貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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569話

「よっブルボン久しぶり」

「ランページ、お久しぶりです。あなたほどではありませんが私も海外で勝ってきました」

「何なら俺よりすげぇよ、長い間ご苦労さん」

 

帰国したブルボンを出迎えるランページ、ブルボンもブルボンで何処か大人っぽくなった雰囲気を纏っており、ランページの手をしっかりと握り返してきた。その時に伝わってくるブルボンの力、精神性……本当に強くなっているんだなと思う。

 

「黒沼のオジキもお勤めご苦労様でした!!」

「だからやめろそれ、まあそうだな……俺もブルボンを漸く一流にしてやれたと思うな」

 

黒沼もチームを率いる身なので常にブルボンと一緒にいた訳ではないが、G1に挑戦する時は応援する為に直々に向っている。故か、日本のトレセンには極道、ヤクザがいると一部界隈では賑わっている。

 

「にしても香港ヴァース制してからそのまま出走するとか、マジでスゲェ事考えるな。まあオジキの言う事なんだから脚は問題ないんだよな、じゃなきゃ言う訳がない」

「ああ、ブルボンの脚は全く以て問題ない行ける。精密検査を受けさせたが疲労が溜まっている様子もなければ骨や筋肉にも問題ないから医者もビックリしてたぞ」

「この海外での経験が私を強くしてくれました、今の状態こそが全盛期です」

 

胸を張って告げるブルボン、お前は本当にフローラかと言いたくなる程に強くなっている。が海外でのブルボンは常に警戒されていた、フローラという前例がある以上、ベテランの域にあるシニアウマ娘であろうとも負ける可能性はあるのだと全員が思っていたとの事。その予想通りにブルボンは力を発揮し続け、今年に入ってG1を3勝してみせた。

 

「マスターには御心配もおかけしたかと思いますが、私はマスターの元であったからこそ強くなれました。本当に有難う御座います」

「止せブルボン、お前の力だ」

「いえマスターの元で強くなれたのです」

「……そうか」

 

少しだけ照れる黒沼と明るい顔のブルボン。やっぱりいいコンビだなぁと思っているとブルボンから話を振られた。

 

「ランページ、今年のレジェンドレースは如何するんですか?」

「あっ俺?いやマヤも有記念に出るからそっちでも結構大変でな、レジェンドレースに俺は出るつもりは―――」

「出れますよランページなら」

 

ないと言おうとした自分の言葉を邪魔して先んじて出たブルボンの言葉に驚かされた。一体何を言っているのか……出れたら苦労はしないしそれだったら錆取りは一体何なんだったのかという事になるし……

 

「私が今、手を握った際に感じたのは全盛期と遜色ない貴方でした。錆取りというのもあくまで精神の物でしょう、貴方は自分で走るトレーナーですから衰えという物とは程遠い。精神的にも貴方は強くなっている」

 

ブルボンの言葉は三女神に言われた事にも合致する。レース後に倒れたのは引退してソウルが落ち着いたのに無理矢理現役時代に戻したからだと。だが……今は違うのだろうか。

 

「マスター、私も日本の芝に適応し直さないといけません。ランページとの併走をお願いしたいのですがいかがでしょうか」

「良い案だ、ランページお前予定は?」

「あっいや大丈夫だけど……」

「なら決まりだな」

 

そう言われて流されるがままにトレセン学園のコースへと脚を進めていくが……自分は本当にあの時みたいに走れるのか……?と思うが走りたいという欲求が増していく、魂が欲している、本気の走りを……また走っていいのだろうか。

 

「準備は」

「ああ、いいぞ」

 

準備も終えてターフに立つと周辺には自分とブルボンの模擬レースを一目見ようと多くの生徒達が集まっていた。生徒だけではなくトレーナー達も集まっている。

 

「距離は?」

「2400で」

「分かった」

 

『子羊君、君無茶し過ぎだよ。以前も言っただろう引退して君の魂は落ち着いている、それを此方で調整したのにそれを自分で大きくしてバランスを崩したら心身に多大な影響があって当然だよ?お陰で此方は酷く焦ったよ、あのまま放置してたら下手したら君植物状態だったよ』

 

当時受けた三女神の言葉を思い出す。この言葉故にガチの走りは抑えていたのだが……逆に言えば今はちゃんと魂が調整されている状態でもある……筈だ。

 

「―――ブルボン、逃げで俺に勝つ気かい」

「いえ、私の目的は芝に慣れる事です。ですがやるならば勝ちます」

「言うねぇ……上等だよ」

 

今年の予定も有で終わる、なので年末は暇が出来るから出ようと思えば出れる範囲、来年からは本格的にプレアデスがデビューラッシュに入る。走るには本当に今年が最後のチャンス……見送ろうと思っていたが―――やれるなら自分は出てやろう。

 

「んじゃオジキ」

「応、それじゃあ行くぞ」

 

刹那、自分だけの世界へと入る。イメージするのはゲート内、周辺を鉄の壁で囲われた状態をイメージする。閉塞感が自分を取り囲む、スタートのゲートが開く音を静かに待つ。重心を下げる、力を込めて解放の時を待つ。

 

「っ……お姉様」

「なんだ、まだああいう顔出来るんじゃん」

「やっぱランはああいうのが似合うよね~」

「うんうん!!」

「今年も走れそうで何よりです」

 

カノープスの面々はランのあの姿を見て懐かしさと共に安堵を覚えた。またあの雰囲気のランページを見れた事が嬉しくてしょうがない。

 

「スタート!!」

 

その言葉と同時に開かれるゲートに突進するかのように駆け出す、ブルボンすら超えるスタートダッシュを決めてハナを取った。そのままの勢いで第一コーナーを最短距離で駆け抜けていく。

 

「ほらっ貴方は走れます」

 

ブルボンの声が聞こえる、そうか自分はまだ走れるのか……なら走るまでだ、走ってやろうじゃないか……!!望まれるがままに、自分が望むままに暴れ狂ってやろうじゃないか!!まだまだ拡大を見せるURAファイナルズとレジェンドレース、今年からは長距離3000が追加され、ダートは2000と1600そして1200へと変更追加になる。それを盛り上げるための一助になろうじゃないか。

 

「気持ちいいなぁ……走るのは……!!」

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