貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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585話

―――張り切っていきましょう、きっとウォルターもそう願ってくれている筈です。

「うん、そのつもり」

 

身体の包帯を巻いてる為か、何処か痛々しさを感じさせてしまうウマ娘は唐突にそんな言葉を口にした。周囲に居た他のウマ娘は一体誰に言っているんだ?と首を傾げている中でそんな彼女に一人のウマ娘が歩み寄った。

 

「戦友、調子は如何だ?」

「ラスティ、うんいい調子」

「そうか、それならば良かった」

 

そのウマ娘は前年の長距離ファイナルズに出場していたスティールヘイズ、前年通りに長距離部門への出走を考えていたのだが……戦友たる彼女に一緒が良い、と言われてしまい肩を竦めながらも予選締め切りギリギリに中距離路線への変更を行った。

 

「まさかサトノルシファーへのリベンジが此処まで来るとは予想外だった」

「迷惑、だった……?」

「何、再び君と蹄鉄を並べる事が出来たんだ、良しとしようか。だからそんな顔をするなよ戦友」

 

そう言いながらすっと取り出したハンカチで彼女の目元の涙を拭う姿に周囲のウマ娘はああいうことされたいなぁ……と自分のトレーナーを投影させたり何イチャついてんだよ、と思ったり様々である。

 

「……ケッ、下らねぇ事やってんじゃねえよ」

 

ヘッドブリンガーからの言葉に一瞬ムッとするが、スティールヘイズに窘められる。済まなかったな、集中を欠かせてと謝罪をする―――が

 

―――ヘッドブリンガー、前回大会では5着に入っている実力派です。注意を。

「うん分かってる」

「痛ゥッ耳鳴り…ッ!!?こんな時に……っ!!!」

 

突如としてヘッドブリンガーはその場に膝をつく程の頭痛に襲われてしまう、歯を食い縛らなければいけない程の激痛に周囲からは心配の声が漏れて、スタッフが駆け寄る。

 

「うるせぇ俺に触れんじゃねぇ!!」

「し、しかしそんな状態で出走など……」

「うるせぇっつってんのが分からねぇか!?此処で競争中止の宣告なんぞしてみろ、殺すぞ……!!!」

 

血走った目でそう告げるヘッドブリンガーの剥き出しの殺意にスタッフは何も言えなくなり、下がるしかない。懐から錠剤を取り出してそれを無造作に口へ放り込んで飲み込む。そして少しすると落ち着きを取り戻すが……ヘッドブリンガーの敵意は完全にその矛先を決めてしまった。

 

「テメェか……テメェのせいか、ならここで勝てば、気分も晴れるだろうよぉ!!」

 

そう告げられてさっさと自分のゲート前に準備する姿にスティールヘイズは身構えていたからだから力を抜き、庇っていた戦友に大丈夫かと尋ねる。そんな二人に大きな声を掛けるウマ娘がいた。

 

「私参上ですわ~!!あらっ其方の方は私と同じくお初ですわね、そちらは前回長距離に出てらっしゃいましたわね!?そんな方と走れるなんて私嬉しいですわ~!!」

「今年も私参上ですわ~!!」

 

二人揃って高笑いをする桃色の髪をした二人、余りに大きな声に吃驚してしまう戦友に微笑みながら対応する。

 

「此方こそ、ワールドレコードを生み出した同じ舞台で駆け抜けられる事が光栄だ。イブビンティ嬢とソウマフィオーレ嬢だね、私はスティールヘイズだ。戦友にはラスティと呼ばれているが、まあ好きに呼んでくれたまえ」

「それではラスティさんとお呼びいたしますわね!!あら、そちらの方が戦友さんですの?」

「ああ、そうだ。マガツレイブンという」

「レイブンさん!!素敵なお名前ですわ、そちらはジャパンの共通勝負服ですわね!?私そのデザインも素敵で大好きですわ!!」

「本日はどうぞ宜しくお願い致しますわ!!」

「「私たちはワールドレコードを挑戦し勝つ為に此処に来ましたの、お互いに全力で走りましょう!!それでは~!!」」

 

まるで嵐のような二人だ、そんな印象が余りにもピッタリすぎる二人に戦友ことレイブンは完全に呆然としていた。あそこまで元気な上に剛毅なウマ娘はそういない、何せ―――堂々とランページの芝2400のワールドレコードを破ると言っているのだから……さて肝心の戦友は……如何やら発破をかける必要などもなかったらしい。

 

「ラスティ、負けないから」

「ああ、私も全力を尽くして君と戦おう」

 

 

『さあいよいよ激動の激戦必須の中距離2400部門の開幕です!!1番人気は矢張り前年の覇者ソウマフィオーレ!!2番人気はそんなソウマフィオーレの師であり、ホーリックスが制したジャパンカップでも駆け抜けたイブビンティ!!三番人気はヘッドブリンガー、雪辱を果たせるか!!さあURAファイナルズ中距離2400部門、今……スタートしました。素晴らしいスタートを切りました出遅れはありません!!さあオルタナティブセブンの愛弟子アッシュセイバーがじわじわと前にっととととと此処で一気に抜け出したのはイブビンティとソウマフィオーレ!!この二人が一気に先頭に立って駆け抜けるぅ!!』

 

「「お~っほっほっほっほっほっ!!ごめんあそばせ~!!!」」

 

これを見ていた当時、オグリ世代は思わずのレースを想起した事だろう。そう、ホーリックスが叩き出したワールドレコードのジャパンカップを。そのレコードが出た要因がこのイブビンティの大逃げだと言われている。

 

「さあ行きますわよフィー!!」「行きましょう師匠!!」

「「参りますわ~!!!」」

 

レコード保持者が大逃げすればそのまま逃げ切られるかもしれないという懸念から皆追う、故にレースは荒れるとも言われる。その結果、あのジャパンカップの1800m通過タイムは1:45.8であり、1800mのレースのゴールよりも速い。そんな展開が―――再び、起ころうとしている。




天羽々矢様よりアッシュセイバー、トラセンド様よりマガツレイブンを頂きました。有難う御座います!!次回、2400部門完結編!!

なんでか長くなっちゃった
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