貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

554 / 634
活動報告に新しいお知らせを掲載いたしました。

ご興味があるから下記のURLからどうぞ。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=317456&uid=11127


554話

『さあ間もなく京都ジュニアステークス出走します、各ウマ娘がゲートへと向かって行きます。矢張り今回注目はクラシックの一冠を奪取したプレアデス所属のエアグルーヴ、今回圧倒的な1番人気であります!!』

 

京都ジュニアステークス。G3の重賞レースに挑むエアグルーヴは周囲からのプレッシャーを感じつつも己は唯々真っ直ぐと前を見つめていた。そして先程ランページと話した内容が脳裏を過っていた。

 

 

―――エアエア、何度か言ったかもしれないが敢えてこの場でも言おう。レースは生き物だ。

 

レース前の控室、準備をしている自分にランページは真剣だが何処かリラックスしているような様子だった。重賞に望むウマ娘のトレーナーとは思えぬ程に気楽なポーズをしながら語りかける。

 

「極めて流動的で変化し続ける生き物だ、その生き物の全てを決めるのはレースを走るそれぞれ主義や思想、あらゆるものが異なっているウマ娘が織りなすからだ。レースに挑むウマ娘に決まったものはないが決まっている物もある、それは何だと思う?」

「……戦法、ですか?」

「それも正解だ。だがこの場合は違う、それは流れに対するスタンスだ」

 

自分のレース経験からもそれは伺い知れた、レースという生き物への思想や動きが。先頭に立ち続けたが故だろう。

 

「流れその物を作る、流れの中に入り最後に自分の流れで抜け出そうとする、流れに逆らわずに利用する、流れの外からそれ自体を見極める、流れなんざぁ知るかと自分勝手に走る俺、まあ色々いたもんだな。これらを完璧に律したり感じ取れとは言わない、だがそれら全てを把握してその上で最適解を導き出すハヤヒデや周囲を己の感性だけで感じ取って最適解を無意識に選択するブライアンだっている。流れとはレースにおける極意の一つだ」

「流れ……」

「お前の走りによく似ているフローラの場合は最終的に全てを飲み込んでしまう渦だ、余りにも強い流れだがこれは使いようによってはより強い流れに利用できる」

「―――成程、私を利用する者もいる、と?」

「いるだろうな。お前さんのこれまでの走りを鑑みれば……いい加減マークもきつくなってくる頃合だ、だがそれを切り抜けないようじゃトリプルティアラは愚かG1も夢のまた夢だ、エアグルーヴ、今回は試金石だ。エアグルーヴ、狩って来い」

「はい!!」

 

 

「(そうだ、このレースでの苦戦など論外だ。私に課せられているのは―――圧勝だ、完膚なきまでの圧勝、文句など付けられない圧勝)」

 

『さあスタートしました!!おっと4番ワイバーンレイディ、8番ゲンジツダッシュがスタートで躓いてしまいました、何とか立て直して走りだしますが全体的にスタートが乱れおります!!そんな中で4枠5番のエアグルーヴが良いスタートを切って先頭に立ちました!!』

 

エアグルーヴの走りは海外の流れを汲んで実力とプレッシャーで相手を押し潰しに掛かるフローラのそれに近い物、サンデーとフローラの扱きで本気の殺気やらを体験した結果それらを体得してしまった。それらをデバフに慣れてないものにやればそうもなる、だが

 

『タキノフラッシュがエアグルーヴを追って2バ身差、タニノエトワールも迫ります。エアグルーヴは逃げる逃げる、かなりのペースで飛ばしておりますがこれは矢張りマヤノトップガンに倣っての逃げ戦法という訳でしょうか?』

『恐らくそうでしょうね、菊花賞を制した先輩に倣っているのかもしれませんがあれはマヤノトップガンだからこそできた事ですから彼女にそれが出来るかどうかは分かりません。悪手にもなりかねませんので結構紙一重ですね』

 

自分の威嚇を利用して邪魔な群れが起きる事もなく、絶好のポジションを取っている両者。成程これが流れの利用なのだろう、この二人は先行、本来は自分と同じ筈だがこのペースでは持たず、必ず一息を入れると踏んでスリップストリームで体力を温存しつつ、と言った所だろう。

 

「いいだろう、その気があるなら着いて来ると、いい!!」

 

エアグルーヴは特に気にする事もなく走り続ける、背後に走者がいれば嫌でも気になるがこの辺りはランページにも、サンデーやフローラにも徹底的に扱かれた。背後に付かれた程度で意識する事はない、そこにいる事さえ理解していればいいのだ。

 

「(速い……でもついて行けないレベルじゃない……!!)」

「(そのペースで潰れてしまえばこっちのもんよ……!!)」

 

エアグルーヴの走りのペースは明らかに飛ばし過ぎに見えているだろう、この先の淀の急坂では必ずペースを落とすと二人は踏んでいる、そこで抜き返す。そして減速からの加速は最も体力を使うのだから此処まで飛ばしているエアグルーヴが抜き返せる訳がないと踏んでいる。

 

『さあ先頭が淀の急坂を登りに掛かるが、此処でエアグルーヴが抜け出していくいやこれはスピードが落ちてない分タキノフラッシュとタニノエトワールを突き放しているというべきでしょうか!?これがメジロランページの直系とでも言うべきなのか、彼女の陣営のウマ娘は坂に強いのか!?』

 

坂路はプレアデス全員が走らされている、それどころか最終的に走っていたのは山道だ。ジョギングレベルではあったが、自然が作り出す坂道を走った経験は何よりも強い。それに比べて滑らかで走りやすいコースの坂は御し易い。

 

『さあ坂を下っていくがここでも速度が変わらない!!これは驚異的なペース管理!!ああとタニノエトワールとタキノフラッシュ、此処で加速し始めました!!ですがこれは、矢張り外側に膨らんでいる!!エアグルーヴはウチを突いていく!!さあ直線に入った、エアグルーヴが先頭、此処で猛スパートを掛けていく!!まだまだ脚を残していたのか!!?ぐんぐんと突き放していきます!!これはもう決まってしまった!!エアグルーヴ完全にセーフティリードを確保してそのままゴールイン!!エアグルーヴ圧勝!!二着以下に大差をつけて4戦4勝!!重賞3連勝~!!!』

 

「フゥッ……よし、ペースを守れたな」

 

ペースを常に一定に保ち続けたエアグルーヴに疲労の色は薄い、何だったらこのままもう1レースを走り切ってしまいそうなほどに元気な姿に他のウマ娘達は愕然としていた。最初から彼女の術中にいたのだ、自分達の勝利など最初からなかったかのように。

 

「上出来だな。マイペースで居続ける、これも立派な才能だ。しっかし開幕のデバフはきつかっただろうなぁ周り……慣れてないと尚の事。まあいい教訓にしてくれよ、日本はどんどん注目されるんだからな」

 

そう思いながらもスマホである記事を見る、そこには―――

 

『ビワハヤヒデ、ライスシャワーを破ってメルボルンカップ覇者へ。日本ウマ娘が3連覇』

 

全身で喜びを表してガッツポーズをとっているビワハヤヒデとそれを祝福するように拍手をしているライスと此方も歓喜している東条トレーナー、そして共に喜んでいるパーマーと山田トレーナーの姿がそこにあった。

 

「さてと……俺は今年如何するかな」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。