貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

587 / 634
587話

ウマ娘のレースにおいて難関とされている事がある、それは同一レースの三連覇という偉業である。過去の記録を見ても二連覇などはあっても三連覇というのは例が極端にないのだ、それこそ直近ではイクノの安田記念三連覇があるが、更に遡るとなるとシゲルホームランのセイユウ記念、セカイオーの鳴尾記念、これだけに限られる。二連覇までは行ける事が多いが、その先となると一気に難易度が増すとも言われている。

 

「フゥン……三連覇ね」

「興味なさげだね」

「そりゃ興味ありませんから、いやイクノの安田三連覇は凄いのは分かりますけど……」

「それ以上の事をやっている暴君様からすると、そこまでピンときませんよね」

 

言われてみたら自分の時もエリザベス女王杯三連覇が期待されているとか言われた事があった気がする……まあ普通に海外に行ってしまったからその機会はなかったのだが……多分行ってなかったら普通に出てただろうなとは思う。

 

「まあ連覇って事にロマンがあるのは理解してますよ、俺だってロマンは大好きですよ。じゃなきゃこんなレースを主催する訳ないですし」

「それはそうよね、ランちゃんってば日本中奔走してたものね」

「全くだ。いやぁもうあの頃のバイタリティはねぇな、もうヤル気ねぇもん」

「何言ってるのよまだ若い癖に~」

「ス~ちゃんこそ~まだ寝相、治ってないんでしょ?」

「あらやだ、私の夫と同じ事言うじゃない。まさか、聞いたわね?」

「話されたね、そこがまた可愛いって惚気られた」

「んもうあの人ったら!!」

 

本当の孫と祖母のようにキャッキャと話し続ける二人を微笑ましげに見る二人、その一方である事も思う。

 

「本当にお淑やかになったね、話し方とか」

「そうね、昔はもっと男口調だったのに」

「それはそうよ、歳を取ればそうなるわよ。それにね、シ~ちゃんが真似するって言われてから自重してるのよ」

 

現役時代のスーちゃんはシリウスのような口調だったと聞かされて想像する、確かにこのいい声で男口調というのはそれはそれで映える。実は声も違ったりするのだろうか……と少しばかり考えているとスーちゃんは抱き着いてきてそれを誤魔化す。

 

「そ、それは良いじゃないの!!それよりランちゃん、私のダーリン変な事言ってなかったわよね!?言ってないわよね!!?」

「言ってない言ってない、今も一緒に寝てるとか偶に起きる時におねだりするしか言ってない」

「十分言ってるじゃないのよぉぉ!!!?」

 

そして何でそれをこの場で言うのよ!!とポカポカと叩き始めるスーちゃんに謝るラン、それを見守る二人だが……実は二人も同じような事をしているので人の事を言えずに苦笑いを浮かべるのが精々だった。

 

 

『さあURAファイナルズ、芝長距離部門2500。今―――スタートしました!!綺麗なスタートを全員が切りました、先頭を行くのはご存じ浪速の鏑矢、イマミヤアロー!!ジュエルベリドット、続いてティップオブタン、ソプラノテノールが行きます。重賞勝ちの経験のある実力派が駆け出して行きます、そこから4バ身離れてネージュフルール、タリズマンが良い位置についている。その外にはメジロツァーリ、チュラチュラ、サンプリエーラ―――』

 

「今年こそ勝つ!!!勝ったるぞぉぉぉ!!」

 

今年も続けての参加のイマミヤアローの迫力に満ちた快走がレースを引っ張っていく。

 

「アハハハッ元気だね!!」

「だが良い走りだ、ウチに来てもいい成績を出せるなあれは」

 

フルールとタリスマンは素直にイマミヤアローの走りに可能性を見出す、ぱっと見はターボのような大逃げの系譜に見えるが、大きな叫び声と半比例するようにフォームは非常に綺麗且つブレがない。だからこそ長距離も走り切れるのだろう。

 

「(……このまま待機ね)」

 

メジロという名前故に勘違いも最近多くなってきているツァーリもイマミヤアローに先を行かせる事にする。あのままなら必ず後半バテる……と思いたいが、頭の中では日本の大逃げウマ娘二人が爆走している光景が邪魔をする、心の片隅で油断だけはしないと留めておく。

 

 

 

『三連覇を狙うサトノルシファー、虎視眈々と良い位置に付いています!!今年の好走も期待出来そうです!!アウルムアーラ、バレットトレイン、マッシヴロードそしてディアナメリーと続いておりますが戦闘は未だにイマミヤアロー、浪速の鏑矢は今年も大逃げを打っております!!どっかの暴君と爆走ウマ娘の影響かトゥインクルシリーズでは逃げウマ娘が大量発生しているとの事です!!さあ、どこの誰のせいなんでしょうね!!』

 

―――おう赤坂、後でVIP席来い。暴君の勅命であるぞ。絶対にCome here。

 

『ひえっ!?』

スピーカーから聞こえて来たランページの声に息をのむ赤坂の反応にレース場から笑いが溢れた。一体どうやって割り込んだとかそんな事はどうでもよくて、相変わらずの暴君節に笑いが絶えない。

 

「ああ、画面越しに見ていたウマ娘の皆さんが…ジュルリおっと失礼しましたわ……同志デジタルちゃんの為にもこの目に焼き付けておかなければ……!!」

 

様々なウマ娘がしのぎを削る中で涎をすする音が聞こえる、そんなディアナメリーにフローラを重ねたランページはきっと悪くない。先頭を駆け抜け続けるアロー、以前まではムラのある走りが特徴だったのが一気に安定した走りへと変貌し、半分を超えて尚大逃げの体勢を維持し続けている。その姿に思わずランページとターボを重ねてしまう人も多かった。

 

「このまま、このまま行ったらぁぁぁぁぁ!!!」

 

自分こそが主役だ、サトノルシファーでもなければ此処に此処(ターフ)におらずとも存在感を放っているメジロランページでもない、自分こそが中心なんだ、主役なんだと全身全霊から放ち続ける。

 

「浄化の焔よ、我が身を焦がし力を御貸し下さい!!」

「脱線だけは勘弁してねぇ〜!!」

 

もう第三コーナーへと入る、次々とギアを上げるウマ娘達の攻勢が始まるが自分は負けない、このまま突き放して勝ってやるんだと言わんばかりに駆け抜けていた時だった。漸くだ、その違和感に気づけたのは……自分の足音が、奇妙に大きい気がした。そんなに力強く地面を蹴っているのか?と疑問に思ってしまった。

 

「貴方の走りは素晴らしかったです、此処までの道案内ご苦労様でした。貴方の走りは私達の糧とします!!」

「なんやてぇぇ!!?なんやそれぇぇぇ!!?」

 

『サトノルシファーが此処で一気に上がってきたぁ!!さあ3連覇を目指すサトノ家のご令嬢、明けの明星となり未来を示す事が出来るかぁ!!?サトノルシファーが此処でイマミヤアローを、いやイマミヤアローも必死に足を伸ばす!!だがいまいち伸びが悪い!!後方からマッシブロード、ディアナメリーも上がってきている!!さあ間もなく最終直線、イマミヤアローは踏ん張れるか!!?今先頭でサトノルシファーが直線に入る!!』

 

「こないな所で負けるなんて腹の虫がおさまらんのじゃぁぁぁ!!!」

「さぁ始めるよ、これから始まるのは雪華の妖精さん達の楽しい楽しい舞踏会!!」

「さぁ天使とダンスだ!!!」

「生まれた国は違えども…私も一人のウマ娘なんですっ!!ならば走りに全霊を!!!」

 

『ディアナメリーが一気に伸びて来る信じられない末脚だ!!イマミヤアローを捉えて、いや躱していく!!イマミヤアローも足を伸ばす、だが後続からタリスマン、ネージュフルール、アウルムアーラが伸びてくる!!これはどうだ、サトノルシファーが行くのか行けるのか!?イマミヤアローが最後の踏ん張りの猛スパートでディアナメリーに迫っていく!!タリスマンが更に加速する!!ディアナメリーと共に堕天使討伐か!!?如何だ行けるのか、出来るのか!?どうだどうだ来た来た来た来た、いぃぃぃやっ登り切ったのは明けの明星ぉぉぉ!!!URAファイナルズ長距離2500部門三連覇を達成したぞサトノルシファァァァァァ!!!サトノ家の歴史に、そしてファイナルズの歴史に刻まれたぞ!!二着にはタリスマン!!三着にディアナメリー!!4着にネージュフルール!!そして5着にはイマミヤアローが踏ん張りました!!』

 

その身体には、もう一歩も踏み出す力が残されていなかったが後悔も苦しみも微塵もなく、唯幸福感のみが全身を満たしていた。三連覇、それはウマ娘にとって偉業の到達点の一つ、それをサトノ家が達成した……これは次のサトノを背負うウマ娘達に大きな勇気、そして目標を与えてくれる筈だ……。

 

「きっと、私をも超えるウマ娘が、きっとダイヤモンドのような輝きを放つ子が現れる……そんな子が目標にしてくれたら―――私の競争(ケンカ)はきっと大差勝ちでしょうね……そうなったら、いいなぁ……」

 

第三回URAファイナルズ

長距離2500部門チャンピオン サトノルシファー




幽々やよい様よりディアナメリーを頂きました。有難う御座いました!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。