「おやマヤ如何したもう終わりか!?」
「まだまだまだぁ!!マヤは此処からだもん~!」
「その意気だ、さあ来いっ!!」
2500の有馬記念、3000を走り切っているマヤならば走れない距離などではない。がレースが行われるのは京都ではなく中山レース場、レース場の違いによって勝てた距離よりも短くても長くても負ける事など多々ある事。
中山レース場の場合、スタートから直ぐにカーブに差し掛かる為枠順も重要となるし作戦によっては此処でスタートダッシュを決めなければ辛い展開になる。一度目の急坂、そしてそこから平地だが、勝負はラスト、特に高低差2.2mの急坂がラストに控えている。
「中山の2500は下手すれば3000mよりもキツイとも言われてる、ラストには心臓破りの坂が待ってるしそこを登り切るパワーも要求される」
「スタミナとパワーが要求されるコース、ですね……それをワールドレコードで駆け抜ける我らが暴君は何なんですかね?」
「我ら?君じゃなくて」
「……やめてください」
坂原のからかいを受けつつも上水流は初の有馬記念に誰よりも緊張していた。坂原も勝った事はないが掲示板入りは経験した事はある程度には出走を担当しているので自然体でいる、自分だけが強張っているような感覚があるのか上水流は情けなく思ってしまった。
「俺だけ、役に立ててないみたいな……」
「そんな事はないさ、ほらっ」
坂原が視線を誘導する先には必死に腿をあげながらのハードル越えを続けているタイキとサニーの姿がある。その横ではハイリバースプランクに取り組んでいる為か、かなり必死な形相のエルの姿がある。
「ヌゥゥゥゥッ!!YEAH私の勝ちでーす!!!」
「また負けたぁぁ……!!なんでタイキそんなに速いの~!?」
「分りませ~ン」
「もう一回!!」
「こ、今度はエルも入れてくだ、さい~……!!か、上ちゃんトレーナーイイですヨネ!?」
「あっうん、いいよ」
「これで、終わりデース!!」
彼女らは上水流がメニューを考えている面々、勿論彼だけではないが上水流が中心になって考えた物だ。それを直向きに、真面目に取り組む彼女らの姿は何処か救われる気分になる。
「君の番はまだ先だよ、その前にあの舞台を見れる……幸運だと思えばいいよ。僕もそうだったからね、僕の時は六平さんのサブトレーナーだったから」
「そうなのか……まあ言われてみればそうか……こういう時はチームのサブトレーナーって言うのに感謝するべきなのかもしれませんね」
「その調子」
少しだけ気楽な気持ちでタイキ達の元へと向かって行く上水流を見送り、坂原は2500を走り切ったランページとマヤの元へドリンクを持って行く。
「如何だいマヤ、これが2500さ」
「何とかなる気はするけど、此処とは違うんだもんね……う~ん大丈夫かな?」
3000mを大逃げ出来るマヤにとっては2500を走り切る事自体は容易い、だが中山でそれが可能かと言われたマヤも分からなかった。同じ舞台の皐月賞では4着、加えてパワーが重要とされる中山は小柄なマヤにとっては不利な場とも言える。京都レース場のゆっくり登るが許されず、最後の短い310mの直線、ラスト1ハロンに聳える急坂を一気に駆け上がっていくことが求められる。
「ゆ~え~に~マヤ、君にはこれをプレゼント♡」
「え~何々~?えっなにこれ」
明るく可愛い声で小箱を開けながらをマヤへと見せる。がそこにあったのは……新しい蹄鉄とマスクだった。マヤが目を白黒させていると坂原がそれを見てうわっ、と声を上げてしまった。
「えっ何々、これなんなの?」
「一方は新しいシンザン鉄だ。マヤ専用だ、因みに6倍な。それでこのマスクを着けたままで坂路を走って貰う」
「えっ―――エエエエッ!!?」
同室がテイオーだからテイオーのような声を上げてしまったマヤ、坂原は遂にその段階に来たかぁ……と苦笑いを浮かべてしまった。
「これは俺もやってた奴だ」
「えっランページさんも!?」
「応、マスクを状態で坂路を走る。つまり心肺強化トレーニングだ、同時に中山の急坂の対策を同時に行うって訳だ」
「う、うわぁっ……た、試しに一周してきていい?」
「いいよ」
軽くOKを出しながら坂原に蹄鉄を付けて貰ってからマスクを装着し走り出すマヤ、それを見守るトレーナー二人だが、一方は呆れたような目で一方を見つめていた。
「本当にあんな練習してたんだね……南坂君もよくやるよ」
「南ちゃんは普通に外道で畜生だぞ、御綺麗な面でしたな。無事是名ウマ娘とか言いながら凄いスケジュールでレース走らせるぐらいには畜生だよ、しかもチームメンバーと同じ奴」
「成程、プレアデスの原型だ」
最初こそ調子よく走っていくマヤだが途中から明らかにフォームが崩れていく、マスクによって低酸素を強要される為に息苦しくなった所にシンザン鉄の重さを実感してフォームが崩れる。だがシンザン鉄を最も楽に使う事は正しいフォームで走る事、なので姿勢を正そうとするが呼吸が辛い。それが堂々巡りになりそうになる中で一周走って来たマヤは思わず膝をついてしまった。そしてマスクをはぎ取って深呼吸する。
「キッツぅぅぅ~い!!!ランページさん本当にこれできるの!?マヤ信じられないよ~!!」
「出来るできる、つまり俺に出来る=マヤにも出来る。何なら併走するか?マスク濡らして」
「濡らすの!!?」
平然とドリンクでマスクを濡らして装着、蹄鉄は既に10倍なので問題はない。マヤに立つように促して隣に立つが、マヤは未だに信じられないと言いたげな顔をするが真剣な顔になって構える。
「んじゃ坂原さんついでにタイムも頼むわ」
「分かったよ」
「ンも~分かったマヤやる!!」
「その意気、んじゃよ~い……スタート!!」
駆け出していくランページ、それに続くマヤ。そんな姿を見送る坂原、これだけの事を要求しなければきっと勝つ事は難しいのだろう。ならば自分はマヤを確りと支えてあげなければならない、でないと……最悪マヤのお父さんに殴られる。
間もなく第三回URAファイナルズとレジェンドレースが開催となりますのでオリジナルウマ娘の募集の締め切りも近いのでご注意ください!!応募は下記のURLからお願いします!!
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