貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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573話

『今年もこの時がやってきました、ウマ娘レースの年末の祭典有記念。中山レース場第11レース、芝2500メートル、G1。雪がちらついておりますがバ場状態は良の発表です』

 

雪が降り始めているが、まだ降り始め故の良バ場の発表。だが時が経つほどに雪はターフに影響を与えていく、長距離レースでどんな影響を齎すか、それともそれを覆す走りが行われるのか……毎度毎度波乱が起きるとされているのがこの1年を締めくくるG1有記念。

 

「今回はどうなると思う?」

「分からねぇよ、だってブルボンが参加する前だって予想付かなかったのに電撃参戦だぜ!?しかもこのレースで引退するって言うんだからもう予想もくそもあるかよ」

「だよな、だからと言ってもブルボンもかなりのベテランだから明確にピークは過ぎてる筈……」

「でもそんなウマ娘がG1取れるかよ、しかも海外のG1をよ」

 

矢張りというべきか今回も観客の予想もあれていると言ってもいい。当然だろう、自分が走っていた事もそうだったが有は荒れやすいレースだ。必ずと言っていい程に誰が勝つかという話は分かれてしまう。

 

無敗の三冠のナリタブライアン、凱旋門二着のサクラローレル、ダービーウマ娘のナイスネイチャ、ジャパンカップ制覇のマチカネタンホイザ、エリザベス女王杯の女傑ヒシアマゾン、同じく今年のエリザベス女王杯を女傑から奪い取った竜騎士ドラグーンランス、ヴィクトリアマイル制覇のオグリローマン、安田記念制覇のタイキブリザード、NHKマイルカップの覇者たるジェニュイン、クラシック二冠にして海外G1三勝のサイボーグミホノブルボン、そして菊花賞とジャパンカップを逃げきったマヤノトップガン。

 

G1勝利ウマ娘を上げるだけで11人、レジェンドレースみたいな戦歴の奴らばっかりだと誰かが口にしているが全く以てその通りだ。まあレジェンドレースと比べるのはお門違いだろうとも思うが……月並みの言葉にはなってしまうのだが誰が勝っても可笑しくはないという言葉が最も似合っているのが現状だ。

 

「今日どうなると思う?」

「知らん、面白いレースになればいい」

「ホントお前ってさ、勝ち負けとかそういうのに忖度無いというか……興味がないというか」

 

そんな群雄割拠な有を見つめるチームプレアデスの三トレーナー、そのチームトレーナーであるランページはそこまで興味なさそうな顔でG1焼きとお汁粉を食べて身体を温めていた。

 

「勝ち負けに拘り過ぎても勝てねぇってこった、要するに最後に一着になった奴が勝つんだからそれまでどんと構えてりゃいいんだよ」

「誰よりも一番先に居続けた暴君が言うか」

「ぶっちゃけた話、俺は面白いレースが見たいだけだからな、さあマヤ―――見せてくれよお前の走りを」

 

そんな言葉を言いながらもマヤの勝利を祈っているランページ、だがその気持ちで負けているつもりはないと思っているのが坂原だった。マヤへの思いなら誰にも負けるつもりはない。

 

「(トレーナーって何というか変態扱いされる気持ちがわかるなぁ……)」

 

 

『さあ間もなくゲートインです。本日はどのようなレース展開になるのでしょうか、海外から戻ってきた不滅のサイボーグ、ミホノブルボンか。それともナリタブライアンか、サクラローレルが借りを返すのか、それともナイスネイチャが意地を見せるか、同じくジャパンカップウマ娘として上を行くかマチカネタンホイザ、ティアラ路線で激しくぶつかり続ける三強、ヒシアマゾン、オグリローマン、ドラグーンランスが行くか、マイラーの意地が有を貫くのか、ジェニュイン、タイキブリザード……それともマヤノトップガンが勢いのままに行くのか!!?』

 

マヤは雪も降っている空気を吸い込んだ、此処に来るまでマスクをしていた影響もあるのか冷たい空気が肺に入り込むと不思議な感覚になる。身体の隅々まで酸素が行き渡るような不思議な感覚が……呼吸という当たり前の行為が違って感じるのだから不思議……身体が冷える所か取り込んだそれを用いて更に熱を帯びていくのかが良く分かっていく。

 

「(だけどこの中で一番熱いのは―――あの人だ)」

 

この中で最も熱を発しているのはブライアンでもなければローレルでもない、それはブルボンだ。全身から闘気のようなオーラが滲み出ている、それどころか身体から湯気が出ている。完全に身体が出来上がっているいい証拠だ、これは―――……

 

『さあゲートインが完了しました、一年を締めくくる夢のグランプリレース有記念間もなく出走です。さあ今年一番の大勝負を制するのは一体誰なのか―――今、スタートしました!!』

 

開け放たれたゲート、マヤは最高のスタートが切れたと思っていたがそれよりも早く踏み出していたウマ娘がいた、ブルボンだ。それを見てマヤは笑う、このレースは楽しくなる。

 

『ミホノブルボンとマヤノトップガン最高のスタートを切りました!!ミホノブルボンが先頭、マヤノトップガン2番手、やや抑えているのでしょうか本日は大逃げではないようです。そこから2バ身差にドラグーンランス』

 

「(いきなりスタートでこの差って……スタートダッシュの差だけじゃない、この人達、逃げの巡航速度が私と違う……だけど根性なら負けないもん……!!)」

 

駆け抜けるブルボンの背後に付いたマヤ、ブルボンのペースは速く大逃げのそれに一歩手前と言った所だろうか。海外でのレースで鍛えられた結果の走りだというのが分かる、ランページとフローラのそれにどこか似ている、特にランページの走りに似ているとマヤは感じている。

 

「……いえ行けるわ、大丈夫だけど……今度はその手で来るのね」

「ホント逃げに限ってはあいつの取れる手段は多いなぁ……」

「あれもお前の入れ知恵か」

「いえランページさんの独自案でしょう、私ならあれは3番目位の案ですから」

 

「ブルボンさん今日はよろしくね♪」

「ええ、ついて来れるなら来てください」

「うんっ―――そうさせて貰うよ」

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