貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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536話

『……ごめんなさいフローラにはちゃんと連絡するように言っておいたんだけど……』

「いやそれならいいんですけど、こっちは結構ビビりましたよ。なんでこいついんの?ってなりましたもん」

 

フローラをアイアンクローで地面に叩きつけた後、フローラの発言の真偽を確認する為におハナさんへの連絡を取る。如何やらマジだったらしい……おハナさんにしては珍しいミス。そこは自分で連絡するべきでは。

 

「それでなんで態々俺の所に寄こすんですか、というか意図は?」

『素直な事を言わせて貰うとフローラもトレーナーへの進路を本格的に取ろうとしているみたいなの、正直あの子にトレーナーとしての知識とかノウハウを蓄積させたいの。それでプレアデスだけじゃなくてスピカやカノープスにも派遣予定だったの、だけど……最初はスピカの予定だったのに何でそっちにいるのよ……』

「フローラだからでは?」

『一言で現実を突きつけるのは止めて頂戴……』

 

だがそれなら連絡が来ていないのもある程度は理解が追いつく、本来ならある程度の時間をおいてからこっちに来る筈だったのだろう。だから順番に連絡を取る予定だったのにそれをガン無視してこっちに来たというのが真実。

 

「はぁ……んじゃ分かりました、こいつは一旦こっちで預かりますよ」

『今更言うのもあれだけど本当に良いの?普通に拒否するのもありなの、特にプレアデスとリギルは今シーズンはライバル関係なんだから』

「おハナさんには世話になってますし意図も理解出来ます、俺みたいにしないという意味じゃ正しい行いです、それに―――俺も努力して負けなきゃいいだけの話です」

『―――素直にそういう事言えるところ、貴方の美徳ね。この埋め合わせはするわ』

「一先ず沖ノッチに連絡したらどうっすか?」

『そうね、それじゃあ連絡してみるわ。それじゃあお願いね』

「うい~す」

 

一先ず状況の把握は終了した。そして砂浜に叩き込んだフローラに向けて声を掛ける。

 

「お前さ、スピカに行く予定だったらしいじゃん」

「いえ私はランページさん一筋です」

「そうじゃねえ、今度は犬神家の一族にすんぞ」

「いやぁその予定だったんですけど……向かってる途中に此処を通り過ぎる感じだったんですけど、ランページさんの姿を見たらもう此処をキャンプ地とするってなっちゃいまして」

「その短絡的な思考、直さないとこれから苦労するぞお前」

「大丈夫です、それすら飲み込んで幸せになれます」

 

もうこいつに何を言った所で無駄だと悟る、本当にこれがトレーナーとしてやっていけるのだろうか、いやおハナさんの見立てでは十二分過ぎる位には優秀、それを更に大きくする為の工程。本来は自分もこういう事をする筈だったと思うと……いやこれ以上考えるのはやめておこう。合宿の事もあるのだから早く行動に移さなければ……

 

「ふみぃっ!?」

「おっとごめんよ」

 

ワザとらしく踏みつけておく。

 

「ランページさんの体重、重み、感触、うへへへへへっ確かに感じましたよぉ……」

「キメぇ事言ってねぇでさっさと起きろ変態、少しでも動いて取り戻せるように努力しやがれ」

「はいっ!!」

 

即座に起き上がって追いかけて来る、本当にマルチな変態だ……。

 

「あらっフローラちゃんじゃない、如何して此処に?」

「不束者ですがお世話になる事になりました!!」

「戯言抜かしてんじゃねえぞクソボケ、本当は色んなチーム巡ってトレーナー勉強する筈だったらしいんですけど、スピカの予定すっ飛ばして此処に来やがったんですよこいつ」

「あらあら、ちゃんとした予定があったのにそれに断りとか誤りの連絡もなしに来ちゃうのはダメよ?その辺りも確りとしないと立派なトレーナーにはなれないわよ?」

「も、申し訳ありません……」

 

スーちゃんから割と本気の指摘を受けて素直に項垂れるフローラ。これは事実だから確りと受けなければならない。

 

「それでランちゃん、フローラちゃんは如何するの?」

「こいつはこいつで凱旋門制覇ウマ娘っつう世界的に見ても希少なウマ娘っすからね……利用価値は色々あるんですけど、やっぱり現役組に組み込みたいかなぁ」

「現役組ってなると誰なんですか?組って事はデビューしてない子も組み込んでますよね」

「ああ、マヤとエアエアとステゴだな。教導役にサンデーとシンザンパイセン」

「うっへぇ~死ぬほど豪華だけど気性難が揃ってるぅ~」

 

タブレットでマヤやエアエア、ステゴのデータを見せながらも話を進める。フローラはランページとの距離が近いにも関わらずそれへの反応を示す事もなくタブレットに集中している。

 

「マヤちゃんはどういう方向性で仕上げるんですか、皐月だとプレッシャー、ダービーだと立ち回りでカバーリングしてた感じしましたけど」

「マヤはまだ精神的に脆い所があるからな、得意を押し付けてる間は良いが逆にそれをされた場合の立ち回りに不安があるからそこを鍛えたいな。海外仕込みのデバフでガンガン圧を掛けてくれ」

「分かりました、それでエアちゃんは?デビュー戦は見ましたけどあの走りは完璧に近かったですよ。若干かかってるのかなっとも思いましたけどそれすら普通に利用して相手のペース崩してましたからあれを目指すって感じですか?」

「最終的にはそれを目指したいが、あいつはまだまだ成長過程だからな。格の違いってのと見せつけて如何すればいいのかを考えさせるのが良いと思う」

「ああ成程、ハヤヒデちゃんタイプなんですね?それなら任せてくださいあの子の指導も私やってるので、ハヤヒデちゃんには海外遠征を視野に入れて貰ってるので色々とやってるんですよ」

「面白いな」

 

先程のやり取りから一転して其処にはトレーナー同士の語り合いがある。公私を分けられるタイプなのかフローラも真面目な顔一辺倒。ランページもその辺りは確りと弁えているのか、戯れを混ぜはしていない。

 

「それでステゴちゃんなんですけど、この子どうします?既にサンデーさんとやり合ってるみたいな状況なんですよね、もうあれでいいのでは?」

「アイツは海外遠征時代のテンションで叩き潰していけ」

「……良いんですか?やれと言われたら私はマジで潰しに行きますよ」

 

スピードシンボリは一瞬背筋に寒い物が走ったのを感じた。これは凱旋門へと挑んだランページと同じものだ。そしてこれを感じさせたから凱旋門へのスタートに迷うことなく送り出す事が出来た確信でもあった。そう、この子だって海外戦線で11戦8勝という好成績を残しているウマ娘なのだから。

 

「ハッキリ言うとな、ステゴは日本の芝よりも海外の芝向きだと思う。タフなバ場であればあいつの脚の良さがどんどんと出ていくと思う」

「海外向けですか……そうなると凱旋門想定ですか」

「そこまでは言ってない、だけどあいつの旅路は間違いなく輝かしい物になる。だったらその為の旅行券位は俺が用意してやらねぇとカッコつけねぇだろ」

「―――羨ましいですね、貴方にそこまで思われるなんて……分かりました、参加してきます」

 

タブレットを返却しながらもフローラは走りだしていった。最初こそ邪険に扱ったが来てくれてよかったかもしれない。自分と同じく海外挑戦組、ステゴの事を考えると経験者と走らせてやりたいのだが、カノープスで色々大変だろうし無理強いは出来ない。出来るとすればパーマーだが……脚質的にも近いフローラが一番なのは揺るぎない。

 

「何だか意外ねぇ~ランちゃんってばフローラちゃんのこと嫌いじゃなかったの?」

「別に嫌いって訳でもないですよ、苦手で呆れてるだけだよスーちゃん。あいつ、ああいう所さえ出さなければ超一流のウマ娘なのは認める。問題はその一点が全てを台無しにしてるだけ、だけどやる時はやる奴ですし、数少ない俺が信頼出来る奴だよ」

 

一番の敵だったウマ娘を信頼できる相手として認めている、戦い続けたからこそ理解出来ている部分がある。だからこそ任せられる。

 

「さてと、ウララにアヤベさん待たせたな。さあ始めるぞ」

「ハ~イ!!」

「が、頑張ります」

「あらあら可愛いわね~」

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