「うわぁ~速い速~い!!マヤちゃんって凄いんだね!!」
「そうだよ、なんたってマヤは立派なG1ウマ娘なんだから!!今度の皐月賞だって勝つからウララちゃんも応援してね☆」
「うんうん応援する~!!頑張って~!!」
プレアデスの練習風景に賑やかで煌びやかな声が加わった。その声の主はハルウララ、彼女はキングと共に自分の部屋に向かったのだが、キングが練習に行くというと見学したい!!と言ってきたので連れて来てしまったとの事。本当は連れてくるつもりはなかったのだが……純粋無垢な瞳をキラキラさせて見つめられて断り切れなかったとの事。
「ランページさん、その……彼女なのですが見込みはあるのでしょうか」
「逆に聞こうエアエア、あると思う?」
「その……ないと思います」
「だよなぁ」
プレアデスに来て試しに軽いジョギングのつもりでメンバーで走らせたのだが、その中でもぶっちぎりに遅かったのがウララである。芝の適性がまるでないのもそうだが、走りのフォームもフォームがダメダメ。手を前に出して走っている、本当に子供の走りだ。
「だけど、伸ばそうと思えば伸ばせるな」
「そ、そうなんですかお姉様?」
「入学したてのウマ娘が、立て続けに芝からダートのジョギングをキッチリ完走した上にあんな元気出せるか?」
そう言われて二人はウララを見た。確かにジョギングはジョギングだ、だが東京レース場と同環境が整えられているこのレース場の一周を確りと走った上で今度はランページに自分の走りを真似てやってみろ、言われて共にダートコースを走っていた。
『わぁ~速い速い~!!私こっちの方が良いかも~!!』
『ほらっウララ、ついてきな!!ちゃんと着いて来れたらニンジンプリン奢ってやるぞ~』
『プリン!?食べたい~!!』
文字通りにエサで釣るような形ではあったが、そこそこの走りをする事が出来ていたウララ。つまり素質自体はあるので伸ばし方を確りと整えてやりさえすれば問題無いという事になる。
「ウララの長所は身体の丈夫さ、タフネスだな……それと底抜けの明るさから来る精神面の強さ。ランナーとしては何方も喉から手が出る位の素質を持ってる」
「でも、肝心の走力の方は……」
「そりゃ入学直後のウマ娘に高望みし過ぎるのはいかんさ、麻痺してるかもしれんがプレアデスにいるチームメンバーは上澄みも上澄みなんだよ、俺の今の目標はお前ら全員にG1を取らせることだからな」
「「ぜ、全員!!?」」
「出来ると俺は確信してるぜ、なぁ上ちゃんに坂原さん」
その言葉に自分が休んでいた間チームを切り盛りしていた二人は笑いながら頷いた。
「正直夢じゃないと思う、その先鋒のマヤがG1を取ってくれたからね。今年デビューのエアグルーヴさんもきっと行けると思ってる」
「そのマヤちゃんもスプリングステークスを取って皐月賞の優先出走権を取ってくれたしな、と言っても余裕をかましてる暇はないと思うってのが素直な所」
「だよなぁ」
トレーナー陣は自分達がG1を取る事を全く疑っていない、そこまで自分達の事を信じてくれている、それならば自分達もその信頼の応える為にも努力をしなければと奮起する傍らでランページは皐月賞の出走メンバーの事を考える。
「ジェニュインにフジかぁ……」
自分がネメシスで面倒を見ていたジェニュイン、そしてフジキセキ。フジキセキは本来弥生賞がラストラン。皐月賞前に屈腱炎を発症してしまう引退を余儀なくされたがこの世界では引退せず、皐月賞への出走を決めて張り切っている。
「ハッキリ言って手強い相手だよなぁ……今回のマヤヤの戦法は如何するつもりだい?」
「正直な所逃げか先行が良いんじゃないかなと思ってる、マヤは全ての戦法が使えるけど差しと追い込みの末脚だと二人に追い付けない。前に出てレースのペースと主導権を握り好位置をキープ、そして直線でいい脚を使う。これが一番だと思う」
「俺も同意見だ」
「同じく。マヤちゃんはかなりの万能型だけど、言い方を変えると特化してる部分がないから作戦なんかで上手くフォローしてあげる必要があるもんな」
マヤはクラシックを取れるのか、という事は余り意識していない。ただ悔いが残らないようなレースをさせてやるのがトレーナーの役目。マヤの悔いが残らない、つまり所の勝利を目指すだけ。
「ねえねえトレーナーちゃん!マヤが皐月賞勝ったら嬉しい!?喜ぶ!?」
戻って来たマヤは坂原に抱き着きながら上目遣いをしながらそう質問した。そんな彼女の頭を優しくなでながら坂原は答えるがその答えはマヤからすれば不満だった。
「僕はマヤが無事に走り切ってくれたらそれだけで満足だよ」
「むっ~そうじゃないよ、マヤは勝ったら嬉しい?って聞いたの~!!」
「さて、どうだろうね。マヤの走ってる姿をトレーナーとして見れるだけでも毎日幸せだからこれ以上は高望みかなぁって思ってる」
「高望みなんじゃないもん!!!マヤはトレーナーちゃんに本当に感謝してるんだから!!だから見てて、マヤ絶対にトレーナーちゃんに皐月賞プレゼントするから!!良いよねランページさん!!」
まさかここで自分に飛び火するとは思ってなかったランページは軽く驚いたが直ぐに言葉の意味を理解した。ホープフルステークスの勝利によってG1トレーナーという称号、そして次はクラシックを勝たせたトレーナーという称号を坂原に送りたいというのだろう。全く以て惚れこまれているなぁと少しだけ笑いながら答える。
「応、プレアデスからの初クラシック制覇者なんて縁起良いからな。俺が許可する、勝っちまえ」
「うんマヤ頑張る!!もう一回走って来るね~」
そう言って駆け出していくマヤを見送る。そんな姿を見て元気だなぁと思いながらも坂原は頑張り過ぎなくてもいいのになぁという気持ちだった。
「僕はもうマヤに色んなものを貰い過ぎてるからこれ以上は欲張りだと思うんだよ、僕のトレーナー人生の中で今まで担当してきたこの中でもトップクラスに凄いからねマヤは……だからマヤがこのまま無事に引退してくれたら何もいう事はないよ」
「惚れこんでるなぁ……」
「坂原さん、マヤとのデートも頻繁に行ってるもんな」
「マヤが大人のデートしたいって言うから付き合ってるだけだよ、まあ内容的には大人のデートと言うには厳しいかな……マヤ、映画の宣伝のキスシーンとかでも顔真っ赤にしちゃうから」
「あら可愛い」