選抜レースに出場したライス、見事な走りを見せて結果は1着。其処で多くのトレーナーから声を掛けられた、掛けられたのだが……臆病で気弱なライスは勿論1着でゴール出来た事に喜んだ、2着と4バ身差をつけてのゴールだったが故にトレーナーから多くのラブコールを受けた。が、その殆どのトレーナーが他のトレーナーにライスを取られまいと凄い勢いで迫った為にライスは上手く返答できず、その勢いに怯えてしまい、その場から逃げ出すようにランページの下へと駆け出して言ってしまったのである。
『お、お姉様ぁ~……』
『よしよし、怖かったなぁライス』
と、此処で確りとトレーナーたちが冷静に対応すればまだチャンスもあったのだが……直ぐ傍に南坂もいた事で既にカノープスからのスカウトを受けていたんだ、と勘違いをされたらしくライスに声を掛けるトレーナーが居なくなるという事態が起きてしまったのである。
『……如何するよ南ちゃん』
『こうしましょう。ライスシャワーさん、貴方さえ良ければカノープスに是非、スカウトさせて頂きたいのですが』
『え、えっと……お姉様もいるし、ターボさん達もいるから大丈夫だよね……宜しくお願いします』
「ラ、ライスシャワーです。改めて、よ、よ……宜しくお願いしましゅ!!あぅ~噛んじゃった……」
「やったライスちゃんがチームメイト~!!」
「ふわぁっ!?」
そんな経緯もあって、ライスもカノープスへと入る事になったのであった。ライス的にも姉と慕うランページがいる上にターボやタンホイザと言った友人もいるチームなので安心出来るという材料もあった為か、快くスカウトを受けてくれた。
「カノープスメンバーが増えた~!!ライス宜しく~!!」
「また賑やかになるね、まあそういうのは好きだけどね」
「宜しくお願いしますライスシャワーさん、同じチームメイトとして頑張りましょう」
「う、うん!!宜しくお願いします」
既に気心が知れているが故にライスの表情も明るく、ターボを始めとしたメンバーも距離が近い。気弱な彼女にとって優しく距離の近いチームメイトというのは精神を安定させるものとしては非常に重要な物になるだろう。
「それともう一方、カノープスメンバーをお迎えする事にしました」
「おおっもう一人来るの!?誰誰!?」
「今お外でお待ちいただいております、どうぞお入りください」
外に向けて声を上げると勢いよく扉が開け放たれ、そこから一人のウマ娘が入って来たこれまた元気な声で挨拶を行った。
「ウイニングチケットです、今日からカノープスに入る事になりました。これからお世話になります!!チケゾーって呼んでください!!」
ウイニングチケットだった。彼女も選抜レースに参加しており、ライスとは別のレースで2着ながらも良い走りをしていたので南坂が希望を出していた事も相まってスカウトする事に決定した。
「目標はダービーウマ娘になる事です!!」
「こりゃまたいい目標持った新人が来たねぇ、ネイチャさんも負けていられないかな?」
「ターボも頑張る~!!」
「っつうかお前は好い加減にクラシック走るかティアラにするか決めとけ」
「どっちも走るのは!?」
「死ぬ気かお前」
一瞬でワイワイと賑やかな雰囲気になるカノープスの部室にライスとチケットは顔を見合わせると笑顔を作り合った。
「そう言えばビワハヤヒデとナリタタイシンは如何したんだ?」
「ハヤヒデはリギルに行って受かったって言ってました、んでタイシンはスピカに行って入ったけど脚触れられて脱退しようか悩んでるって」
「あの人は全く……」
「ホント変わらねぇなあのトレーナー」
次世代の三強、BNWの三者が見事に別れてチームへと入っていった。計算が得意で自分のメニューやレースで勝利の方程式を組み立てるハヤヒデは管理主義を掲げるリギル。最後方から一気に全てを撫で切る刀のような鋭い切れ味の末脚を持つタイシンはシービーがいるスピカへ。そしてチケットはこの和気藹々とした楽しげな雰囲気ながらも南坂という凄腕トレーナーが纏めるカノープスへと入った。
「にしてもダービーか……それなら三冠取ったシービーやルドルフの居るスピカとかリギルの方が良かったんじゃねえか?」
「考えなかった訳じゃなかったんですけど、でもなんかこうビビッと来たんですよ。アタシのトゥインクルシリーズを悔いが残らないように走れるチームは此処だって!!」
「ハハッ言われてるぜ南ちゃん、こりゃ責任重大だぁ」
「フフフッそうですね。私も気合を入れて取り組ませて頂きます」
何処か似ている、自分がトレーナーを選んだ理由に。自分のカノープスならば悔いが残らないように走れる、そう言われたらトレーナーとして気合が入らない訳がない。目指すはダービー……これは自分が休めるのは相当先のようだ、暫くは気合を入れてトレーナー業に臨まなければ……。
「それでは早速トレーニングに入りましょうか。ライスシャワーさん」
「はっはい!!」
「貴方は来年のデビューに向けてのメニューを作りますので今日の所は貴方の走りを詳しく見させて頂きますね」
「はっはい、ライス頑張ります!!」
「チケットさんも同じような感じで行きますが大丈夫ですか?」
「全然大丈夫です!!」
気弱だが芯は確りしているライスと元気いっぱいで爛漫なチケット、パッと見は正反対のようだが実際は極めてよく似ている二人。トレーナーとしてはこの二人がどんな素質を持っているのかを早く確かめたくなっている。
「それではランページさんはライスさんと、イクノさんはチケットさんと併走してください」
「ターボ達は?」
「ターボさん達はデビューも近いですし本格的なメニューを組みます。タンホイザさんは此方に回って下さい」
「は~い分かりましたぁ!」
新メンバーも入ってカノープスは益々発展しようとしている、学園最強カノープスと名乗れる日も遠くないかもしれないなと自分らしくも無い何処か野心的な事を思いながらも彼女たちと共にターフへと向かっていく。
「さぁ張り切って行こうぜ、新メンバー入ったんだから夕飯はどっか喰いに行こうぜ」
「あっそれいいね~ネイチャさん最近美味しいオムライスを出すお店見つけたんだよね~」
「オムライス!?ターボ食べたい!!」
「良いですねオムライス」
「オムライスかぁ~今からお腹減ってきた~!!」
「チケットちゃんってば元気いっぱいだね」
「んじゃそこ行こうぜ、南ちゃんも。安心しな俺が奢ってやるから」
「それじゃあ、御随伴させて頂きますね」
という訳でライスとチケゾーがカノープス入り。そしてハヤヒデはリギル、タイシンはスピカへ……BNW時代は三チームが争う時代と化す。