貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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582話

「いやぁなんかごめんね呼び出すみたいな感じで」

「構わんさ、にしても今年は本当に国際色豊かだなぁ……マジでジャパンワールドカップの設立した方がワンチャン楽かもしれないとかどう言う事よ」

 

一旦VIP席から抜け出したランページは友人と会っていた、その友人はシルバーストーン。嘗てランページが海外戦線で対決した一人であり、現在はシルバーレーシング・コミュニティというクラブチームを運営する立場になっている。

 

「そっちはまだ大変か?」

「まあ大変と言えば大変かなぁ……ただ走るだけの立場から支える立場になっちゃったし考える事とか爆発的に増えちゃったし……でもそれはランページも言える事でしょ?」

「まあな、なんだったら俺は日本中駆け回ったし世界的にも顔が効くからな。すげぇぞ来日する国のトップがお会いしたいと申してるんですけど予定あいてますか?って政府から電話が着たりするんだぞマジで意味分かんねぇよ」

「うっわぁそりゃ悲惨www」

「なにわろてんねんwww」

 

ジュース片手に笑い合っている二人、傍から見れば久しぶりに会ったウマ娘同士なのだが……事情を知る者からしたらエグい功績持ちな二人だという事が分かってしまう。

 

「にしてもお前様のクラブチームの子が来るとはなぁ……大元がレーシングチームな事考えると色々連想しちまうな」

「色々言われもしたね~まあ何事も始める時は意見が出るのも当然の事だけどね」

「流しときゃいいんだよ、世界を変えるのは何時だって若い力なんだから」

「お~カッコいい事言うね」

「アニメからの引用だけどな」

 

そんな事を駄弁っていると間もなくマイル部門のレースが始まろうとしていた。そろそろ席に戻ろうかという所で最後の質問を飛ばす。

 

「ンでお前の教え子ってどんなやつ?」

「一言で言えば―――ヒット&ウェイね」

 

 

「さあ行くぜぇ!!!発射オーライ、ロケットスタートだぁ!!!」

 

昨年の覇者たるロケットアローが激烈なスタートを切る、スタートから一切の加減もないスタートに誰もがランページの大逃げを想起したのか大歓声が上がる。サクラコガレオー、スプーキーナイト、だが逃げを選択する者は少ない。

 

「(相変わらずやっばい速度……去年からまた速くなってるんじゃないかな……?)」

 

ロケットアローの逃げはランページのそれとは違って近くで見るとやや幻惑される、常に最大出力を出しているように見える為にそろそろ垂れる筈、という疑念を抱いてしまって勝負所を間違える。故か今年は差しや先行が多い。

 

「(だけどさ……真っ向で勝ちたいんだよね……折角、バクシンオーに見て貰ったんだし、勝たせて貰うからねトア!!)」

 

マイルはファイナルズの中でも激戦区と言われる、それだけあって新規の顔がある一方で去年もその実力を示したウマ娘も多い。

 

『ヴェットロがこの位置で控えております、シャドーエースが此処にいます。アンコールユニット、エーアネスが並んでいます。初代チャンピオンのダンシングブレードがこの位置、初代レースを制したあの衝撃的な末脚は見れるのか!大井トレセンからやってきたリバーロマンスがこの位置、なかなかいいポジショニングです!!英国からのチャレンジャー、トウチェスターグレイ!!あのシルバーストーンのクラブチームの一期生、その走りも期待です。その後ろにアーゼウス』

 

先頭は未だロケットアロー、傍から見れば無謀な全力疾走にしか見えないが彼女の顔に焦りや苦しみと言った色は全くない、それ故にコガレオー付近の逃げウマ娘は焦り出して前に出ようとするが、それをコガレオーは一瞥する。勝負をかけるのは矢張り最終直線、此処ではまだ我慢だと自らに言い聞かせながらもコーナーを曲がった時、巨大な音が響いた。レース中の蹄鉄が芝を踏む音が木霊する中でもはっきり聞こえるそれは徐々に大きくなってきている。

 

『トウチェスターグレイ!!トゥチェスターグレイが上がってきているぅ!!此処で勝負を仕掛けてきた、一気に上がってサクラコガレオーを捉えている!!残るはロケットアローただ一人、英国からの刺客が勝ち星を挙げるのか!!』

 

「いつの間にっ……!!」

 

シルバーストーンの教え子が一気に上がる中で次々と他のウマ娘達もスパートを掛け始めていく、独走を続けるロケットアローの独裁を許すまじと言いたげな発起、それを目の当たりにしてリバーロマンスも強く歯軋りをしながらも駆け出した。

 

「私、リバーロマンスにはとても大きな夢があります!!心の中で今も輝く大切な夢。遥かに遠く険しいけれど、いつか絶対掴んでみせる!!」

「……(オレ)が喰いちぎる!!」

「さあ。戴冠の時です―――すべてはローマに通ず!!」

「そして全てを終わらせるとしましょうか!破壊破壊!!」

 

そこいらじゅうから噴き出していく熱波にも似た気迫がコースから溢れだす、それらを受けて一番影響を受けていたのは―――それらを文字通り、全てを薙ぎきりにするかのように一気に伸びていった一人のウマ娘だった。全てを切り裂くその切れ味を見て誰かが言った。

 

「美しい」

 

『ダ、ダンシングブレード!!ダンシングブレードが一気に上がってくる!!大外からダンシングブレードが大逆襲ぅぅぅ!!!初代王者が名乗りを上げた!!サクラコガレオーを抜いて今、ロケットアロー、トゥチェスターグレイに並び立ったぁ!!横一線で並び立つ、誰が抜け出すのか!!!?爆走特急ロケットアローか!!?英国のチャレンジャートゥチェスターグレイか!!?URAファイナルズ初代マイルチャンピオンダンシングブレードか!!?』

 

並び立った優駿達が駆け抜ける、もう誰が勝っても可笑しくない状況になった時にロケットアローが笑った。最後の切り札を残しておいたと言わんばかりの笑みの正体は直ぐに明らかになる。

 

「行くぜ爆走特急!!止められるもんなら止めてみやがれぇぇぇっ!!!」

 

最後の燃料に点火された、更に加速しようとしたロケットアロー―――だがその速度は全く変わらなかった。最後の力で加速している筈なのに何故……

 

「さぁ狩りの時間だよ……」

 

その言葉と共にトゥチェスターグレイが加速し始めた、ロケットアローが加速しようとした瞬間のそれはまるで自分の力は使われているようにも見えていた。自分の力が完全に利用されたのか?という疑問すら上がらなかった、何故ならば―――突如としてトゥチェスターグレイの加速が止まり、再びロケットアローが上がり始めた。

 

「っ!?」

「誰かの心に、記憶に、刻まれるような走り―――全てを、切り捨てるっ……!!」

 

『ダンシングブレードダンシングブレード!!トゥチェスターグレイを踏み越えて抜け出した!!さあロケットアローも再加速追い付けるか、まだ行けるのか!!?トゥチェスターグレイも足を伸ばすがこれは如何だ行けるのかダンシングブレード、ダンシングブレードぉぉぉぉ!!!ダンシングブレード、王座奪還んんんん!!!初代王者が意地を見せたぁ!!ロケットアローを踏み越えて覇者へと返り咲いたぁ!!二着にロケットアロー、三着トゥチェスターグレイ!!素晴らしいレースでした!!URAファイナルズの歴史にまた、新たな名勝負が誕生です!!!』

 

「ハァハァハァッ……やった、やったんだ、私っ……」

 

荒い息を吐き続ける彼女が顔を上げた時、観客席では自分の家族満足げに笑っていた。その笑顔が見れただけでも自分は、何処までも満足できた。この勝利よりも嬉しいかもしれない……だが―――自分は帰ってこれた、此処に。それを示すように腕を上げて自らの勝利を誇示した。

 

 

 

「ハァッ……負けちゃったかぁ」

「でもそんなに悔しがってないのね?」

「いやぁあそこまで全力出して負けたら何も言えませんって……まあ次は負けませんけどね!!」

 

シルバーストーンは出迎えた教え子が何時の間にか自分が思っていた以上に成長している事に嬉しさを感じた。そして同時にランページへの感謝を述べた。

 

「腕を磨かせてまたチャレンジさせるわ、さてトゥース、取り合えずシャワー浴びてきなさい」

「は~い、あっ頭洗ってくれてもいいんですよ?」

「分かったわよ、その位はやってあげる」

 

 

第三回URAファイナルズ

マイル部門チャンピオン ダンシングブレード




h995様よりリバーロマンス、糸田ひろし様よりトゥチェスターグレイを頂きました。有難う御座います!!
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