貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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514話

「ああこちらにいらっしゃいましたか」

「んっ?何だ南ちゃん、態々こっちに顔出すとか珍しいな」

 

練習を見ている時にやって来た南坂、彼も彼でカノープスの方があるだろうに……まあイクノやターボらが引退して少しは楽になった面はあるかもしれないが……それでも忙しいのは変わらないだろうに。そんな彼の手には一枚の紙があった。

 

「如何やら出走回避があったそうで……それで期限ギリギリの出走ウマ娘の変更が行われたそうです。此方が新しい皐月賞の出走表です」

「あれま、なんかクリークさんの菊花賞みたいだな」

「ええ、少し珍しい事ですが」

 

まあ兎も角顔触れが変わるという事になるのか、と思いながらも心が騒いでいた。まさかフジが屈腱炎を発症したという事では……と思いながらも恐る恐る出走表を坂原や上水流と共に見る。が、そこにフジの名前があってホッとしながらも自分の持っていた前の出走表と見比べる。

 

「えっと……あっマベちん?」

 

そこにあったのはマーベラスサンデーの名前だったのだ。マヤの同期であるが身体に問題があって脆さ故に如何するべきかと彼のトレーナーも悩んでいたらしいが……如何やらあのマーベラスウマ娘が皐月賞に殴り込んで来る事になったらしい。

 

「サンデーちゃんか、マヤとも仲が良い子だね。良い脚を持ってる、だけどギリギリのところで滑り込みセーフって所かな。これで完全に決定かな南坂君」

「そうですね、日程的にもこれで決定でしょう。後は取り消しになるでしょうね」

「んじゃこれで決定か……」

 

マーベラスサンデーがクラシックに挑戦する、フジキセキまでもが無事のまま。一体どうなってしまうのか……マヤの同期にして不屈の塊とさえ称された名馬。デビュー前には骨折、疝痛などの体調不良で生死の境を彷徨い、骨と皮だけのような状態にもなっていた。だが担当厩務員はジャパンカップを制したマーベラスクラウンよりも走ると信じた。その思いに応えるかのように復活、鞍上武 豊と共に駆け抜け、後の宝塚記念を勝利した伝説の道を作り上げた不屈の塊。

 

「マジかぁ……」

 

素直な事を言えばマーベラスサンデーが出走する事は難しいと考えたのだが……最早史実とは大きく乖離し過ぎているこの世界では無駄な考えだと思うべきかもしれない……だがこれでマヤの明確なライバルが更に充実した事になった。フジキセキにジェニュイン、マーベラスサンデー……益々困難な道になったなぁ……と溜息を吐きそうになっているとキンキンに冷えたニンジンジュースが差し出された。そちらを向けばウララがいた。

 

「はいっ!!マヤちゃんと一緒に購買で買ったから御裾分け!!」

「ああ悪いなウララ、後で美味いプリン奢ってやるから」

「わ~い!!えっと、トレーナーさん達はお茶でいい?友達のおばあちゃんからこういう時はお茶が良いって言ってたからそうしたよ!!」

「おっこりゃ有難いな、ありがとうねウララちゃん」

「美味しくいただきますねウララさん」

「えへへ~皆にも配ってくる~」

 

如何やらマヤと一緒に差し入れのドリンクを購買まで買いに行っていたらしい。わざわざ自分達の分まで買ってこなくても良かったのに親切な子だ……と思いながらもニンジンジュースを喉の奥へと流し込む。

 

「マヤの事も色々山積みだな……マーベが出るならプランは少し組み直した方が良いかもしれないぞ、あの子の末脚は相当なもんだ」

「確かトレーナーは……多沢さんだっけ」

「多沢さんだね。となると……色々と考え直す必要があるかもしれないね、サンデーちゃんが出て来るなら色々と練り直されないといけないし……マヤ~マヤ~?ちょっとこっち来れる~?」

「は~い今行く~!!ウララちゃん、これお願いね~」

「は~い!!」

 

皆に配っていたドリンクをウララに預けると凄い勢いで駆け寄ってきたマヤ、坂原が呼び出すと本当に何処からともなく凄い勢いで駆け寄ってきて抱き着く。本当に凄い懐かれようだ。

 

「な~にトレーナーちゃん?」

「さっきね皐月賞の出走表が来たんだけどメンバーが少し変わったんだ、それでマーベラスサンデーちゃんが出走する事になったんだよ」

「え~そうなの!!?やった~一緒に走れるんだ~!!」

「そういう事だね、でもそれに当たって先行で行く作戦を少し練り直したんだ。ちょっとマンツーマンになるけどいいかい?」

「うんトレーナーちゃんならいつでもウェルカムマーベラース!!」

 

そういうと坂原の手を引っ張ってコースへと走っていく、ウマ娘のペースなので普通の大人ならきつい筈なのに坂原はまるで慣れていると言わんばかりに平然とついていってしまった。

 

「なあランページ、皐月賞誰が勝つと思う?」

「ぶっちゃけ分らん。俺としてはマヤと言ってやりたい所なんだけど……どいつもこいつも有望株で誰を推せばいいのか全く分からない。言える事があるとすれば」

「すれば?」

「マヤは確実に負ける時が来る」

 

喉が鳴った。一度も敗北を知らずにいる暴君がそう語っている、誰よりも一番先を駆け抜け続けた王者が敗北の時は必ず来るという予言を口にした。

 

「上ちゃん、俺は別に負けても良いと思う。負けた方が得られる物は多い、俺は勝てちまっただけだからな……だけど世間の連中は絶対に下らねぇ事を口にする。俺達はそれと全力で戦うぞ」

「……ああ分かってるつもりだよ、君のサブトレになった時から覚悟はしてる。それと君の権力も俺が使う許可は欲しいな。俺だけだとただの新人トレーナーだから」

「許可する、好きに使ってくれ。使えるものを使わないのは勿体無いからな、よく言ってるだろ俺。ハイテクも使い手にメリットが無きゃローテクだって」

 

いよいよその時が来るのか……と思わず喉を鳴らす上水流。きっと色々な非難や荒唐無稽な記事を書かれたりするのだろうなぁ……だがそれでいい、ウマ娘達にそれを背負させる方がよっぽど辛い事だ。大人は盾になる位が丁度良いんだ。

 

「ランページさんジュース配って来たよ!!みんな喜んでくれた~!!」

「そうかよかったなウララ、皆に可愛がってもらえたか」

「うん!!皆とっても優しくて此処って凄い楽しいねキングちゃんもいるし!!ねえねえ、私もこのチーム、入っちゃダメ!?私此処で走りたい!」

「フフフッその気があるなら今度からはキングに連れて来て貰いな、歓迎するぜ?」

「わ~い!!キングちゃ~ん!!スぺちゃ~ん!!エルちゃ~ん!!」

 

それを聞いて益々うれしくなったのかウララは駆け出して行ってしまった、その時の走りは手をまっすぐ伸ばしたものではなく自分が教えた走り方だった。その走り方ならばそれなりの走りが出来ている……やっぱり大切なのは教え方だなと思う。

 

「今年は、後一人ぐらいにしとくかな……?」

「誰か宛てでもいるの?」

「当てというかなんというか、ちょっち話しておきたい相手が居る―――そう、俺関連でな」

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