貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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525話

「ランページ、貴方また無茶したみたいね」

「無茶なんて随分な言い方してくれますねオハナさん、俺は気に入らない所に殴り込んだだけですよ。ああいう事をするとどうなるのか一度あの業界は知るべきだった、それだけの事です」

 

数日前、とある出版社が謝罪会見を行った。それは月刊ターフラン、先日出版した記事への謝罪、不適切な内容と偏向報道、出走したウマ娘の名誉を傷つけた事への謝罪がされた。その記事は先日の天皇賞(春)に関する物で東条もトレーナーとしてこの記事にはムカつきを感じ得なかったが……まさか行動を起こそうなんて思いもしなかった。

 

「記者連中だけじゃない、マスコミもですがあいつらは自分達が何をやっても許される程にえらいと勘違いしている。そこは正されるべきだと思った、あいつらの欲を満たす為だけに俺の可愛い後輩を傷つけるなんざぁ論外」

「それだけの為に、貴方……」

「それにこの事はウラヌス御大にスーちゃんにお婆様も了解済みです、何なら出版社にはお婆様とスーちゃんと一緒に行きましたから」

 

確かに最近の報道の流れは良くないとは思う、だがそれを正す為の行動は難しいし色々と繊細な部分がある。だがランページにとってはそんな事は如何でもいい事でしかない、文句があるなら立ち向かってくればいい、自分はそれに相応しいだけの迎撃の備えをする。

 

「ハヤヒデのケアはしておきました、あいつはこれからもっと強くなれる。なんだったらアイツこそ海外の長距離レースに出しても良いと思いますよ、あいつはタフなバ場でも十二分に活躍できると思うし、メルボルンカップの三代目日本覇者になったらそれこそ面白い」

「―――……有難う、ハヤヒデの為に此処までしてくれて。あの子もきっと喜んでると思うわ」

「お気になさらず、チョーシに乗ったゴミに意思表示をしただけっすから」

 

結局の所、ランページがまともに取材を受けても良いと思った所は乙名史記者のいる月刊トゥインクルのみになってしまった。あのターフランは確りと謝罪した上にその後の対応もきちんとしていたので執行猶予のつもりで取材を許可するつもりでいるが……もういっそのこと自分のチャンネルでそういう事を発信しようかなと思ってしまう。

 

「あれ、いや想像以上にいい思い付きなんじゃね……?」

 

これまでもトレセン学園の内部紹介やらトレーナーに対するインタビューなども行っていた。それならいっそのこと、レースで活躍したウマ娘に対する取材をしてもいいのではないだろうか……。一々記者連中の選別をする必要もないしウマ娘の安全性にも繋がる、唯一のネックは即応性がない事だけ……いや個室を借りて配信器具を持ち込めば……。

 

「お~いこれのチェック……ってあの、お~い聞いてる~……?」

「あっ悪い、ちょっち面白い事思いついちゃってそれに対する事でね。ンで何だったけ」

「いやほら俺に割り振られた仕事のチェックお願いしたいんだ」

「あ~悪い悪い、俺の所だったな今」

 

ランページも経験した新人トレーナー向けにサブトレーナーとしてトレーナーの仕事の一部を担当する役割、2年前に自分が体験した事を今度は自分がさせる側になっている。これでも一応3年目なんだけどなぁ……と内心でぼやきながらも確認する。

 

「……うむ、OKだ。期限内所か早めに終わらせるなんてやるじゃないのよ」

「ああいや君から貰った資料が分かりやすかったからだよ、俺もあのテンプレートって真似てもいいかな?」

「真似て良いどころかテンプレごとくれてやるぜ、それで役に立てるなら存分にな」

「マジで!?良い奴だなぁ有難う!!」

 

とランページにまるで気心知れた友人のように話しかける新人トレーナーに周囲は信じられないと言いたげな顔をしている。世界を制した暴君である上に先日の出版社の一件もある為ランページは色々と恐れられている面が強い。具体的に言えば失礼な事をしたら怖いので近寄らないようにしている。が、今年から入った彼はそんな事も気にせずにタメ口で会話する。

 

「ンで如何だい、中央は」

「思っていた以上に大変な所だって感じだけど、なんだかんだで楽しそうな所だなって思ってる。あっそれでこの前凄い面白いウマ娘と意気投合してね、なんかあれよあれよと彼女のトレーナーになる事になっちゃって」

「あれま、なぁに逆スカウトされたのかい?」

「なのかな……?」

「ンでそのウマ娘って誰なんだい、俺も知ってる子?」

「ああいや今年入学した子」

 

今年入学でいきなりトレーナーを逆指名とは随分と豪胆というか強気な事をするウマ娘も居たものだ。しかも相手は今年入ったばかりの新人でまたとあるチームでサブトレーナーをして経験を蓄積させている時なのに……まだ見ぬ道を切り拓くタイプなのだろうか。

 

「プレアデスにも今年入学したのが二人いるな、一応同期って事になるけど……因みに名前は?」

「テイエムオペラオーって言うんだ、凄い元気が良くて一緒居て楽しいというか賑やかというか……まあ兎に角凄い覇気のある子って如何したの頭押さえて」

「気にしないでくれ……」

 

遂に、聞いてしまったその名前、何時か耳にするだろう目にするだろうと思っていたが遂に来た。唯一無二の栄冠、偉業を達成し歴史にその名を刻んだ覇王の名。年間無敗、完全制覇のグランドスラムを達成した世紀末覇王テイエムオペラオー。アドマイヤベガの同期であり何れ自分が対決する相手の名前でもある……そしてこの新人トレーナー。

 

「んじゃまあその子のデビューまでに十二分に経験着けとかなきゃあかんな、和多ちゃん」

「勿論そのつもり、なんというかあの子とは運命的な何かを感じるんだ……その為にも頑張るさ。んじゃ俺行くわ」

「応、気ぃつけてな」

 

運命の悪戯なのか、三女神の企みか分からないがオペラオーの鞍上だった男と同じ名前の男が新人としてこのトレセンにやって来た。改めて、あの覇王と戦わなければならない時が迫っている……そう思うと不思議と身体が震えてきてしまった……。

 

「覇王か……上等だ、こちとら暴君だ恐れるものはないってな」

 

そう思いながらアヤベさんとウララのメニューを組み始めるのであった。

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