貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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538話

「よぉっマヤヤ元気、じゃねぇみたいだな」

「ごめんねランページ、マヤ疲れちゃってるみたいでさ」

 

昼食、海の幸のフルコースが用意されている中でその一角で倒れ込むように眠りについているマヤ達を発見したランページ。次の特訓に備えている、と言えば聞こえはいいだろうが実際は疲労の余りに倒れ込むように寝ているのであった。

 

「随分と厳しくやられたらしくてね……食べるだけ食べたら英気を養うっていうから膝を貸してあげてるんだ。といってもなんとか英気を養おうとしているのはマヤだけじゃないんだけどさ」

「みたいだな」

 

そういう隣ではうつ伏せになって眠っているエアグルーヴに大の字になって寝ているステゴがいる。ステゴが此処まで疲れを隠す事もしていないのは珍しい。

 

「随分と派手にやったみたいだな……」

「いやぁ中々折れない心持ってるみたいですからこっちも結構本気になっちゃいました」

 

そう言いながらも大量の刺身を食べながらも3人の寝顔を見つめるフローラ。ゴーストランページにハイペース、そしてデバフ祭りを差し向けたというのに3人は諦める所か果敢に挑み続けてきたのだから大したものだと言わざるを得ない。自分だって初めての海外戦ではデバフに戸惑ったり苦しんで自分の走りを維持するのが精一杯だったのに……

 

「でも良いんですかランページさん、私マジで加減してませんから潰れるかもしれませんよ。マヤちゃんなんて菊だと多分大本命になると思いますよ、本質的にはライスちゃんみたいなステイヤーだと思います。まあライスちゃんよりかは中距離行けますタイプではあると思います」

「大丈夫、こいつらは潰れたりはしないさ」

 

そう言いながらエアグルーヴの頭を撫でながらステゴの脚が隠れるように布をかぶせてやる。

 

「押し付ける信頼じゃない、こいつらは絶対に伸びるって分かる。俺にもスパルタ特訓はしてやれるがこいつらにはお前の容赦なさが合う」

「そうですかね」

「こいつらは似て非なる物ではあるが俺への尊敬を抱いてくれてる、だから俺の特訓は素直に受け入れてくれるだろうがそれじゃあ駄目だ、唯の信頼じゃ今はダメ。敵意や殺意に近い中で自らを見つめ直す必要がある。特にマヤはそれをするべきだ」

「菊後のG1想定、だね?」

「ああ。ブライアンにぶつかる覚悟をしなきゃならねぇ」

 

フローラはそれを聞いて驚いた。ブライアンに本気で戦いを挑むつもりなのかと、しかも言い方からしてクラシッククラスで挑むつもりなのだ。シニアに上がってからでいいではないかとも思うが何れぶつかる相手ならば早めにぶつかった方が良いかもしれないという判断だろうか……。

 

「ブライアンちゃん相手ですか……確かにそれは必要かもしれないですけど、エアちゃんとステゴちゃんはどうしてですか」

「エアエアに関しては追い込む為だ、俺と並んで戦う為の強さを望んでいるならばそれ相応の苦行を課してやって更に強くなる土台を作ってやらなきゃならん。ステゴの場合は……まあお前の事舐め腐ってるからそれにお前が負けたら面白いから」

「うぉい」

 

というのも冗談、世界の広さをその身で知っているフローラと走る。何れ世界のウマ娘と競い倒す事を望んでいる事は分かっている。今のうちに戦い方を仕込んでおく、そしてこの強さは同期であるスズカ達にもいい刺激になると思っている。

 

「スズカへの刺激にもなるだろ」

「あれ、もしかしてスズカちゃんも海外向けなんですか?」

「左回りが得意って意味じゃそうだな、アメリカとか左回りだった筈だから向きではある」

「あ~そっちでしたか、なんかあるんですよねこっち向きの方が得意っての。私ありませんけど」

「お前両刀だもんな」

「なんか別の意味に聞こえるからやめてください、私は貴方一筋です」

 

スズカ達の進捗は中々、来年デビューを控えているのでスズカの基礎練の成果を確かめるのも含めてこの合宿を機にスズカ本来のスタートを許可した。その結果は一体どうなったのか……

 

「エースさん、スズカ達如何っすか?」

「……ハッキリ言うぞ、スズカの伸びがやべぇ」

 

スズカ本来の走り、一歩一歩でギアを変える事が可能な天賦の才。それは脚に負荷が掛かる事が判明しているので早々にそれは禁止にして基礎練に従事させる事にしたのだが……それは想像以上の化学反応を起こしたようだった。

 

「スズカの膝と足腰が強固でありながらも粘りと柔らかさを帯びてる、これなら問題なくあの走りをしていいと断言出来るが……シンプルにやべぇぞあれ、現役時代に戦ってみたかったぜ……」

「……そんなに?」

「そんなに。サニーも相当にレベルアップしてんぞ、あれが同時にクラシックに殴りこみかけるってか?来年は他チームからしたら試練の年だな」

 

年単位で積み重ねさせたスズカの基礎練、その結果スズカは負荷に耐えうるだけの脚を獲得しただけではなくそれらを更に伸ばす足腰を得た。これはそれを見る必要性が出てきたと思いながらも午後はスズカ達の所に顔を出そうと決めると三人に向けて一瞬だけ殺気を飛ばしてみる。

 

「「「っ!!?」」」

 

示し合わせたかのように三人は跳び起きて周囲を警戒し始めた、やってる事が殺気に反応している軍人と同じだ。サンデーもその反応速度にほぉ?と感嘆の声を漏らしている。

 

「テメェの仕業かぁ……人が寝てるところをよくも邪魔しやがったなぁゴラァ!!?」

「やはりそうか……フローラさん、特訓中の借りは必ず返して見せます、いや今ここで返すのも悪くないでしょうかね!?」

「マヤ、トレーナーちゃんのお膝でいい夢見れてたのに……んもうなんてことするの!?」

「えっ何私のせいなの!?私マジで何もしてないんですけどぉ!!?」

「お前、すげぇ恨まれてんな。どんな感じで練習させてたんだよ」

「あれランページさんにも私のせいだと思われてる!?」

「少なくともエアエアにここまで言わせるって相当なことをしなきゃ言われないと思うんですよ、だからアンタにも問題はあると思うんですあたしゃ」

「クッソ否定出来ねぇ!!」

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