誇る三冠ウマ娘の三人は引退しその去り際には多くの涙が流れたが、別れがあれば出会いもある。新たな生徒会長としてトウカイテイオー、副会長としてメジロマックイーンとイクノディクタスが就任。新たな生徒を出迎えた。

 

「今年もまた春が到来か……今年はどうなるかねぇ」

 

といつも通りに仕事を片付けていくランページ。新入生の事もあってトレーナーへの負担も変わってきたりで大変な時ではあるのだが平然と仕事をこなしていくランページに周囲からは今年からの新人トレーナーは畏怖と困惑の視線を向けて来るのだが、悪いが構ってやるほど自分も暇ではないのでスルーさせて貰う。

 

「よっランページ、今年の一押しウマ娘とかいねぇ?」

「それ、俺に聞く位なら自分で確かめた方が早くね?」

「いやだってお前去年だってドンピシャで言い当てて見せたじゃねえか」

「おハナさんこの変態になんか言ってやってください」

「ごめんなさい、私も貴方なら何か知ってると思って」

「Oh……」

 

よく見るとその後ろにはさり気無く珈琲を淹れつつも此方に聞き耳を立てている黒沼トレーナーまでいるじゃないか。何だ自分は預言者扱いでも受けているというのか、ある意味これはズルでしかないのだが……

 

「まあ、無くはねぇですよ」

「マジか!?早速教えてくれよ!!」

「つっても一人は既に予約済み、なんすよね沖さん」

 

突然話を振られたのは沖野ではなく、沖田トレーナー。ハンチング帽を愛用している40半ばのナイスミドルなベテラントレーナー。彼は少しだけ困ったような嬉しそうな顔をした。

 

「そりゃトプロの事を言ってるのか?」

「それ以外あると思ってます?俺が沖さんっていうのは貴方だけっすよ、この変態は沖ノッチであって沖さんじゃねえっすから」

「ンだよそれ……というか、沖田さんもう見つけてるのか」

「見つけた、というかそのウマ娘の親父さんとは個人的に仲が良くてな。その縁でちびっこウマ娘クラブで走ってるところを見せて貰ったりしてたんだ。それでその気があるならトレセンで見てやるぞって言ったんだ。それを果たす時が来たって訳だ」

「あらっ沖さんったら結構素敵なことするじゃない、ウマ娘漫画の王道パターンね」

「だな。お兄さんのトレーナーとの約束を果たす、だったか」

「おいおいそんなからかわないでくれよ」

 

沖田トレーナーは笑っているが内心では少しだけ驚いていた。自分はトプロことナリタトップロードの走りを幼い頃から見ていたからその素質に気づくことが出来た。だがランページはそれを介する事無く目玉の一人としてトプロを上げたのだ。トプロをデビューさせたら矢張り彼女が最大の敵かと気を引き締め直す。

 

「ンで他にもいるのか?」

「いない事もないが……そうだな、際立ってるのが二人ぐらいいるな」

「マジか」

「どんな子なの?」

「そうだなヒントぐらいは渡しても良いか、一人はファイナルズ決勝に似てる奴がいてもう一人は……ちょっとダウナー系かもな」

「随分とあやふやなヒントだな」

「俺だってそれをスカウトしたいんだぜ?それをこうしてヒント出してるだけ温情があると思いますけどねぇ……まあそれ以上にスカウトしてみたいのはいるけどな」

 

そういうとノートパソコンを閉じて職員室から去っていく、沖野たちは一体どんなウマ娘なのかと予想を立てながらも分かりやすい所からファイナルズに出走したウマ娘を改めて列挙していくのであった。

 

「覇王、か……」

 

敢えて省いた部分、そこまで言うべきなのだろうか。あの煌びやかな王はどのような道を歩むのだろうか。リギルの下か、スピカの下か、それともカノープスの下でか、どのような結果となったとしても自分は良いと思っている。

 

「あらっランページさんじゃない」

「よぉっキング、ハッピーかい?」

 

そんな所にキングと偶然顔を会わせることになった。今年も彼女のように誰かプレアデスに入る事になるのだろうか、そうなったらシンプルに迎えて祝ってあげようとは思うが……そう思っているのだがキングは誰かを探しているようだった。

 

「どったのよキング」

「実は今年から私にも同室の子が来ることになったの。ランページさんがとてもいい子が来るって随分前に言ってくれたじゃない?だからいい関係を築こうと思って待ってんだけど……何時まで経っても先生に言われた待ち合わせ場所にこないのよ」

「同室」

「ええ、もしかして何処かで迷子になってるのかしら……高知から来たらしいの、慣れてないと此処も迷うから少し心配なのよね……」

 

キングの同室と言えばあのウマ娘なのだが、矢張り彼女なのだろうか?そんな事を思っていると廊下の向こう側から手を大きく振りながらも満面の笑顔を浮かべながら歩いてくるウマ娘が見えてきた。その手にはニンジンジュースの缶が二つ収まっていた。そんな彼女は此方に気づくと更ににこやかな笑みを浮かべて駆け寄ってきた。

 

「あっもしかして同じお部屋の人!?」

「え、ええそうよ。貴方と同室になったキングヘイローよ、貴方のお名前は?」

「私?私ハルウララっていうの!高知から来たの!!宜しくねキングちゃん!!」

「ええ、此方こそ」

 

最初こそなんなのかしらこの子、と言いたげだったのに純粋無垢且つ天真爛漫な笑顔を見てすっかり毒気が抜けてしまったのかつられたように笑みを浮かべる。そんな彼女はランページの方を見ると更に笑みを強めた。

 

「あっ!!ねえねえねえもしかしてランページさんって貴方じゃない!?」

「んっ確かに俺は独裁暴君でお馴染みのランページさんだが」

「わ~凄い凄い!!ラビットちゃんからお話聞いてたから会いたいな~って思ってたの~!!!」

「ラビットってもしかして、ファイナルズで2連覇をしたラビットパラベラムさん?そういえば彼女も高知出身だったわね……」

「あっキングちゃんもラビットパラベラムちゃんのこと知ってるの!?」

 

天真爛漫で純粋無垢で好奇心旺盛なウマ娘、ピンク髪も愛らしさに拍車をかけている彼女は最も有名な競走馬と言ってもいいだろう。競馬を知らずとも知っている競走馬、アイドルホースで社会現象ともなったオグリキャップ、日本近代競馬の結晶とも言われた英雄ディープインパクト。そしてもう一頭、負け続けたが愛されるという勝ち方をしたハルウララ。生涯成績は 113戦0勝 2着5回 3着7回。決して勝つ事はなかったが、負けても負けても懸命に走るハルウララに心打たれる人々も多く、実際に自殺を思い止まった人も多かったという逸話もある。廃止寸前まで行った高知競馬場に活気を取り戻し、そこに集う人と馬を救った救世主とも言われ今も愛され続けるアイドルホースがハルウララなのである。

 

「あのねあのね!!私ね、ラビットちゃんみたいになりたいなぁ~って思ってるの!!見てる人がレースって凄いなぁって思わせてくれるウマ娘になりたいの!!」

「良い目標じゃねえか、なぁキング」

「ええ、とても素晴らしい目標よ。誰かに夢や希望、目標を与えるウマ娘なんて素晴らしいの一言だけじゃ語り切れないわ。だけど私だって負けてないわよ、何せこの私、キングは全距離G1制覇を目指しているのだから!!」

「わ~よく分からないけどキングちゃんって凄いんだね!!凄い凄い!ねえねえもっとお話しよ~!!」

「お~っほほほっ!!勿論良くってよね、だけどその前に私達のお部屋に案内してあげるわ!!」

 

キングとウララ、矢張りこの二人の絡みは見てて胸が暖かくなってくる……これがほっこりするという奴か。

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