貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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527話

ジェニュインのNHKマイルカップ制覇。皐月賞にて完璧なレース運びでレース全体の流れを支配していたリギル、それをマーベラスサンデーに覆された事へのリベンジと言いたげなG1制覇。流石はリギルだと話題は大きい。

 

『素晴らしい走りでしたが、次走の予定は決まっているのでしょうか!?』

『日本ダービーを狙っています。同じくリギルのフジキセキも出走を予定しています』

 

勝利インタビューで堂々と東条はそう答えて見せた、矢張りそう思う一方でランページはマジかと背凭れに身体を預けた。NHKマイルから日本ダービーというローテーション、自分はある意味それ以上のローテーションで走ってきたウマ娘だ、それを否定するつもりはないが……

 

「松国ローテか……」

「今なんか言った?」

「何にも」

 

NHKマイルから日本ダービー、あの東条トレーナーならば怪我をさせたりするという愚をしたりはしないと思うが、正直出てきてくれない方が有難いのは事実。それを制したのならばそのままマイル路線に舵を切ってくれたらマヤと被る事もなくなるから有り難いのに……まあ当人の希望もあるのだからそれは難しいのだろうが。

 

「マヤ気合入れろ~!!ジェニュインはこのまま勢いに乗ってダービーを掻っ攫うつもりだぞ~!!」

「マヤは負けないもん~!!」

 

その一言が更に火を入れたのかマヤの走りにもより一層の気合が入るようになった。幻惑逃げとペース変化の特訓も順調に進んでいるので今回はどのぐらいまで行けるかを試して貰っている。その相手は―――

 

「おもろいやんか、どこまでやれるか徹底的に見たる!!」

「確かに面白い走り方をするな……前を行ったり後ろに行ったり……」

 

タマモクロスとオグリキャップの二人。オグリは丁度話を持っていた際に一緒に居たので折角だから協力してくれることになった、タマは合宿でマヤの相手をしてくれた事がある上にランページが編入試験の時に初めて披露した幻惑逃げをあっさり見破られた事を思い出したのでお願いした。

 

「う~んやっぱり君って凄いね」

「突然何ね」

「僕だって流石に廊下ですれ違う事はあるよ、それでもチームのウマ娘の技術についての意見が欲しいので走ってくださいなんて言えないよ。それぐらいあの二人は本当に凄い伝説の二人だから」

 

坂原としてもプレアデスに慣れ始めて来たと自負はしてきたのだが、矢張り平然とレジェンドが顔を出すこのチームの特異性への適応はまだまだらしい。

 

「ンで満足はした?」

「した」

 

坂原の胸の中にはタマとオグリからのサイン色紙がある、なんだかんだで欲しかったらしくお願いしてみたら快く書いてくれた上に写真撮影までしてくれたので満足気。そしてそんな満足気な坂原の愛バであるマヤは今日まで必死に覚えてきた技術の全てを二人にぶつけるつもりで2400を走っている。

 

「ンでランページ、タマさんとオグリちゃん相手にマヤちゃんのあれらって通用するのかな」

「しないだろうな」

 

バッサリと言ってしまうランページに上水流はトレーナーなのにそれでいいのかと思うが、即座に追記が飛んでくる。

 

「別にマヤはあの二人と争う訳じゃねぇんだぜ?二人はドリームトロフィーリーグ組だしマヤヤと実際に走って勝負をするのはマベちんにジェイン、それにフジらだ。そいつらに通じるレベルか如何か否かを見極める為なんだから極論負けても良いんだよ、本番で勝ちゃあな」

「ま、まあそれはそうだけどさ」

 

マヤも相当に上手いペース変化と幻惑逃げを展開しているが、百戦錬磨の二人はペースを乱す気配はない。ラストの直線に入ったタイミングで二人は一気に加速してマヤへと一気に並びかけた。

 

「ほらほらもう並んだぁ!!こっから如何する!?」

「此処から、此処からは―――もうアフターバーナー全開ぃ!!!」

「良い顔だな、付き合おう」

 

最後の最後には全てを投げ捨てた全力疾走、幻惑逃げが通じなければそれしかないだろう。しかしマヤのラストの脚は突き放すどころか並ばれたまま逃げ切る事も出来ずにそのまま、横一線のままでゴール板を駆け抜けていった。

 

「はぁはぁ……やっぱり、流石に脚は残ってなかったぁ……」

「でもいい脚しとったからこれなら逃げもありやな」

「うん私もそう思う」

 

まだまだ余裕そうな二人を見て格の違いを味わいながらも坂原からドリンクを差し出されて、お礼を言いながら受け取るマヤ。そんな二人を見ながらもランページが走りの様子について尋ねる。

 

「ンでどうでしたマヤの走りは」

「ええと思う、ペースの変化も前以てこないな事をしますって言われたからわかったようなもんやしこっから先行から追い込み差しへの変更も組み込む、それやったら厄介の一言じゃすまへん」

「動きも柔らかったし本番でも行けると思う、少し私達にムキになってた感じはするが」

「それはまあ、テストするって言ってるのに全く通じないように見えなかったら思うでしょうよ」

「課題と言えばその辺りやろな、精神的な面がやっぱりまだ不安な所や強いて言えば」

 

そう言いながら視線をチラリと動かせば坂原に膝枕してされながらも顔を隠すように腹の方に顔を向けているマヤの姿があった。

 

「マヤは本当に頑張ったんだし今回は勝ち負けじゃなくてどれだけ出来るかの確認なんだからさ」

「それでも勝ちたかったんだもん、スパート掛けてもずっと横にいたからショックなんだもん」

「そっかそっか、マヤは凄かったよ」

「……もっと撫でないとヤ」

「はいはい」

 

技術面での不安は少ない、問題は精神的な所。マヤはまだまだ幼い所があるので坂原を支えにしてる部分が大半。しかしレース中に頼ろうとしてもそれは出来ないのでそこを補強してやるべきだと指摘する。

 

「成程ね……今回は有難う御座いました。んじゃこれお約束の」

「っ!!本当に用意してくれたのか!?タマの言葉に乗って冗談半分で言ったんだぞ!?」

「前から行きたいって言ってたじゃないですか、それに天下のオグリキャップが来てくれたなんて店としても箔が付くってもんですよ。んでタマさんはこっち」

「ホンマか!?いやぁ持つべきものは令嬢の後輩やなぁ!!」

 

オグリにはメジロ系列の飲食店で使える招待券、タマには家族で巡る北海道の旅をプレゼントした。何方もメジロ系列の物、例え無料で招待してもお釣りが来る位のリターンが見込めるのでお婆様も許可してくれた。

 

「さてマヤ、何時までしょぼくれてんだ。ダービーに向けてまだまだ頑張らないとダメだぞ」

「むっ~分かってるよ~もうちょっとトレーナーちゃんの膝枕堪能したかった~」

「そりゃ悪かったな、今度二人っきりの時にしてくれ」

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