貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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526話

「待て待て~!!」

 

今日も今日とてダートコースの上を駆けながらもドローンを追いかけるウララ。

 

「本当に楽しそうに走ってますねウララちゃん」

「私としては意外過ぎてびっくりよ、ウララさんが飽きることなく続けてるんだから」

「そんなに言う事デスか?」

「貴方達はウララさんと同室じゃないからそういう事が言えるのよ」

 

キング曰く幼児のように好奇心が旺盛でじっとしている事が苦手だという彼女。部屋で髪を整えてあげている時だって偶然部屋に入ってきた蝶々に目を奪われてしまう程、その時はスマホでアニメを見せてジッとさせていたという。そんな彼女はドローンを追いかけ続けている。しかも如実に効果が出ているのか以前よりも速くなっているように見える。

 

「走力的にはそこまで変わっちゃいない、だけどウララの奴走り方を自分で変えてるっぽいな。多分無意識で」

「あ、あのウララさんがそんな事ありえるの!?」

 

思わずキングは吃驚してしまう、あのウララがそんな事を……!?と思いながらもランページは走りを確り見るようにと促す。コーナーへ入った時、ウララの歩幅が変わった。ストライドからピッチへと変わってコーナリング重視の走りへと変わった。内々へと切り込んでいくような走りで内ラチ近くを走っていく。そしてコーナーが終わりに近づくにつれて脚がストライドへと戻っていく。

 

「ホントだ、ウララちゃんの脚捌きが変わってます!!」

「まだまだぎこちなさはあるけど、確かに変わってる……ああっ転びそうに……!!大丈夫、良かった立て直したわ」

「中々デースね、でもあの切り替えがうまくなレバ相当な武器になりソーデス」

「俺もそう思うがまだ駄目だな……もう少し走らせてから教える、今教えたら逆に意識しちゃってバランス崩しちまう」

 

ウララの心の中でドローンに勝ちたいという闘争心が徐々に勝り始めている状態、そこに下手に口を出したら闘争心に理性が介入して形が崩れる恐れがある。だからまだ駄目。

 

「エル、ウララに付き合ってみてくれ。ウララのやってる事は様々な場面で応用が利く技術の一端だからな」

「了解デース!!ウララちゃ~ん私も走りマース!!」

「えっ~エルちゃんと走っていいの~!?やった~楽しそ~!!」

 

笑顔で受け入れて今度は二人でドローンを追いかけ始める、こうして比較すればウララの走りはまだまだ発展途上過ぎる面が目立つのがよく分かる。エルとウララを比べる事自体が可笑しい事は分かるが……それでもウララはまだまだ伸びていける事が分かっただけでも大収穫。

 

「スペ、キング、二人はそうだな……エアエアとタイキと模擬レースやってくれ」

「分かりました!!」

「分かった」

 

二人にも指示を飛ばしながらも今度は走り込みを続けているアヤベへと視線を向ける。

 

「もう、一本お願いします!!」

「いいわ、それじゃあ」

「待って待ってスズカ、5分は休憩だって」

 

アヤベの練習に付き合っているのはスズカとサニーの逃げコンビ、追い込みのアヤベには合わないとも思うが、最後の末脚のレベルの測定や現段階での実力を明らかにしておきたいので敢えて走らせている。

 

「最後の最後で一気にスパートを掛けた際の末脚のキレは相当な物、だけどなぁ……」

 

彼女の末脚のキレは素晴らしい物がある、だが同時に不安材料も存在している。それは脚部の不安、史実のアドマイヤベガは母のベガと同じく脚の内向による脚部不安があったのだ。ウマ娘の彼女にはそこまでの懸念はないが……それでも不安にはなる。

 

「先頭の景色、譲らない……!!」

「ハァァァァッ……!!」

「おおっ来た来た来た来たぁ!!負けるかぁ!!」

 

2年先の先輩である二人に中々の食らい付きを見せるアヤベ、まだ入学したばかりだというのに大した物だと言いたくなるが矢張り瞬間的な脚への負担が心配になる。そうなるとするべきメニューは……絞られてくる。

 

「ハァハァハァッ……やっぱり全然敵わない……」

「あたぼうだ、入学したてが来年デビューのスズカ達の本気を引き出そうとするなんざ気が早いんだよ」

「……やっぱり、本気も本気じゃなかったんですね」

「スズカ以外はな、ホントお前は腹芸っつうか加減が出来ない奴だねぇ」

 

恥ずかしそうに頬を染めるスズカ、走っている内に楽しくなってきてしまうスズカの性格上、相手に合わせるとか手加減すると言った事は如何しても苦手。だから今回は楽しく走る感じだったので本気度で言えば70~80程度だっただろう。サニーは60程度だったのに……。

 

「アヤベさんや、今の走りでこれからどうするかが見えた気がする。簡単に言えば―――お前にはシフトを作って貰う」

「シフト、ですか?」

「シフトって仕事表とかのあれ?」

「そっちじゃない、車とかのあのシフトだ」

 

あ~そっちか、とサニーが言えばアヤベの後ろにいた妹さんが楽し気な顔で笑う。彼女もプレアデスのこの空気感が気に入ってくれているようで何よりだ。

 

「アヤベさんの強みは文字通りに末脚、ラストで伸びて来る脚。レース序盤と中盤は脚を溜めながらコース取りで好位置を狙い、終盤で全てをぶち抜く。だが逆に言えばその負担がラストに集約されていると言ってもいい。だからこそ脚を溜めるだけじゃない、脚を温める方針で行こうと思う」

「脚を、温める……?」

「スズカならなんとなく分からないか?偶に峠連れてってやるけど偶に俺がワザと大袈裟にドリフトしてることあるだろ」

「あっあります」

 

今でも続けているスズカの峠通い、お陰で運転スキルの方も順調に伸びている。

 

「あれはタイヤを温めたい時にやってる事なんだ、準備運動みたいなもんだと思ってくれればいい。それと同じで走りながら脚に準備をさせる、段階的にスピードを速めつつ次の速度帯への準備時間を作る。一速二速三速、こんな風にな」

「それで、私の末脚は伸びるんですか?」

「確実にな。溜まってる力を解放するのに万全な状態に脚を持って行く」

「分かりました、その頑張ります」

「応頑張ってくれ」

 

そう言って彼女の頭を撫でる、以前までの彼女ならこんな事をしても直ぐに嫌がって離れただろうに今は違う。大人しく撫でられ続けている。そんなアヤベを羨まし気な顔をするスズカとなんか仲良くなったなぁという顔をするサニー。

 

「二人はこのまま休憩だ、後でマルゼン姉さん来るから二人は姉さんと模擬レースだ。今の段階での仕上がり確認してからデビューに向けて本格的に上げていくぞ」

「はい!!」

「はいっ!!って待って待ってスズカ今休憩って言われたよね!?マルゼンスキーさんと走るんだからなんで今から走ろうとしてるの!?」

「……だって楽しみで」

「少しはそれを溜めるとか言う意識ないの!?」

「だって私、逃げウマ娘よ?」

「私だってそうだよ!?何逃げウマ娘は溜めないみたいな言い方してるのよ!?」

 

走りだそうとするスズカを必死に止めるサニーとそんなサニーを説得という名のごり押しで振り切ろうとするスズカ。流石にランページも一言言ってスズカを抑える。

 

「全く……あれさえなきゃなぁ……」

「……あのランページさん」

「んっ?」

「……もうちょっと撫でてください」

「あいよ」

 

最も変わった所と言えばアヤベさんが少し甘えん坊な所を出すようになったところだろうか。ライスのそれに近いかもしれないが素直に自分への信頼を見せるようになってくれた事が一番喜ばしい事だ。

 

「妹さんもプレアデスが気に入ったようで何よりだ」

「それは、私もなんとなく感じてます」

「そうか」

 

三女神からの指令もこれで完全にクリアと言っていいだろう。そして―――

 

『NHKマイルカップ、ジェニュイン初G1獲得!!』

 

トゥインクルシリーズは更に熾烈を極めようとしていた。

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