貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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574話

先頭を駆け抜けるブルボン、スタートから極めて安定したペースのまま駆け抜けていく。その姿を見ながらもマヤはその背後で走り続ける。マヤは目の前のウマ娘の一定したペース管理に感嘆を禁じ得なかった。全く淀みも揺らぎもない走りだ。

 

『ブルボンの走り?そうだな、イクノの上位互換だな』

 

ランページがそう言っていた言葉の意味が分かった、ランページの走りは良くも悪くもムラがあるのだがそれはウマ娘としては当然の事、だが目の前のウマ娘にはそれが無い。本当に機械で身体が構成されているのではないか?と思う程だ。

 

『ドラグーンランス3番手、そこから少し離れた所にサクラローレルとナリタブライアン、互いに競うかのように走っております。オグリローマン、ジェニュイン、タイキブリザード、ナイスネイチャが続いております。マチカネタンホイザは少し下がってこの位置、アイルトンシンボリが少し上がりました。さあそれらを見ながらも最後方のヒシアマゾン、虎視眈々と狙いを定めております、先頭は未だに香港帰りのサイボーグ、ミホノブルボンとマヤノトップガンがその後ろにピッタリと着いております』

 

向こう正面に入っても展開はあまり変化しない、海外で鍛えられただけあってその脚には屈強さが柔軟さが同居しかなりのスピードで走っているが普通に思えば何れ垂れると誰もが思う、背後からマヤが控えている事を考えればペースが乱れかねない。

 

「なんて正確なペース……ストップウォッチいらねぇんじゃない?」

「実際、あいつは完璧に時間を計れる。この前もカップ麺を食おうとしたら、マスター私が計りますってストップウォッチ片手にやらせてみたら完璧に3分丁度だったからな」

「いやなにさせてんの君」

「だって腹減ったから」

「「そう言う事じゃない」」

 

本当にこの暴君は……そんな思いを他所にレースは進んでいく、向こう正面へと入っても展開はそこまで変わらない……いや徐々にネイチャとタンホイザのペースを上げ始めている、矢張りあの二人が最初に気づいたかとランページは笑う、流石はカノープスだ。

 

「全く、ランならやると思ってたけどマジでやるとはね!!」

「トレーナーさんの予感、大的中!!」

 

『おっとナイスネイチャが上がっていく!!得意のロングスパートが始まったが同時にマチカネタンホイザも上がっていく!!元チームメイトが率いるプレアデスに古巣のシニアウマ娘が牙を剥いた!!さあドラグーンランスに並び始めた、此処でドラグーンランスも上がっていく!!カノープスが一気に上がっていくぞぉ!!』

 

「ブルボンさんの特徴はその正確無比のペース管理、それを敢えて前に走らせてペースメーカーとして使う、私ならそうしますし3000を大逃げ出来るマヤさんならスタミナも心配いらない。寧ろスリップストリームなどの関係から通常の逃げよりも体力は温存出来る……ブルボンさんも後ろに付かれたぐらいで乱れる事もないので理想的な作戦がそれですからね」

 

南坂からすればランページの取る選択肢なんて最初からお見通しだった。最終直線までブルボンに道案内を任せてその後に全力で駆け抜ける。単純だがブルボンにその気さえあればあっさりと覆る作戦だが……ブルボンなら受けて立つだろうという確信から来る作戦だ。

 

「ッハッハッハッハッ……」

 

ドラグーンランス。ランページに憧れてこの世界に入ったと言っても過言ではない程に彼女を尊敬している、彼女の脚質が逃げなのも必死にランページの走りを見て練習したから。そんな走りをする中でマヤの走りを目に焼き付ける、G1ウマ娘として名を馳せている筈の彼女でもマヤの走りは凄かった。

 

一挙手一頭足、完璧にブルボンにシンクロさせている。完全に合わせている、ブルボンがどんな作戦を撃とうとも適応出来るように整えている、南坂の言っていた言葉は本当だったんだ、疑っていた訳ではないがその意味を漸く理解した。

 

『あの方は本当の意味で天才ですよ、素質という意味ではテイオーさんと同じ位ですね……テイオーさんが一か所が飛び抜けているタイプの万能型だとすればマヤさんは全てが満遍なく高い超万能型です』

 

逃げ、先行、差し、追い込みの全てに適性を示す天才マヤノトップガン。その才能が遺憾なく発揮されていると言ってもいいだろう……この有記念の場でそれを強く実感する事になるとは思いもしなかったが……

 

「上等!!逃げで負けたくはないもんねっ!!!」

 

そう思った時だった、疾風とも思える者と共に駆け抜けた者がいた。黒い髪を靡かせながら駆け抜ける無敗の三冠ウマ娘、ナリタブライアンだ。

 

『ナリタナリタナリタ!!ナリタブライアンが此処で一気に上がってくる!!ドラグーンランスを越えて今三番手!!それに続くようにサクラローレルも徐々に上がってくる!!やはり荒れて来たぞこれぞ有だぁ!!!』

 

 

「マヤ、お前には様々な事を教えて貰った―――そうだ、この走り方の真の活かし方をな!!!」

 

第3コーナーを越えて間もなく入る第4コーナー、そこでブライアンは一気に勝負を仕掛けた。その理由は単純だ、マヤに負けたくないから。ジャパンカップでの敗北は流石にブライアンに響いた、彼女にも誇りとしている者がある、それはランページから盗む同然に習得した全身走法。しかしそれは見様見真似、それでも習得出来た故のプライドもあったが、その完成度を更に行かれた事がどうしても悔しかった。

 

「ピャッ!!なんか凄いの来る!!?」

「このプレッシャーは……ランページさん……?」

 

これまでレースにおいて振り向いた事のないブルボンが、初めて後ろを見てしまった。常に自分の前に居て追いかける側だった自分が感じる事の無かった気配を背後から感じたからだった、そしてそこに居たのは―――

 

『ナリタブライアンが此処でミホノブルボンとマヤノトップガンを射程距離に収めたぁ!!ナイスネイチャとマチカネタンホイザも良い位置に来ている!!さあ最終直線に入る、ブルボンとマヤノは逃げ切れるのか!?いや此処でサクラローレル、ヒシアマゾンも一気に上がってくる!!第40回有、勝利の行方は心臓破りの坂に掛かっているぅ!!!』

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