貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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553話

「う~ん……」

 

思わず頭をぐしゃぐしゃと掻き毟るように掻いてしまう。頭を悩ませているのはマヤのこれからのレース日程。史実のマヤノトップガンは此処から年末までは何のレースに出ていない、有記念に向けて充電しているという事だが……本当にそれでいいのだろうかという思いも強い。菊は確かに取った、だがそれだけで終わらせるべきではないと思っている。

 

「ジャパンカップ……」

 

何もエリザベス女王杯を経由させるなんて事はさせない、あれは自分やイクノだから出来たバカなのだからマヤにさせる訳にはいかない。正直勝てるとは思わないが、本番前にその身で改めてブライアンらの強さをその身に刻むというのも悪くないとさえ思っている。

 

「上ちゃん、如何思う?」

「如何思うって言われてもなぁ……リスキーな選択肢と言わざるを得ないさ。何せジャパンカップへと向けての出走希望は多い、海外からの強豪は確実に来ると言っても良い」

「大丈夫だろ、奴さんらの目的はファイナルズかレジェンドなんだから」

「いやまあそれがあるから分散してるとも言えなくはないんだけどさ」

 

正直な話をすれば海外からの視線が向けられているのは何方かと言えばファイナルズとレジェンドレース、トゥインクルシリーズに挑む者がいない訳ではないが何方かと言えば少ない方。

 

「実際問題、俺はマヤをこれに出しても良いと思ってる。あいつは文字通りの天才だ、世界のレベルの高さって奴をその身で感じるいい機会だしブライアンとローレルとも走らせるべきだ」

「あの二人とかぁ……ぶっちゃけ勝てると思う?」

「大負けで2割って所だ」

「2割もあるのを褒めるべきなのか、8割で勝つあの二人に絶望するべきなのか……」

「言ってる場合じゃねぇぜ、実際天秋を見に行ってる二人次第でそれは変わる」

 

チームという利点を生かして、自分と上水流でチームの仕事をしつつ坂原にはマヤと一緒に天皇賞(秋)を見に行って貰っている。その結果とマヤの感想次第で出走スケジュールは調整しなければいけなくなる。

 

「エアグルーヴの次走だって迫ってるのに、そっちに集中しなくても良いのかい?」

「あっちは心配いらねぇもん」

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「だけど、先頭の景色は譲らないわ!!」

 

エアグルーヴは次走に京都ジュニアステークス、そしてその後はいよいよ初のG1である阪神ジュベナイルフィリーズを控えている。チームプレアデスのこれからを占うという意味でも重要なレースが続く。

 

「エアグルーヴ is fast!!スズカファイト~!!」

「スズカさ~ん頑張ってください~!!」

「どっちもファイトで~ス!!」

 

スズカを相手に模擬レースを行っているエアグルーヴ、彼女のモチベーションは全く以て心配いらないし体調も問題なしと来ている。此方としては有難い物だ……まあその一方で本当にフローラに走りが似てきている事が微妙に頭痛のタネになりつつあるのだが……彼女の為にもこれは我慢するとしよう……。

 

「エアエア、次はステゴとサニー相手だ。ステゴ、勝てるなら勝っていいぞ、サニーお前は今の自分を確かめてみな」

「分かりました~!!それじゃあエアグルーヴ先輩宜しひぃっ!!?」

「応、テメェを潰す許可が出たぜ。重賞勝った程度で調子に乗ってんじゃねぇだろうなぁ先輩よぉ?勝てるならじゃねえ、勝つそれだけなんだよ」

「ハッそれは貴様だろう。デビューもしていない世間知らずの愚か者めが、身の程知らずを貴様の身体の奥底まで叩き込んでくれよう」

 

激しい火花を散らしているエアグルーヴとステゴ、この二人の犬猿の仲は相変わらずだ。これにサニーを巻き込んでしまったのは少し申し訳なかったかもしれないが、この二人に対していい結果を出せればいい指標になるから頑張って欲しい所だ。と思っている所に電話が掛かってきた。

 

「んっもしもしひねもす」

『僕だよランページ、坂原だけど今大丈夫かい?』

「ええ大丈夫ですけど如何しました」

『今、レースが終わった。天皇賞(秋)を勝ったのは―――サクラローレルだ。2着にマチカネタンホイザ、3着にナイスネイチャ、ブライアンが4着だ』

「ローレルが取って、ブライアンが4着か」

『ええ、意外な結末だったよ』

 

ローレルがなんと大逃げを打ったのだ。しかもペースを巧みに変更しつつ、他のウマ娘のコースを誘導した上で差しの位置を取っていたブライアンを上手く群れの中に閉じ込めた。そのまま駆け抜けていくローレルだが、ネイチャとタンホイザは大逃げに慣れていると言わんばかりに追い上げを見せていった。ラストの直線で漸く前が開いたブライアンは此処で全力でアクセルを踏んだ、それで10番手から一気に駆け上がった末脚は末恐ろしかった。4着というが、実際はネイチャとの差はクビ差でしかなかった。

 

『あの走り方は凱旋門の時のそれに近いね、それを上手くアレンジしている』

「寧ろタンホイザとネイチャは流石だな……ブライアンもスゲェけどローレルの見事な作戦勝ちだな。それで?」

『それを見てマヤがね、ジャパンカップに出たいって言うんだ。あの二人と戦いたいって』

「―――やっぱそう来たか……坂原さんは如何思う?」

『いいと思うよ、それに―――マヤなら勝機は十分あるいや勝てるさ』

 

その自信たっぷりの言葉に思わず笑ってしまった。これでは自分の言葉がまるで自信がないみたいじゃないか……良いだろう、それなら思いっきりやってやろうじゃないか。対全身走法をマヤに叩き込んでやろうじゃないか。

 

「うし分かった、んじゃマヤに伝えてくれ―――……勝ちに行くぞって」

『アイコピー』

 

携帯をしまいながらもランページは羽織っていたスーツの上着を脱ぎ捨てると口角を持ち上げながら言った。

 

「面白くなってきたなぁ……遂に最強ブライアンに挑む時か!!」

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