有馬を制したブライアン、その走りに人々は夢を重ねた。そしてインタビューの場で来年凱旋門制覇を目指す事を公言した事でその熱は更に過熱されていく。そんな思いを繋げる夢の舞台が行われようとしている。第3回URAファイナルズ、レジェンドレース。
「なんというか、本当にあっという間に年末になっちまったな」
「断言してあげるわ、来年もそれ言うわよ」
「それを言うなよおハナさん」
「毎年恒例な事ですし致し方ないですよ」
残るG1レースも東京大賞典とホープフルステークスのみ、トレーナーとしては有馬さえ越えてしまえば忙しさのピークというのは過ぎて落ち着いてくる。それでもトレーナーによってはそれらを目指す事もあるので何とも言えないが……それでも楽になるトレーナーの方が何方かと言えば多い。
「沖ノッチ顔がキモいぞ、随分と嬉しそうだな」
「そりゃそうだろっつうかキモい言うな」
なんだかんだ言われているがスピカの年間勝利数は中々なものでG1の勝利も得る事が出来てトレーナーとしては嬉しいことこの上ない。ブリザードもローマンもこれから期待出来る、そんな彼女たちの力となったのも朝日杯フューチュリティステークスを制したバブルガムフェローに報いるためでもあったのだろう。
「アイツの様子は如何だよ、元ネメシスメンバーとしては気になるんだが?」
「そりゃいい調子だぜ、この前なんてシービーが帰ってきた時に一緒にいたルドルフに併走頼んでたからな、まあ流石に負けたけど」
「それはそれは、でもその様子だと落ち込んだという訳でもないみたいですね」
「流石南坂だな分かるか、あいつは将来もっとでっけぇ事をやってくれると信じてるよ俺は」
史実で言う所のサンデー四天王が一角ともなれば、一流トレーナーにも期待の色が浮き彫りになるといった所だろう……自分も気になる所なのだが……自分は自分でやる事がある。
「おいランページ、随分と根を詰めてるな……休めてるのか?」
「毎日7時間睡眠取ってるよ、どうにかこうにか―――……ギリッギリで間に合った。ったく俺は締め切りに追われる作家か?いや有明記念に向けて走ってる同人作家か」
「間に合ったって、何を」
「野暮用だよ……創設者が顔も出せないとか洒落にならないからな、悪いけど坂原さんにはマヤ関係の取材とか丸投げになっちまうけど良いか?」
そんな言葉を坂原はサムズアップで受け取る。
「最初から僕が全部やる気だったから大丈夫だよ、それに今回の4着は寧ろ誇れる結果だからね。胸を張って受けるさ、何か言って来たらその時は―――ね?」
「いや怖いわ!!?」
「坂原って妙な所で凄みあるわよね……」
「だな」「全くだ」
「いや黒沼と六平さんはぜってぇ人の事言えねぇよ?」
そんな言葉が飛ぶ中でランページは今年の参加メンバーを見て思いを巡らせている、今年も粒揃いで面白いレースがきっと見れる事だろう……そんなランページに向けて南坂が珈琲を差し出す。
「今年も出られるんでしょう?身体、仕上がってますね」
「……不思議だ、沖ノッチが言ってたら蹴ってたのに南ちゃんが言うと不思議と嬉しくなるねぇ」
『確かに』
「うぉい!!!六平さんまで首縦に振らんでくださいよ!!」
「だったら行いを改めろぃ」
「あっそれは俺も思いました」
「和多ぁ!!」
新人にまで言われてしまった沖野はワザとらしく怒りながらも和多を捕まえるとアームロックを仕掛ける、和多も良い感じに決まっているのか声をあげながらも降参!!と連呼する。和多のああいう所がコミュニケーションが取りにくいと言われているオペラオーにも活かされているのだろうか。
「だけど本格的に今年が最後になるかもな、流石にこっから忙しくなりまくるからな」
「来年から加速度的にプレアデスはデビューラッシュですからね」
「俺の都合ばっかり優先する訳にも行かねぇさ……それに―――」
「それに?」
「うんにゃ、なんでも」
なんというか、そろそろな予感がする……それが一体何なのかは分からないが覚悟だけはしておく必要がある気がしてならないのだ。その為にもトレーナー業にも本腰を入れなければ……そんなランページに南坂は何やら言い難そうにしながら言葉を紡ぐ。
「実はですね」
「今年はダートで走るぜ俺は」
そう、静かに宣言するランページ。これまで芝のレースに出続けていたランページだが、今年はダートのレジェンドレースに出走するとの事、理由は様々な物があるのだが……日本の代表として迎え撃つのが礼儀だろうというのがある。
「アメリカのトリプルティアラが来る、だろ?」
「はい、すいません抑えきれませんでして……」
アメリカのトリプルティアラウマ娘、スカイビューティがレジェンドレースに出走登録を行っている。この事はかなり騒がれている、アメリカと日本の激突だのと言われたりもしているが……彼方の強さにも興味があるのだが……
「ルドっさん来るんだろ?」
「……すいません、抑えきれませんでした……」
「大丈夫だよ気にするなよ、これでイージーゴアが来ましたってなったら流石に俺も余裕なくなるけどな」
「……」
「えっおい嘘だろ嘘だよね嘘って言ってよ南ちゃん!!」
「……ごめんなさい、実はサンデーさんも……」
「―――実家に帰らせて頂きます」
「メジロ家の方々にもお話は通してあります」
「ご丁寧な仕事してくれて有難う御座いますよこんちくしょう!!!よりにもよってそれらをダートで相手にしなきゃいけねぇのかよ!!?下手したら去年よりもやべぇ面子じゃねえかぁ!!!?」