「マジ意味わかんね」
思わずそんな言葉を口にする程度にはランページは混乱していた。彼女からすれば日本各地からダートが芝を凌駕するぞ!!という勢いある面子を交えてライバルと戦うつもりだけだったのに、何で日本でジャパンワールドダートカップをやる事になってしまったのだろうか、アメリカもアメリカだ、何故認めた。
「トリプルティアラの九冠ウマ娘だけならまだよかったのに、なんでルドっさんにゴアまで来るまで来る訳?頭可笑しいんじゃねえの?テメェはアメリカで整備でもしてろやボケ」
「お~お~荒れてなさるな」
「荒れるなって方が無理だたわけ、なんだこの出走表、バカなの死ぬの寧ろ死ね」
「ハハッいいなその言い回し、俺も使うわ」
「もう好きにして」
普段なら教育に悪いやら好い加減にしとけと止める筈のランページがサンデーのそれすら止める事もない程に口から魂が出てしまっている。もう本気で今回ばかりは今からでも出走取消しようかな……とガチで考える程に気が重くなってしまっている。
「なんでまたあんたと走らなきゃいけねぇんだよ……アタシゃ単純にライバルと走ろうとしてただけなのになんでこんな目に合わなきゃあかん訳?」
「おう、俺の事が如何でも良いとかよく言えんな」
「だって現役中のライバルじゃねえじゃん」
「口だけは相変わらず達者だなテメェは」
ネメシスのメニューを見ていると隣にネメシスのボスこと親玉サンデーがやってくる、そんな彼女も確りとレジェンドレースに出走する。芝では負けたが自分のホームグラウンドはダート、そこならば自分が勝つと言わんばかりに挑戦状を叩きつけてきたという訳だ。
「アンタが出走するって表明したせいでゴアとかスカイビューティとか来る羽目になったんだぞ、俺からしたらいい迷惑だ……唯でさえ今年はオグリさんとかイナリ先輩だってダートで走るっつってるのに……」
「なんだあいつらダート行けるのか?」
「元々ダートだわあの二人は……」
そう、オグリとイナリは今回ダートでのエントリーを行っている。オグリはフジマサマーチと再び戦う為に、イナリはそれに乗っかる形で久々に走るかいと割と軽くダートに出走を決めた。意外な事にタマとクリークはこれについては何も言わず、お互い頑張ろうでサッパリとしていた事だ。
「だが別に悪い事でもねぇだろ、お前にとっても日本にとっても」
「俺にとっては最悪すぎるわ……なんで外交の真似事をしなきゃいけないんですかねぇ……」
レジェンドレース開催の直前のタイミングで自分は海外からのお客様をもてなしをしろと言われている、これが日本政府からの命令とかならば自分はふざけんなテメェがやれ税金泥棒どもと言ってやるのだが……それを言ってきたのが友達のウラヌスなので断る訳にはいかない。日本の面子なんて極めてどうでもいいが、友達の顔に泥を塗る行為だけはしたくない。
「んじゃ俺も付き合うか」
「何であんたが来るんだよ、余計にややこくなるだろすっこんでろ」
「硬い事言うなよ俺とお前の仲だろ」
「ハァッ……グッバイヘイロー連れて来るなら考えてやる」
「よし今から電話して来るわ」
と平然と電話をかけ始められてランページはマズった……と頭を抱えた。此処まで自分は何も考えられなかったか?少し考えれば分かる事なのに……。
「OKだと」
「出ちゃったかぁ……あんのポンコツめ、そこは少しは反論するとか反対意見出せよだから娘にあんなにおバカとか言われるんだろうが……」
「其処は賛同するわ」
されたとしても全く嬉しくもないんだが……だが何時までもグチグチしていたって状況は全く好転しないのだから何とか切り替えないと……。
「おいサンデー、ひとっ走り付き合えよ」
「そりゃどっちだ?」
「どっちもだ」
「いいだろう」
この後、ランページはサンデーと気が済むまでマッチレースを行い続けた。途中、フローラやそれに参加したがった者も続々と参加して即席のレジェンドレースが発生してしまったが、疲労が溜まり切る前に切り上げた、そして―――
「はっはぁっランページテメェこんな所作ってたら最初から言えってんだぁ!!!」
「まだ工事終わってねぇんだよ!!走り終わったら感想寄こせよ!!」
「レポートにして渡してやらぁ!!!」
インプレッサとGT-Rを駆って山の道路を駆け抜けていく、走り屋としても久しぶりに入る道路は少し広く感じる―――訳でもなくここの道路は少し広めに作られているだけの話だ。此処は元々メジロ家が保有する山の一つ、それをランページが貰って私的に使わせて貰っているのである。使用用途は勿論―――走り込みだ。
「はっはぁっ!!なんだ今のコーナー鈴鹿サーキットで神見たって話聞いたけど今みてぇなのか!!?」
「さあ、なっ!!何れ行ってみてぇもんだな!!!」
周囲の目を気にする事もなく思う存分に車を飛ばしてすっきりしたランページ、タイヤもガソリンの事も一切気にする事もなくかっ飛ばしたのは本当に久しぶり……いい気分転換になった、と思っていたら
「ランページさん、走ってきたんですね?ズルいです」
「なんで分かるのよスズカ貴方」
スズカにバレて今度連れて行くことを約束させられた。そして―――
「極東の島国へようこそ、アメリカで是非とも走って頂きたかったですね―――さてと、おもてなしといきますか」
ランページにとっては楽しくない食事時間が始まったのであった。