貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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575話

「(何々何々!!?ランページさんが乱入したと思っちゃったじゃん!!?ブライアンさんいつの間にこんなに完成度高めてたの!!?マヤ以上じゃん!!?)」

 

仮にランページの全身走法を100とするならばマヤのそれは80後半、ランページの走りを常に傍に見られるというのもあるが、時折そちらの指導を受けられているからこそのこの数値、だが今回ブライアンの走りは93と言った所だろう。ほぼランページのそれらと遜色ない走りが出来ているという事になる。思わずマヤがブルボンと同じくランページの気配と誤認してしまう程の気迫を纏っている。

 

「(落ち着かなきゃ、ハートは熱く頭はクールに……!!)」

 

ブライアンの気迫を感じつつも遂に最終直線へと足を踏み入れる、そして見えて来る中山の心臓破りの坂が。2階建ての建物に相当するこの高低差が最後の関門となる。

 

「タイマンだぁぁぁぁ!!!」

「おおっ来るねアマゾン!!だけど有の経験なら負けないんだよねぇ!!!」

「私だって負けないもん!!!」

 

ブライアンの覇気に当てられるのは当然、彼女と鎬を削ったウマ娘だけではない。その覇気が余りにもランページの物に酷似している故に当時、ランページとも走った者の闘志を呼び起こすのだ。もう本気で競えるとは思っていなかったあの暴君と走れる、そうではないと分かっていても身体は疼くのだ。彼女のような覇気を纏えるウマ娘と走りたいという欲求を抑えられない。

 

「マジかよ……おハナさん、どんだけのメニュー組んだんだよ?」

「大真面目に勝つための事しかやってないわ、どう南ご感想は?」

「「93点ですね」」

 

隣の南坂とフローラが平然と評価を下した、しかも両者ともに同じ点数なのが笑えない。

 

「……理由を聞いても?」

「自らの個性を加えながらもあの完成度は純粋に驚嘆に値しますが、それによって元々高かったそれを下げる結果になっているからです。といってもこれはダメ出しという訳ではなく彼女の独自性を見出せたという意味では大きなプラスです」

「ランページさんのそれを100とするならばブライアンちゃんは100より上に行ける可能性がある訳ですからね。思考をほぼほぼカットして闘争心を剥き出し、文字通りの闘争本能の走りですよ。ある意味あれこそがブライアンちゃんのオリジンスタイルなんじゃないかなぁって思いました〇」

「何で最後適当にしたのよ……?」

 

だがそう言われればあの走りの強さが良く分かる、訓練によって身に着けたそれよりも元から走り方の方がより高い力が発揮出来るのは道理……そうなると―――来年の凱旋門を取れる……のではという思いを抱いてしまう東条は悪くないだろう。

 

『坂を駆けあがる!!ミホノブルボン、ナリタブライアンが先頭、いや此処でマヤノトップガンが横っ飛びから前に出る!!争いに参加したぁ!!この坂の強さはあの暴君を連想させますが、後方からも一気に上がってくるウマ娘がいるぞ!!サクラローレル、サクラローレル!!凱旋門二着のウマ娘が我こそはと名乗りを上げるぅ!!!』

 

「確かにブライアンちゃん、貴方は凄いけど―――それはランページさんの走りぃ!!!」

 

坂を駆けあがる、ガラスの脚を防弾ガラスにする為のメニューをこなし続けたローレル。その中には当然坂路のフルコースもあった、坂路で負けたくなんてない。後1バ身の所まで迫った所でブライアンの鋭い顔が見えた。

 

『サクラローレル、あと少しで並ぶ並べるぞ並んだ抜けるかこのまま行けるのか!!?』

 

ローレルまでもが先頭集団へと食い込む、だがその後方からは3バ身の距離にネイチャ、タンホイザ、アマゾンがいる。それだけではなく猛スパートを掛けて来るジェニュインや必死に巻き返しを目指すドラグーンが坂を激走中。海千山千のシニアウマ娘達が、G1ウマ娘の闘志が燃え上がる中でマヤは必死に走っていた。先程までの余裕は消し飛んでいた。

 

「(ハァハァハァ……これが、これが有、これがシニア……!!)」

 

ジャパンカップでのシニアウマ娘との戦いは経験こそしているが、今回ばかりは状況が違う。大逃げと違ってブルボンをマークしての逃げ戦術は展開によっては囲まれる危険性もある。海千山千のウマ娘達の気迫を、間近に、自分を踏み越えるという熱意を明確に、受ける事になってしまう。

 

「でもっ!!」

『マヤノトップガン此処で伸びる伸びる!!抜け出るか!!?』

「マヤは負けないもん!!!」

 

身体を蝕む圧力から逃げるように今一度一歩を踏み出した、逃げる事は立派な戦術だ、戦う事だ。此処から一歩でも先に出ていれば勝ちなんだという強い意思表示、だがそうはさせるかと飲み込みかかるブライアン、更にそれを踏み越えようとするローレル、後ろから突き刺さんと槍を伸ばすドラグーン、ペースを上げて回転を加速させるブルボン、速度の最高潮に乗れたネイチャ、数多の技を一度に発揮するタンホイザ、全てを撫で切りにする末脚を発揮するアマゾン。戦闘を狙える者だけでこれだけのものが揃っている。

 

「「「「「うあああああああああああっ!!!!!」」」」」

 

ウマ娘達の叫びが木霊した。有記念という大舞台で興じられる祭り、叫びは歌となり観衆を熱狂の渦へと引きずり込んでいく。突きその果てに何があるのか見たくて見たくてしょうがない、どうしようもない熱い欲求のままに突き動かされた先にあるのは―――

 

『ナリタブライアンンンン!!!ナリタブライアン、有記念二連覇ァ!!二着にミホノブルボン、三着にサクラローレル!!4着にマヤノトップガン、5着にナイスネイチャ!!6着にヒシアマゾン!!マチカネタンホイザが7着!!今年の有記念も大白熱のレースとなりました!!!無敗の三冠ウマ娘、怒涛の有2連覇ぁ!!!ミホノブルボンとの着差はクビ差!!』

 

勝者を祝う凱歌が唱えられる。そして勝者(ナリタブライアン)はそのに酔いながらに新たな夢へと胸を躍らせる。そしてそれを見て決意を新たにする者も……自分もあのようになりたいという夢を抱く。夢が新たな夢を抱かせる……。

 

「夢を見せるウマ娘……って奴だな」

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