貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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581話

「うわぁぁあああんランちゃん~!!!私の事は好きじゃないのっ~!!!?」

「ちょっ何なのスーちゃん急に!?」

 

開会式を終えたランページはVIP席のスピードシンボリに挨拶をしようと扉を開けた途端に抱き着いてきたスーちゃんに困惑する、いきなり何なのだと言いたくなるレベルの取り乱しようだ。一先ずうまく衝撃をいなしながらVIP席へと入るが、スーちゃんは確りと抱き着いてきて離してくれたない。

 

「だって演説の時に好きなウマ娘の中に私を上げてくれなかったじゃない~!!」

「……まさかそれで?何言ってんの大好きに決まってんでしょうがそれともスーちゃんは俺がスーちゃんのこと嫌いだと思ってるって考えてるのかうわぁっシンプルにスゲェショックだわもう駄目立ち直れない……」

「違う違う違うからぁ!!?そんなこと思ってないわよぉ!!?」

 

まさかのカウンターを受けてしまったスーちゃんは膝を抱えて凹みだすランページの誤解を何とか解こうとアタフタし始める。そんな光景に置いてきぼりにされてしまった二人、此処だけ切り抜くと完全に祖母と孫の光景なのだから笑うしかない。

 

「うわぁ~んランちゃん~……」

「冗談だよ、スーちゃんが俺の事大好きなの分かってるよ」

「ランちゃん~♪」

 

途端に涙も引っ込んで改めて抱き着いてくるスーちゃんの背中を優しく撫でつつも他の二人に気づいて申し訳なさそうに頭を下げる、が二人は大丈夫大丈夫とニコニコしながら手を振る。

 

『電撃6ハロンの死闘、ファイナルズ短距離部門!早くも大波乱になりつつあります!!』

 

そんな中で聞こえて来た実況の赤坂の声に二人は顔を見合わせながらもレースを見てみると―――確かにこれは大波乱というべき状態だった。確かに電撃6ハロンは瞬き厳禁のレースだと言われる事があるが……これは幾らなんでも展開が早すぎる。

 

「あらららぁ~シオンってば楽しそうにしちゃって」

 

唯一人、スピードシンボリだけが酷く楽しそうに、嬉しそうにしていた。

 

電撃6ハロンの争いが始まる際に誰もが感じていた予感、それは自らの可能性の扉が大きく開け放たれているという事への思いだった。体調がいいだけではない、明らかに自分のギアが間違いなく完全なトップギアに入っている、この舞台が自分達に力を与えてくれている、今の自分達は最高だ……最優だと言える程の状況。

 

「アハハハハッ!!!凄い、楽しくて楽しい楽しいよ!!」

「これなら、確実に勝てる!!我、(いかずち)の化身なり!!その目にも止まらぬ速さに恐れるがいい!!!」

 

最高のパフォーマンスを発揮出来ている―――この状況そのもが明らかに可笑しい……!!

 

「何よこれ、明らかにスピードが、乗り過ぎている……!!!」

「こんなっ調子て上がる物だっけ……!?」

 

プラチナセボン、カンタートルマリンは前を駆け抜けていくマーベラスサニティとライトラインの走りに彼女らも自分達が感じているそれらと同じものを感じている事を察する。だからこそ状況が恐ろしい、逃げ戦法を取るサニティにどうして追い込みのライトラインが既に肉薄しているのか。まだレースは半分も過ぎていない、追い込みをかけるには早すぎるタイミング……それなのに、それに気づかない程に高揚しているのも分かる、自分の調子も良すぎる程に―――

 

「『ウマ娘の可能性』も良い研究命題だが、私の人生の命題はただ一つ。『領域の実在』の証明、それだけだよ」

 

たった一人、自分のペースを完全に掌握しているウマ娘がそう言っていた。シンボリルクシオン、シンボリのカラーの軍服のような勝負服の上から白衣を纏っているウマ娘がそう呟いた、彼女はレース前に何かを言っていた、確か……

 

 

―――さあ、君達の世界を見せておくれ!!

 

 

「私たち、の世界……?」

「そうさウマ娘一人一人が持つ内なる世界の具現、それこそが領域と呼ばれる力……さあ私も行こうか―――あの人が見ているんだ、派手に行かせてもらうとしよう!!」

 

『さあ直線に入るぞ、先頭はマーベラスサニティ、ライトラインも負けていない―――いや此処で一気に上がって来るぞ!!シンボリルクシオン!!!シンボリルクシオンが一気に上がって今3番手、いやマーベラスサニティを完全に捉えている!!シンボリルクシオンシンボリルクシオンが一気に先頭に立った!!そのまま、そのままシンボリルクシオンが突き放しに掛かる!!!マーベラスサニティ、ライトラインが懸命に足を伸ばすがどうにも伸びてこない!!プラチナセボン、カンタートルマリンも来ているがこれは厳しいか!?マーベラスサニティ苦しいか!?凄いぞシンボリルクシオン、これが光速の粒子の名を冠するウマ娘ぇ!!!シンボリルクシオン、一着!!二着にプラチナセボン、三着にライトライン!!』

 

瞬き厳禁の電撃6ハロンを制したのはシンボリルクシオン、タイムこそ2連覇の王者で今年はレジェンドレースに望んでいるラビットパラベラムにこそ及んでこそいなかった完全に彼女が支配していたレースであった。

 

「―――っ……」

 

興奮が抑えきれない、動悸が止まらない、心臓が爆発しそうな程に高まって激しい頭痛と共に頭に響いてくる……それでも嬉しさが全てを凌駕していた。これほどまでに嬉しい事なんてない……そんな彼女はゆっくりと振り向き、染まっていた瞳の狂気の狭間からこう述べた。

 

「……古き花はいつか枯れ、新たな種が芽吹く礎となる。さあ、未来の蕾たち。君たち自身の『可能性』を、私は楽しみにしているよ」

 

そのまま去るルクシオンの足取りは疲労と頭痛と動悸を抱えているとは思えぬ程に堂々としていた。そしてそれを見送った皆は思う、今のレースで感じられた物こそ、その可能性なのだと。何時でもあの力を引き出せるようになってこそ……一流のウマ娘なのだと。

 

「全く、無理をし過ぎだぞ……此方の心臓が持たないぞ」

 

地下バ道を進む自分を出迎えたルドルフを見て不敵に笑って見せる。

 

「ルドルフ、フフッなぁに楽しいレースの為さ……かの暴君には感謝しなければならないな。さぁ肩を貸してくれたまえ、実を言うともうポンコツ寸前でね」

「勿論何時も通りに貸すさ、さあっ使い給え」

 

ルドルフの肩を借りつつもルクシオンの顔は晴れ晴れとしていた。矢張りレースは楽しい、そう顔に書かれていたのでルドルフは思わず笑みを零した。

 

第三回URAファイナルズ

短距離部門チャンピオン シンボリルクシオン




幽々やよい様よりシンボリルクシオンを頂きました。有難う御座います!!
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