貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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58話

「よ~しいいかチケゾー、これからターボがドッカンターボするからそれから必死に逃げるんだぞ!!」

「はい先輩!!」

「それじゃあ位置に付け~!!」

「おっ~!!」

 

そんな事を元気よく言っているターボとチケット、ひいてはカノープスの面々は海岸にいた。季節は夏、合宿の時期となった。今までのカノープスは良くも悪くも中堅どころでチームの予算は余り多くは無かったのだが……今回はランページとイクノが1着と2着を連続して出したりして荒稼ぎした結果、潤沢なチーム資金が揃っていた。なのでそれを使ってリギルも利用する海沿いのホテルを使っての合宿を敢行したのであった。

 

「ほれライス日焼け止め塗ってやっから。肌白いんだからケアは確りしねぇとダメだぜ」

「有難うお姉様」

「ネイチャたちも使うか?パーマーからおススメ教えて貰ったんだよ」

「それじゃあ有難く使わせて貰おうかな」

 

砂浜に立てた大きなパラソルの下で早速砂浜へと駆け出して言った二人を見つつも、自分のペースで日焼け止めを塗ったりする面々。一応ターボとチケットも塗っているが、もうちょっと丁寧に塗ればいいのに……とタンホイザは思わず苦言を呈してしまった。

 

「にしてもドッカンターボって……あいつ何処でそんな言葉覚えて来たんだよ」

「ドッカンターボって何なんだろ、ターボに関係あるのかな?」

「あると言えばある、ないと言えばない」

「どっちよそれ」

 

ドッカンターボとはまだ車のターボエンジン技術が未熟だった頃、アクセルを踏んでから時間差で急に加速する事。緩やかな加速から一気に爆発的に加速する、これをドッカンターボと呼ぶ。一体それをどこで知ったのやら……。

 

「詰まる所、一気に加速するってこと?」

「大体合ってる、ゆっくりと速度を上げるじゃなくて最初から一気にフルスピードまで持って行く……よく考えてみればターボのスタートからの全力疾走は正にドッカンターボだな」

 

ウマ娘の世界はスマホがあったりするので年代的にも時代遅れと言わざるを得ないが……史実の年代的には合うのかと自分で勝手に納得してしまった。

 

「ゴ~ッ!!」

 

合図と共に砂浜を先に駆け出すチケット、そしてそれを追いかけるようにずっと後方から駆け出して行くターボ。分かった上で見比べるとチケットに比べてターボがトップスピードに入るまでの時間が極めて短いのが良く分かる。これで一気に差をつけたままゴールする、それがターボの走り……多少なりとも抑える事を覚えてくれれば逃げウマ娘として大成するのが目に見えているのに、と南坂が呟く理由がよく分かる。

 

「うあぁぁっ~先輩、速いぃ~!!」

「追い付いちゃうぞ~!!」

「うおおおおっ負けるかぁぁぁ!!」

 

負けるものかと、気合を入れて加速していくチケット。だが既にかなり詰め寄られている為に、追い付かれてしまった。

 

「イエ~イターボの勝ち!!」

「くっそぉ!!!先輩もう一本!!もう一本お願いします!!」

「おういいぞ!!ターボはこーはいのお願いをむべにしたりしないぞ!!」

「それを言うなら無下にするだっつの、イモモチでも作る気かよ」

 

溜息混じりに呆れる、がその一方でターボはターボで後輩が出来た事を嬉しく思って先輩として力になろうと一生懸命になっている。そんな先輩に感謝しつつも慕っているチケットの光景は中々に良い物だな、と思ったりしている。

 

「さてそろそろいいか、ライス塗るぞ~」

「う、うん……ふわぁっお姉様の手って大きい……」

「まあこの体格だしな~」

 

日焼け止めを確りと人肌に温めてからライスの身体に塗ってやる、今日からの合宿は基本砂浜で行うのでこういう処置はちゃんとしておかないと地獄を見る事になる。

 

「うっし終わったぞライス。これで肌が焼ける事はないな」

「ありがとうお姉様、こ、今度はライスが塗ってあげるね?」

「おっこりゃありがてぇな」

 

今度はライスに自分の日焼け止めを塗って貰うという思わぬイベントに嬉しく思いながらも身を委ねるのであった。自分にやって貰った事を必死に思い出しながらも実践しようと一生懸命なライスにランページは内心で尊みを感じてしまい、内心のデジタンが昇天していた。

 

「よいしょうんしょ……ど、如何かなお姉様、いたくない?」

「全然大丈夫~……あ~やばいわこれ、ライスの小さい手がなんかいい感じの所に入るから普通にマッサージとしてもいいわ……」

 

そんなこんなで日焼け止めの準備を終えるとメニューの準備をしていた南坂に声を掛ける。

 

「んで南ちゃん、砂浜での練習ってぶっちゃけ効果あるのか?まあ足腰は鍛えられそうだけどよ」

「結構効果的なんですよ砂浜トレーニングは。スピードを出す練習は今ターボさん達がやっているような波打ち際の硬く湿った場所で、深く乾いた所はゆっくり走る事で筋肉に大きな負荷を掛ける事が出来ます。メニューによって負荷を変える事が出来る事は大きなメリットです、流石にトレセン学園でも此処まで幅広い物を用意する事が出来ませんし直ぐに切り替えられるのが大きいですね」

「な~るほどね」

 

そう言われるとかなり納得が行く、そして直ぐに水泳などにも切り替える事も出来る。確かに合理的な上に幅広い負荷を選ぶ事が出来る。

 

「故障してしまったウマ娘が砂浜でリハビリをするというのもよくある話ですからね」

「へ~……そりゃ知らんかったわ」

「それでははい、ランページさんのメニューです」

 

南坂から渡されたのはロープが結ばれたベルトだった。結ばれたロープの先を見てみると……そこにはタイヤがあった。これを引っ張って走れという事なのだろうか……なんというか、古風というかなんというか……そんな気分になったがシンザン鉄のような物だと思ってやろうと走り出そうとするのだが……止められてしまった。

 

「まだ走らないで良いですよ」

「まずは歩いて慣らすとか?」

「いえ、あっちです」

 

指を指した先にある物……それは大海原。穏やかな海ではあるが、まさかタイヤを引っ張ったまま入れという事なのだろうかとその顔を見ると笑顔で頷かれた。

 

「太腿辺りまで海に入って歩いてください」

「……えっマジ?」

「はい、マジです。これも黒沼トレーナーに監修をお願いしたメニューです」

「またトレセンの龍かよ……」

 

根性トレーニングの一環なのだろうか……兎も角、自分に出来る事は兎に角このタイヤを引っ張る事のみ。一先ず海に入って歩き始めるのだが……水の抵抗に加えてタイヤが波に揺れたりして非常に歩きづらい。

 

「出来るだけ真っ直ぐですよ~大丈夫、ランページさんなら出来ますよ」

「だから毎度毎度期待が重いんだよぉ!!!南ちゃんの鬼ぃぃ!!!」

「それだけ声を上げるなら大丈夫ですね、無理そうなら変えようと思ったんですけど……そのまま1時間ぐらいは歩いてください」

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っっ!!!!」

 

この後、滅茶苦茶歩かされた。

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