貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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516話

世間では桜花賞で賑わった、やはり自分らの影響でティアラ路線を志すウマ娘の数は多くクラシックに比べて人気が劣ると言われていたのも昔の話。そんな桜花賞を制したのはワンダーパヒューム、彼女は勿論トリプルティアラを目指す!!と宣言し注目を集めていた。そんな桜花賞だが自分に解説の依頼が来たのだが無論断った。こっちだって新年度になってトレーナー家業が忙しい、という理由で断った。そして次は皐月賞が迫る、プレアデスからはマヤが出走する為に世間は騒がしいが、ランページは余り気にせずに指導を続けている。

 

「ウララ~もうちょっとペース上げてみな~」

「は~い!!」

 

ダートではウララが笑顔を咲かせたまま駆け抜けていく、見学しているウマ娘達は如何して彼女がプレアデスにいるのか?と疑問に思うものも多い、もしかして何かコネがあるのか……と邪推する者もいるが、その程度でチームに入れる程暴君が甘い訳がない。では何か光る物があるのだろうと勝手に納得する者が多い。

 

「ランページさんこれ面白い~!!」

「そうかそうか、捕まえてみな。出来たらご褒美だ」

「わ~待て待て~!!」

 

今やっているのはドローンを利用した追いかけっこもどき。ウララは好奇心旺盛で様々な物に興味を示して集中力が長続きしない。そこでドローンを使う事にした、ウララのジャージにはドローンとリンクした位置を把握するマーカーを仕込み、ドローンはそれを検知して一定距離を取るようにしている。追いかければ逃げる、だが追いかけなければ挑発するように一定を保つ。

 

「負けないぞ~!!待て~!!」

 

ウマ娘の競争心と闘争心を程よく刺激しつつも遊びの要素も加わる、ドローンはまだ物珍しい物なのでウララの好奇心も満たす事が出来る。

 

「しかしドローンをあんな風に活用するなんて……贅沢というかなんというか……」

「カメラでウララの走りも撮ってるから確認も出来る、良い手だとは思うけど」

「まあ死蔵させるには早いからな」

 

実際この方法は大成功でウララはこの練習にご執心で同室のキングからは如何すればドローンさんに追い付けるかなぁと相談するほどだったらしい。そこから派生してキングは上手い事、ゲーム形式でコース取りや走り方のフォームなどを教えているらしい。

 

「最初はあの子はそこまででもないと思ったけど逆だね……好きな事にはガンガン首を突っ込んで無限にやれるタイプだね」

「子供と言えば子供らしいですけど、それを練習に活かせるとなれば幾らでも活かし方が考え付きますからトレーナーとしても有難い感じですよね」

 

好奇心旺盛ならば旺盛なりの対応をすればいい、それだけの話だ。飽きっぽい、扱いづらい、気性が荒い、それだけで指導を投げ出すのは唯の諦めと怠惰でしかない。どんなウマ娘だろうとも向き合ってそれに合うように努力するのがトレーナーだ。

 

「一方で……」

 

視線を動かす、そこではエアグルーヴとドーベル、そしてタイキの三人と共に走り込みをしているアヤベの姿があった。比較的に扱いやすい部類、指示は聞いてくれるし練習にも真面目に取り組んでくれている訳だが……

 

「真面目過ぎる」

「いや真面目なのは良い事だと思うんだけど」

「そう言う意味合いじゃねぇんだよ上ちゃん、真面目なのはそりゃいい事だ。トレーナーとしても助かる面もある、だがそれだけだ。それ以上でも以下でもない」

「それには賛成かな、あと少し練習に対する熱が強すぎる面もあるね」

 

「次、お願いします……!!」

「熱心な事は良い事だが休憩時間は確りと挟ませて貰うぞ、これはランページさんからの厳命でもあるからな」

「でも時間を無駄には……」

「無駄じゃないわよ、効率的に進めていく故で休憩は必要な事よ」

「Vega、焦りスギデース。もう少し、余裕持っていいでーす」

「……はい、わかりました」

 

真剣にトレーニングに望んでくれるのはいい、だが熱心過ぎるのはマズい。視野が狭くなって思わぬ所で躓く可能性だってある。真面目な印象のあるエアグルーヴだってあそこまでの集中はせずに適度な状態を維持している。矢張り妹への贖罪……だがあんな状態では何れ倒れるのは目に見えている。

 

「(俺も傍から見たらあんな感じだったのかねぇ……)」

 

レジェンドレースの全盛期維持の事を考えると今のアヤベは他人に思えなかった。それを踏まえるとアヤベに待っているのはストレスによる過労などだろうか……正直、自分の立場なんてどうでも良いが彼女の身体が心配になるし、これは思った以上に早めに手を打った方が良いのかもしれない……と思いながら時間を確認する、この時間帯なら大丈夫だろうと電話を掛ける。それを一度切って掛け直しを待つ。そして通話が来る。

 

「応、今大丈夫?」

『はい大丈夫です。今は休み時間ですので』

「つうか、携帯持ち込んでOKなんだな小学校」

『マナーモードと休み時間以外では使用禁止が基本です、それで何かありました?』

 

掛けたのはカフェ。自分の影響力を考えると向こうからの掛け直しを待つのが一番だと思われる。因みに他にもポッケとも交換している。連絡が来る頻度はタキオン>カフェ>ポッケ。

 

「実はな、お前の力を借りたい。お友達関連に近いかな」

『私なんかでお力になれますかね……?』

「俺が必要としてるんだよ、マンハッタンカフェの力をさ」

『そんな事言われたら何も言えなくなっちゃいますよ……ズルいですね、ランページさんって』

「大人なんて総じてズルいもんさ、そして子供はそんな大人を食い物にしてでっかくなるんだ」

 

一先ずこれでカフェの協力は得られる、問題はどうやってアヤベをその場まで連れて行くかなのだが……まあなんとかなるだろう。その辺りは自分が苦労すればいいだけの話だ。

 

「カフェ、暇な時間ってあるか?」

『暇な時間ですか、私達は進級したばかりなので午前授業まだ多いです』

「おっしゃ、んじゃ数日中に力貸してくれ。報酬はそうだな……俺行きつけの喫茶店スタートツアーっての如何だ?」

『それは、楽しそうですね……はい大丈夫です』

「んじゃ、タキオンとポッケにも宜しくな。んじゃね~」

 

これで色々と決まった。時間をかけてゆっくりと……そのつもりだったが指導者からの目線だと今のアヤベさんの状態は極めて良くない、先手先手で手を打つ必要がある……。

 

「お~いエアエア、調子如何だい」

「良い部類だと思います、今年のデビュー……必ず勝ってみせます」

「そりゃ結構だ、んでアヤベさんは如何見る?」

 

チラリとタイキと走り込んでいる彼女を見る。

 

「素直に言わせて貰えば……何かに追い詰められているような印象を受けます、強迫観念に縛られているのにもかかわらずそれを大きな力に変えている……感じです。すいませんうまく表現出来ませんが……」

「いや俺も似たような印象を受けてる。それと俺から見てもお前さんの仕上がりはいいからデビューは早めを想定するけど良いか?」

「勿論です!!」

 

エアグルーヴのやる気を引き出しつつもゴールして汗だくになっているアヤベへと冷たいドリンクを差し出しながら言う。

 

「アヤベさんや、ちょっち俺に付き合わないか?」

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