貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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545話

『さあ歴史を刻む菊舞台、クラシック最終戦を征するのは一体誰なのか。皐月のマーベラスサンデーか、それともダービーウマ娘のフジキセキか。それともNHKマイルを制した驚異のマイラージュニュインか、それとも長距離を得意としている事を公言しているマヤノトップガンか。さあ今、ゲートインが終わりました。第56回菊花賞、今―――スタートしました!!出遅れありませんがマヤノトップガンが素晴らしいスタートを切ったぞ!!?これは綺麗なスタート、出遅れはありません、マヤノトップガンが早くも先頭を駆け抜けて5バ身の差を付けております!!』

 

菊花賞が遂に始まった。前哨戦のレースを勝利しているマヤの人気は3番人気と悪くない、そして日本ダービーと奇しくも同じスタートと相成った。そして誰もが警戒を強めた、最高のスタートを切れたとしても平然とその優位を捨てる事も辞さない戦法の自在性……それは走っている全員が警戒した、そして誰もが幻惑走りの対策をしてきた―――だが

 

『マヤノトップガンが逃げる逃げる!!既に10バ身の差はあるでしょうか!?そして淀の急坂もなんのその!!お構いなしに速度を上げ続けます!!いやこれは本当に凄いぞ!!』

 

「しまった、まさかこの大舞台でそれをやるのかマヤ!?」

「情けない、ネメシスに居てこれに気づけないとかマジかよ!?というか持つのか、3000だぞ!?」

「マヤちん凄い~でも私は自分勝手に走るから関係ないもんね~♪」

 

『これは上手く心の隙を突きましたわね』

『心の隙、ですか』

『正確に言えば駆け引きで既にマヤノトップガンさんは勝っているのです』

 

解説席に座っているのはマックイーン、長距離において彼女程の役者はいないとオファーが来たのでマックイーンはそれを受けた。当人的には菊花賞はライアンに負けているので何とも言えないが天皇賞(春)と同じ舞台だからだと解釈している。

 

『マヤさんは前哨戦でも幻惑走りを使っていた、それによって誰もが脳裏に抱くそのイメージ、それが身体と思考を縛りつけていく。加えてダービーでは最高のスタートですらブラフや戦術の為なら平然と投げ捨てる。その思いっきりの良さとこの菊花賞は被る、上手くつきました。そして……チームトレーナーであるランページさんが最も得意としている大逃げを打った。普通なら菊の3000の距離で大逃げなんて正気の沙汰ではないかもしれませんが―――ランページさんに比べてマヤさんは長距離に向いている点が余りにも多いのです』

 

「俺を比較する事自体が間違ってんだけどな、生憎俺に持久力はない」

「よく言うよ、ハヤヒデやブライアンの菊花賞対策で走ってた癖に」

「だからこそだよ、マジできついんだぞ3000」

 

そもそもが体格が違う、ランページは身体が大きい上にシンザン鉄などを使いまくった影響で筋量も多い為に体重も重いがマヤは小柄で体重も軽い。その分身体に掛かる負担も少ないので坂道などではマヤの方がスピードは出しやすい。

 

「加えてマヤは息の入れ方(回復スキル)も上手いからなぁ……」

「何時の間にか回復してるんだよなぁ……走ってる時の呼吸って凄い大切だから凄い才能だ」

「マヤは天才だからね」

 

問題なのは小柄故のストライドぐらいだったのだが―――

 

『さあ向こう正面に入った所で先頭は未だマヤノトップガン!!まだまだ差を維持し続けています!!余裕はたっぷりだ、サンズヴェールとオークスウマ娘のダンスパートナーが必死に追うがこの差は余りにも絶望的だ!!フジキセキとジェニュインが上がり始める、だが此処でマヤノトップガンが更に加速する!!速い、速いぞマヤノトップガン!!しかし此処からは坂があるぞ大丈夫なのかマヤノトップガン⁉』

 

「何回、何十回、何百回も見た。その度に走ってきた、だから今のマヤには絶対に出来る!!だってマヤには―――トレーナーちゃん達が付いてるんだもん!!マヤは無敵だもん!!」

 

マヤの走法が変わった、これまでの走りからギアが数段上がったかのように一気に加速し始めた。その走りを見た時に人々が思い浮かべたのはあの伝説のレース、メジロランページの凱旋門賞だった。あの時の走りと同じ、この時を持ったマヤの全身走法は真に迫った。

 

「マズい、これじゃ間に合わない……!?」

「クッソぉぉぉぉやられたぁぁぁ!!!」

 

時既に遅し。マヤが大逃げをしたときに前に出なかったのが間違いだった、3000という距離は逃げきれないと思って自分のペースを守ったのは良かったかもしれないがマヤはその上を行った。淀の直線は短く末脚勝負では追いつけない、マヤは大逃げを打って距離を維持し続け、急坂では更に加速してその差を広げて見せた。

 

「マヤの奴、相当に喰えねぇ戦術してやがる……う~ん俺の大逃げでも此処までじゃなかった気がするぞ」

「しかも菊の3000舞台だからなぁ……考えたとしても普通ならスタミナが切れるのに」

「其処がマヤの上手さだよ、ペース変化は目に見える効果だけじゃなくてスタミナの消耗の防止にもなるから長距離の強さに拍車が掛かってるのさ」

 

『さあマヤノトップガンが先頭で今直線に入りました!!フジキセキジェニュインも必死に足を伸ばすがこれは追いつけないか!!?これはもうセーフティ―――い、いや後方から凄い勢いで来ているウマ娘がいるぞ!!マーベラスサンデー、マーベラスサンデーだ!!最も強いウマ娘が勝つ舞台で最も速いウマ娘がマヤノトップガンへと勝負をかけるぅ!!!』

 

「マーベラァァアアス!!」

「やっぱり来たね!!」

 

マヤは来るとしたら彼女だと分かっていた。彼女の末脚ならば確実に来れる、あの切れ味はフジやジェイン以上だ。彼女ならばこの短い直線でも勝負に来れる、そしてそれに勝つ為の大逃げであり全身走法。

 

『マーベラスサンデーがぐんぐんと伸びて来る、マヤノトップガン必死に逃げる!!これはもう二人の戦いだ、追い詰めるマーベラスサンデーと駆け抜けるマヤノトップガン、何方が勝つんだ!?』

『凄まじい末脚ですわ、これならばあるいは……いえ流石に難しいですわね』

『あと4、いや2バ身!!いや間に合わない、マヤノトップガンが逃げ切ったぁ~!!!マヤノトップガン、一着!!マヤノトップガン遂にクラシック最後の一冠、菊花賞でこれまでの屈辱を晴らして堂々たる勝利を掲げたぁ!!!二着にマーベラスサンデー、三着にフジキセキ!!そして―――こ、このタイムは!?』

 

【3:03.9】

 

『レ、レコードです!!マヤノトップガン、菊花賞の舞台でハククラマ以来となる逃げ切り勝ちでレコードを叩き出しましたぁ!!!秋空に乱れ咲く菊を彩るのは彼女が描く飛行機雲!!マヤノトップガン見事な勝利です!!!』

 

走り終えたマヤは荒い息のまま空を見上げていた、そして徐々に湧き上がってきた勝利の実感は此方へと笑顔を向けて拍手を送る友達(マーベラスサンデー)によって喜びへとなった。

 

「いやったあああああああ!!!!トレーナーちゃん、ランページさん、上ちゃんマヤ、マヤやったよぉぉぉおおお!!!!」

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