貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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541話

合宿は極めて順調に進み終わりを告げた。今回の合宿で最も成長したのはスズカ―――ではなく

 

「おらぁぁぁぁぁっ!!!!」

「負けるかぁぁぁぁ!!!」

「マヤ、フルスロットォォル!!」

 

ステゴ、エアエア、マヤヤの三名だとランページは語る。スズカの場合はこれまで抑えていたものを解放させただけに過ぎない、スズカはこれからが伸びる盛りでしかない。だがこの三人は全く違うのだ。

 

「何やったんだよこれ」

「君があの面子に任せた結果じゃないかな?」

「いや流石にこれは予想外だぞ」

「これさ、エアグルーヴの次走どうするつもりなんだよ」

「いやぁ……だってさ、G3勝っちまったんだぜ?」

「だよねぇ……」

 

合宿中の事、シンザンから進言がありオープン予定だったものを合宿明けの札幌ジュニアステークスへと緊急変更。流石に合宿の疲れもあるのにそれは如何なんだと思ったのだが彼女は問題ないと一蹴、ランページはエアエアから何とか言ってくれと本人から言葉を勝ち取ろうとしたのだが

 

『出させてください。お願いします!!』

 

寧ろ出させてくれと頭を下げられてしまった。そこまで言うなら……と出走を認めた所……平然のように勝ってきた。しかも2着のビワハイジに7バ身差での勝利に言葉を失った。合宿での疲れがあるとは思えぬような力強い走りとガンガンとハイペースで周囲を引っ張り、競り合おうとしたウマ娘を一蹴して誰よりも先にゴール板を駆け抜けていった。

 

「なんつうかさ、俺の走りっていうかフローラの走りに近いんだよなぁ……」

 

そう、エアエアの今の走りはランページのライバルであるフローラのそれに近い。それに独自性とオリジナルを織り交ぜた走りになっているのだが……エアエアからはサンデーのようなプレッシャーが感じられる。

 

「なんていうのか、海外的な走りになったよね」

「容赦なく敵であるウマ娘を押し潰しに掛かる王者の走りだね」

「ステゴに近い走りになったよなぁ、まあそのステゴの走りも変わってんだけどさ」

 

ステゴの走りも変化している、以前よりもより洗練されているだけではない。コース取りが異常に上手くなっているしレース全体の流れを見て自分が勝てるコースが見えているような様子すらあるのが一種の恐怖を掻き立てる。

 

「これまで彼女は力任せというか理を使わずに己の持ちうるものだけで勝負していた、だけどそこに理屈が混ざってる。しかも殆ど考えてないね、走りまくった末に身に沁みついた物を使ってる。実質的にこれは技術なんかじゃない」

「サンデーが使うような物だぞこれ、何でそれを体得してんだ?」

「散々辛酸舐めさせられた結果だろうなぁ……」

 

合宿中に最も走ったのがステゴ、シンザンやサンデー、そしてフローラ相手にずっと走り続けたと言っても過言ではない。叩き潰され続けたウマ娘はどうなるか、そのまま潰れて再起出来ないか、敗北の果てに何かを見つけるか、押し潰された反動で一気に伸びたのだ。元々相手を威圧する走りをするステゴにとってサンデーとフローラのそれらは相性が良かった、そこにシンザンに徹底的に扱かれた事で一気に凝縮されてしまった。

 

「それでマヤヤは……なんであの子あんなに一気に仕上がるの?ねぇ何で?俺がマジで必死になって覚えた全身走法を何でもう出来るようになってるの、マジでなんで、マジで泣くぞこの野郎」

 

思わずそう毒づきたくなるレベルの光景がそこにあったのだ。マヤは完璧に全身走法をマスターし使いこなせている。そこにペース変化なども組み合わせて相手の心理を巧みに突いた戦術を付いている、敢えて自分のペース変更を見破らせてペースを握らせたと思わせて裏でそれを誘導するという高度な心理戦までするようになっている。

 

「シンザンパイセンがマヤの事褒めてたけど、こういう事かぁ……伸びすぎだよマジで」

「しっかしこうもなるか普通、あの子何処まで突き抜ける気?」

 

次走は神戸新聞杯予定だが、これは期待出来る所の仕上がりじゃない。

 

「これは、俗にいうやり過ぎた、かな?」

「俗じゃなくてもそうとしか表現できんと思う会場は此処ですか」

 

だが同時に判断は正しかった事にも繋がる、なんだかんだ言ってフローラが来てくれたのは正直助かった。あんなことは自分には出来ないしサンデーだけでは如何してもステゴを追い詰めきれない。サンデーで追い込み切れないのが大分おかしいのだが……まあ結果オーライだ。

 

「菊は期待が出来るね、いやそれ以上の結果を望んでも良いかもしれない」

「エアグルーヴの次走は如何する?」

「サウジアラビアロイヤルカップ、ンで京都ジュニアステークス、それで阪神ジュペナイルフィリーズでG1挑戦だな」

「規定通りにティアラ路線だな、さてさてあの子は何処まで行けるかな」

 

近年ではティアラ路線は再評価されてクラシック路線に比べて下に見られる事は無くなった、何故かと言われればティアラ路線から大暴れした面子が同年に3人も出たから。その筆頭であるランページ、その教え子であるエアグルーヴは確実に比較の対象にされるだろう。幾らジュニアクラスと言えどどれだけ踏ん張れるかが未来に直結する。

 

「愚問だな、信じるだけさ俺達は。強くなったアイツらを」

「まあ俺達はそれぐらいしか出来ないしな」

「まだまだやる事は沢山あるんだからな上ちゃん、何せ来年は5人デビューなんだから」

「……そうでしたぁ……」

「忙しくなりそうだね」




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