貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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555話

メルボルンカップ、ビワハヤヒデ制覇。ライスとの接戦の末にラスト50mで1バ身の差をつけて堂々たる勝利を見せ付けた。無敗の三冠たる妹と比較され、時には記事にされないといった事もあったが遂に自らの力を見つけ、メルボルンカップ日本ウマ娘三連覇という大偉業の立役者ともなったビワハヤヒデ。もう彼女を妹に劣る姉という目で見る者はいない。

 

『私は、私はこの場に立ててこの上なく嬉しいです。私の為に此処まで着いて来てくれましたトレーナーであるおハナさん、私にも惜しむ事なくアドバイスを送って最高の走りの後押しをしてくれたパーマーさん、私を王者として真っ向から迎え撃ってくれたライスさん、そして私を一瞬足りとも侮る事もなくプライドと誠意を以て迎えてくださいましたオーストラリアの皆さんに感謝します。私は―――オーストラリアに、メルボルンカップで走れて幸せです!!』

 

いつも冷静なハヤヒデが涙交じりに語った言葉、此処までいわれて嬉しくないものはない。その言葉を受けて今度こそメルボルンカップを制覇したいと望む者、今度は日本で走りたいと望む者と様々な反応が見られた。

 

『レディセイバー、レディセイバー先頭いやアメイジングダイナ、アメイジングダイナ!!アメイジングダイナァァァァア!!!!BCクラシックを征したのはアメイジングダイナ!!BCクラシックの栄冠をその手にしましたぁぁぁ!!!』

 

メルボルンカップの前、日本はBCでもその力を発揮している。ダートの重鎮とも言われるようになっているレディセイバーとアメイジングダイナは再びアメリカへと遠征、そこでBCクラシックでアメイジングダイナがレディセイバーを下して1位となった。アメリカでもその強さを発揮し続ける日本ウマ娘達、その勝利はイージーゴアが推進しているUSAURAファイナルズ設立へと大きな推進剤となるのだが当人たちはその事を気にする事もなく歓喜を味わっていた。

 

『後はランページさんに勝つだけですね、ダートのレジェンドレースに出てくれないかなあの人』

 

BCクラシックの勝利よりもこれで漸く心残りをあと一つに出来た事へのコメントを述べられてアメリカのマスコミは如何すればいいか困った事だろう。実際、問題ランページは今年も参加してくれるのかという問題もある。今年からトレーナー業は年末も忙しくなり出すのでレジェンドレースへの参加も難しくなってきたとされている。

 

『それでも待ちますよ、何時か勝てるその時をね。ねっレディ』

『ええ、その時まで精々研磨をし続けますよ』

 

ランページの活躍が起爆剤となって益々躍進が止まらない日本ウマ娘、これからもその活躍に誰もが胸を躍らせ続ける事だろう。そんな中心人物にいる筈のランページはというと……

 

 

「ハァハァハァ……如何したブライアン、テメェその程度か。もうちっと気合入れて走れ」

「くそっ……もう一回だ!!」

 

リギルの代理トレーナーであるフローラの依頼を受けてブライアンと走り続けていた。ブライアンはこの頃成績が落ちている、というよりもこれまでが圧倒的過ぎただけでライバル達が成長してきている上にライバル達にも時の運が巡ってきたが故の結果だとランページは思っている。別に彼女の走りは全く劣化していないし進化している。

 

「応フローラ、テメェも走れ」

「えっ?いやいやいや私トレーナー……」

「近くでブライアンの走りを見れるだろ、俺だってそうしてんだテメェだってそうしろ」

「全く強引な人だなぁ……―――負けても知りませんよ」

「負かしてみろ」

 

不敵な笑みのランページに応えるようにフローラは纏っていたスーツを肩口から一気に脱ぎ捨てた。その下には彼女の勝負服があった、なんだかんだで彼女とて走れるチャンスがあったら走る気満々だったのだ。ランページから勝負服を着ていながら笑わせるなと言いたい。

 

「ブライアンちゃん、これから私も加わるから。ハッキリ言っとくよ―――気合入れ直しなさい、死にたく(壊れたく)なかったらね」

「っ―――!!」

 

ブライアンは現状リギルのメンバーの中で最もフローラへの敬意を持っていると言っても過言ではない。他のメンバーが普段が余りにもあんまりなのでいまいち尊敬しきれない……だがブライアンは凱旋門だけではなく数年間海外で戦い続けたフローラの事を信頼しているし信用している、姉程ではないが、序列で言えばビワハヤヒデ>おハナさん=ランページ>フローラと言った関係にある。だがそんなブライアンでも目の前のフローラの覇気を感じて本当にあの人なのかと疑いたくなってしまったのだ。

 

「―――……望む所だ、ローレルと約束したんだ。来年、共に凱旋門へ挑むと!!」

「ほう?」「へぇっ?」

 

その言葉に思わず二人の口角が持ち上がった。ローレルは果たせなかった制覇への夢を果たす為のリベンジ、ブライアンは友との決着を世界最高峰の地でつけるためだろうか、何方にしろ心が躍ることを言ってくれるじゃないか。フローラからすればランページと走ってみたかった舞台での決着を望むなんてロマンを、ランページからすればあの舞台へウマ娘を送り出せる事への喜びが生まれて来ていた。

 

「―――いいだろう、凱旋門走るつもりでやるか」

「―――コースはどうしようも無いですけど気持ちだけは何とかなりますからね」

「コースの方はそのうち俺の方で何とかしてやる、俺の名前で海外遠征前提練習場を作ってる」

「お金ありますね~」

「URAに作らせてる、ウ~ちゃんも乗り気だからな」

 

日本ウマ娘の躍進に更なる一手を、まあ今はそれについては如何でもいい。取り合えず今は早く走りたくてしょうがないのだ。さあやろうじゃないか……!!スタート位置へと歩みを進め始める三人を見てリギルのメンバーは思わず腰を抜かしてしまう者が多数だった。フローラの雰囲気のギャップに驚いているのが大半だが、それ以上にランページもそれを超える程の覇気を放っている。よくもブライアンがあそこで大丈夫なものだと思える程。

 

「あれが、本当の先輩……そうだ、あれこそ私が憧れた先輩なんだ……!!」

 

その光景を見て涙を流すほどに喜んでいたウマ娘もいた、グラスワンダーだ。グラスはフローラに憧れていた、だがフローラからその牙が抜けてしまったと思っていた……だがそれは誤りだった。あの人の牙はまだ抜ける所か、衰えてすらいなかったのだから……。

 

「後で、謝らないとね……これまでの非礼を」

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