「つう訳で上ちゃん、実家教えて」
「何がという訳なの!?」
レジェンドレースに出走する面々との顔合わせの後、ランページは愛しの旦那様こと上水流を家に招待して細やかな食事会を催していた。
「いやだって俺の実家に挨拶はしたようなもんだし今度はそっちの番じゃね?」
「言いたいことは分かるけどいきなりすぎないか……明日にはファイナルズが始まるんだぞ?」
「だからこそのタイミングよ、つうか俺はファイナルズには出ねぇし」
設立者がこんな事言っていいのだろうか……と思いはする。まあ実際既に運営はURAがやっているしランページからすれば何時までも自分が関わるのは面倒なだけなのかもしれないが……。
「お互い一緒になるって話は決めてんだ、それならそっちの実家に顔出すのが道理だろ」
「言ってる事は立派だけど……ウチは普通の一般家庭なんだよ、別に家系にご立派なウマ娘がいる訳でもなければどっかの大名の子孫とかでもないからな?」
「何言ってんだ、ンな事言ったら俺だってそうだわ」
一瞬何を言っているんだお前は遂に狂ったのか、と喉元まで出かかったが元々ランページは一般家庭出身な事を思い出した。よくもまあ一般家庭出身が此処まで弾けられる物だ、今や各国のトップや我が国の天皇陛下とすら関係があるのだからとんでもない存在だ。
「腰抜かすんじゃないかなぁ……妹とかいるけどさ、ランページにあったら発狂するじゃねえかな……?1d30ぐらいかな」
「人をサラッとやべぇ存在にすんじゃねえ、クトゥルフ御大見た時の成功時よりひでぇじゃねえか。あれですら1D10だぞ」
彼女の本性というか素の面を知ってさえいればそこまで緊張はしないだろうが……そこにたどり着くまでにいったいどれ程の肩書やら実績に触れなければならないだろうか……間違いなく両親は恐れ慄くし妹は感涙して発狂間違いなしで弟は……現実逃避辺りはするか。
「兎も角そう簡単には会わせられないよ、前以て連絡とかしないといけないし……というか向こうだってなんか見合い写真用意してるとか聞いたし……」
「聞いたって、上ちゃん俺の一つか二つ上だろ。気が早過ぎじゃね?」
「いや隣に住んでるおばさんが世話焼きというかそういうのなんだよ」
「あ~そういうのって本当にあるんだな」
両親も早く孫の顔が見たいからそれに同調してしまっているらしいし、色々と面倒な事になっているのにそれすら飛び越えて婚約しましたなんて言ったらどうなってしまうんだろうか……。
「親戚とかもなんか言ってこないか心配だなぁ……」
「なに大丈夫だ、何かあれば俺が直ぐに弁護士やら立ててやるさ」
「それはそれで……」
「実績もあるぞ、会った事もねぇ親戚排除した事あるしな」
「安心すればいいのか、それともこれから起きるだろう未来の事だと真面目に聞いた方がいい?」
「話半分に聞いとけ」
無事に結婚ともなれば自分はメジロ家の一人になる、ランページからは堅苦しいパーティやら礼儀作法などは全く覚えなくていいと言われてはいるが気にはなる。本人曰く、自分は既にメジロ家から独立しているも同然、というか明らかにメジロ家以上の力を個人で持ってしまっているので独立しておかないと不和を呼ぶとお婆様から言われたとの事。
「ンでよ上ちゃん―――子供、何人欲しい?」
「……まだそういうの、早くない?」
「ぶっちゃけ育てたいでしょ、俺との子」
「……うん」
頬を赤らめながらも頷く上水流、興味が無い訳でもない。ウマ娘の世界でも良血の血統やらはあるしランページの子供ともなれば期待してしまうのは当然の事。それは同時に自分の子でもあるのだが……トレーナーの職業柄として考えてしまうのも無理はない。
「期待してくれていいぜ」
「随分とまあ、自信があるんだね」
「そりゃおめぇ三女神のお墨付きだからな」
「ははっ君が言うと嘘に思えないな」
「(マジなんだよなぁ)」
チラリと視線をやる、そこには三女神の像があるのだが……うっすらと発光している、上水流は背後の像が見えていないのもあってか妙に光っている、ついでにお供えした酒やらが消えている。
「まあ兎も角よ、婚約しちまった事とかそれらはどうしても話を通しておく必要はあるって訳。タイミングはそっちに任せていい、場所だけは知っておきたかっただけだからな」
「まあ無理矢理納得するけどさ……でも随分と急だな、何かあったの?」
流石は自分が選んだ相手だ、何かしら自分の変化に気づいている。
「まあ別に大したことはねぇんだけどさ……まあ乙女心と秋の空って奴だ気にするな」
「君の場合の秋の空は確実に台風入り乱れる方ですよね」
「ハッハッハッ、お酒没収」
「そんな殺生な!!?」
大吟醸を没収させて貰う、まあその際の上水流の表情が酷く情けなくて可愛かったので没収は勘弁してあげる事にした。こうしてみると自分も随分と女らしくなったものだと思う、男だった時の事なんてもう既に記憶でしかなく実感が沸かなくなって来てる、ウマ娘として生きていると胸を張って言えるのだろうか。
「……仮にさ、ウマ娘の双子だったらどうする?」
「それは……色々と大丈夫かなって不安になるかな。でもまあ大丈夫だと思うよ、何せ俺と君の子なんだ、愛するよ」
「んじゃその前に俺をベッドで愛してくれや、つうか好い加減に抱けよ俺を」
「せめて正式に式上げてからにして欲しいんだけど!!?」
「ヘタレ」
「煩い純情派なんだよこれでも!!」
細やかな食事会は間違いなくランページの心に余裕を取り戻し活力となった。そして来たる第三回URAファイナルズ及びレジェンドレース……今年はどのような結果となるのか……。
次回でファイナルズとレジェンドレースの募集を終了しようと思います。
ご興味がある方は下のURLから覗いてみてください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=317456&uid=11127