貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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550話

メジロランページとアグネスフローラの関係性は極めて不思議だと世間は言う。一方は勝者で一方は敗者、ライバル関係でありながらも互いは全く対等ではない筈なのに対等な関係、日本が誇る凱旋門ウマ娘、そんな二人のウマ娘の関係は本当に不思議だ。フローラはランページに異常な程の執着を見せる一方でランページはそれを迷惑がっているのにも拘らず、決定的な邪険まではしない。この関係は互いが競い合い続けた故に生まれた関係なのだ、分からない者が多くとも無理はない。そんな二人が隣り合いながら話し合う、誠、異様な光景だと言わざるを得ない。

 

「ランページさん、貴方……幸せになるんですね」

「なんだ藪から棒に」

「隠さなくても良いじゃないですが、私には貴方の全てがわかるんですから」

「……」

「あの、シンプルに無言で距離取らないでもらえます……?」

 

トレセン学園の談話室を借りて二人で話す、こうして話す事はなかったなと思いながらもランページは早速フローラから距離を取る。

 

「いやだってさ、お前どうやって知り得る筈もない情報を仕入れて来るんだよ。お前専属の情報屋でもいんのかよ」

「いる訳ないじゃないですか、何をバカな事を……貴方の事ならば手に取るようにわかるだけです……昨日からどれだけ体重が減ったのか、身体の調子まで―――♡」

「キモ」

「キモくないですって!!?体重に関しては足音から計算しただけです!!私ランページさんに踏まれてるんですからそこから逆算してるんですよ!!」

「いや十分に、キモい」

 

理屈は分かる、いや分からない。足音から相手が人間かウマ娘か程度ならば分かるかもしれないが……体重の変化なんて絶対に分からない。幾ら聴力に優れているウマ娘と言えど。

 

「ええい理屈なんてどうでもいいんですよ!!私が言いたいのですね……ランページさん、ご結婚おめでとうございます、心からお慶び申し上げます。どうかお幸せな家庭を築いてください」

 

心を込めて頭を下げたフローラ、本当にこいつは何でこの事を知っているんだと言いたくなる。だが心を込めた祝福を足蹴にするなんて無礼極まりない野暮な事をする訳にもいかない。

 

「ああ、有難う。式はまだ何時するか未定だが招待状は送らせて貰う―――タキオンに」

「でええええええ!!!?そこは私じゃないんですか!!?」

「タキオンの付き添いでくればいいだろ」

「いや私自身へは!?」

「送るに決まってんだろ何言ってんだ」

「可・笑・し・い!!私の、扱い~!!!」

 

猛抗議のフローラだがその表情は膨れっ面の可愛らしいものでランページもどうにも嫌悪感は湧かずに笑いを浮かべるのであった。

 

「でもなんか、意外でした。私はてっきりランページさんが結婚するなんて、ああいやする事じゃなくてこのタイミングというか、良くする決断したなぁって」

「もうそれをどうやって知ったかはツッコまんから、単純な話だ、家族を作りたいんだよ俺は」

「家族ってメジロ家の皆さんは家族じゃないと?」

「そう言う事じゃねぇよ、俺は元々あったメジロ家に後から入った。つまり既に完成されていた所に俺という異物が入っていった。受け入れてくれたお婆様や連れて行ってくれたライアンには感謝してる……だけど、俺は―――家庭を築きたいって思ったんだ」

 

ファン感謝祭やサイン会で自分のサインを求める人々と触れ合うごとにそれは増えて行った。将来立派なウマ娘になりたいという子供を連れて来る親子や妹を連れてやって来る人、それらを見て、自分もああいう家族を作りたいと思った。そんな思いは、未来の子供達を見て加速した。

 

「お前には俺の昔語った事ないから分からないよな」

「いえ、分かりますよ」

 

其処には涙を流しているフローラが居た、それは願う涙ではない悲しみに暮れて心の底から心を痛めている心痛の涙だ。

 

「お辛い、経験をしたんですね……私にはその辛さを推し量る事なんて絶対に出来ません……ですから、その悲しみを振り払って幸せを築いてください」

「……ああ、そのつもりだよ」

 

この時ばかりはランページは普段から敬遠している事を完全に切り離し、友人として、最高のライバルとしてフローラを抱きしめた。

 

「お前もこれから頑張れよ、もしかしたら俺の娘のトレーナーにお前がなったりしてな。そん時は変な事すんじゃねえぞ」

「フフフッどうでしょうね……案外私も結婚して子供のトレーナーしてるかもしれませんよ」

「お前が結婚出来るのか?俺以上に難しいだろ」

「まあ見ててくださいよ、私こう見えても良家のお嬢様なんですから縁談ぐらい……ありますよ、ええ多分、いえ絶対にありますって……うん」

「お前、今現役時代のあれこれ思い出して一気に不安になったろ」

「……ランページさん南坂さんを私にください!!」

「ほざきやがれ南ちゃんは俺の宰相だぞ」

「何よ偉そうに」

「偉いもん」

 

そんな軽口の応酬が終わると二人は離れた。フローラは少し名残惜しそうだったが素直に離れた。

 

「お前とこんな風に話すとはな……トレーナーになったら祝いに奢ってやるよ」

「それはまた楽しみが増えましたねぇ……いやぁそれにしてもランページさんの身体の感触の何と甘美な事で……ああっ鼻血出そう……」

「……お前、それでマジで結婚する気あんのか?」

「いやありますから!?勝手にそっちにしないでくれますか、私はランページさんを愛してますけどその愛は神とかに捧げるそれと同じですから!!」

 

三女神が実在する世界にそんな事を言っていいのだろうか、怒られないだろうか……。

 

『大丈夫だよ子羊君、君は既に世界中で信仰されているに等しい状態さ。何れこちら側に上がってしまうかもしれねぇ』

「うぉい今とんでもねぇ事言いやがったな駄女神ぃ!?」

「な、何ですか突然!?誰がCV駄女神ですか!!?」

 

この日からランページのフローラの扱いが微妙にマシになった、と言われている。本当に微妙にだが……。

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